黒薔薇研究会の真実
この中に女性を入れないということを言い出したのは、医学部所属の人で、名前を鹿島という男であった。
鹿島の意見には、最初、反対意見もあった。
「どうして男性だけに限る必要があるんだ?」
ということで、その意見は、結構熱いものであった。
下手をすれば、
「喧嘩になりかねない」
ということで、一歩間違えると、
「せっかくのサークル立ち上げというものが、空中分解してしまわないだろうか?」
ということになるほどであった。
だから、佐土原としても、
「簡単にはいかないことだ」
ということは分かっていたのであった。
「サークル立ち上げ」
に対しての、最初の壁だったといってもいい。
ここまでは、順風満帆ということであったのだが、それを考えると、
「サークルの立ち上げというのは、想像以上に難しいものだったということか?」
ということを感じさせられた。
「ミステリーサークル」
というものが、
「いかに、単純なものなのか?」
と思っていた自分が恥ずかしくなるくらいであった。
「確かに、平均的すぎて面白くはなく、しかも、サークルというものを、他の目的で使う輩が多い」
ということに憤りを感じていたのだから、今でも、
「とんでもないサークルだった」
という気持ちは変わっていない。
しかし、それでも、最初の発起人が、
「そんなことは最初から分かっていた」
と思っての立ち上げであったのであれば、
「今ならその考えも許せるというものではないか?」
と考えられるのであった。
というのも、
「別に飛び出した俺たちが、嫌だと思っているだけで、他の大多数は、そんなサークルを楽しいと思い、そして利用しているのだから、お互いに、利害が一致したことでのサークル運営だ」
と思えば、
「それはそれで悪いことではない」
という風に理解できるようになった。
だから、今度自分たちで立ち上げるサークルは、
「特化したもの」
という気持ちが一致したことで、走り始めたのだから、そこに着地点を見つけるしかないということになるのであろう。
それを考えると、
「特化するものを何にするか?」
ということを、いかに摺り寄せるかということが問題となることは、佐土原にも分かっていたことであった。
実際に、そこまでは分かっていた。
そして、
「それが簡単なことではない」
ということも分かっていたのだった。
ただ、それは、実際にサークルを作ったあとでないと見えてこないということであり、前のサークルに所属しながらできることではないということで、そこに難しさがあったのだ。
それは、理解できることと、できないことが交互に存在していて、
「一度前から飛び出して、新しい枠に飛び込まないと分からない」
ということからであった。
新しい枠というものが出来上がっていない状態なので、そこから、紆余曲折があり、前に進んだり、後ずさりするということも、当たり前にあることであろう。
それを考えると、
「サークルを立ち上げる」
と考えた時に、
「覚悟が必要だ」
と感じたのは、そこからではないだろうか?
ということを、いまさらながらに思い出させるのであった。
そもそも、覚悟というのは、漠然としたものであった。
「覚悟って、何に対しての覚悟なのか?」
ということも分からない。
ただ、漠然としていたというもので、その思いがいかに、結論づけるかということを考えさせるものであり、その過程において、
「特化する」
ということがあるということで、この覚悟というものが、
「特化するということに、一周まわる形で結びついてくる」
と考えるに至るとは、思ってもいなかった。
それに、そこまでたどり着いていたにも関わらず、最初からそれが分かっていたということは分からなかった。
漠然とした考え方において、
「特化するサークル活動であれば、入部制限も致し方ない」
という考えは、
「特化というものを考えた時、切っても切り離せないものだ」
とすぐに連想したからだった。
ただ、この結びつきを、他の3人が理解できるとは思っていなかった。
「当然、反対意見は出るだろうな」
とは思った。
案の定、一人が強硬に反対してきた。
ある程度まで考えていたが、
「反対意見がある以上は仕方がない。譲歩するしかないのかな?」
と佐土原が考えていたその矢先だった。
「特化を考えると、入部制限のしょうがないか」
ということで、あれだけ強硬に反対していた人が、譲歩してくれたのだ。
しかも、それが、
「タッチの差だった」
ということもあり、それこそ、
「狐につままれたような気がする」
というものであった。
「それをいかに考えるか?」
というのは、佐土原は、
「一瞬立ち止まってみるのもいいことなのかも知れないな」
と感じさせるものとなった。
サークルが出来上がった時から、現在に至るまで、結構その時のことを思い出すこともあった。
それが、
「定期的」
と言ってもいいくらいで、それが、考え方の一致のようなものを生むのかも知れないと感じるのであった。
「大学サークルを作るというだけで、ここまで大変だ」
ということを感じるとは、正直思ってもいなかった。
しかも、
「もし思ったとしても、違う観点からなら感じることもあるだろう」
ということを感じていたというのも、その一つであった。
「大学というところでのサークルというと、とにかく自由という意識があるから、立ち上げが難しいわけはない」
と思うに違いないだろう。
だが、
「大変だ」
と感じたのは、そこではなかった。
発足させてからの、部員のとりまとめであったり、コンセプトなどのまとめであったりするということであった。
つまり、
「骨組みがある程度確定したあとでなければ、考えてはいけない」
という段階的なところがあるからだということからであったのだ。
それを思うと、
「大学というサークルがどれほどの考えに至るというのか?」
その時の佐土原、そして彼を含む4人は、それぞれに、紆余曲折を繰り返しながらも、
「いずれ一つにまとまる」
という地点に向かって進んでいるといってもいいだろう。
佐土原は、そんなサークルの発足を、
「これからの道」
ということで、理解した時、ちょうどその発足に至ったといってもいいところであったのだ。
サークル発足の中、実際に、
「いざ、サークル内容」
ということになると、少し、想定外なところがあった。
一番の想定外ということになると、
「想定していた以上に、入部希望者が多かった」
ということであった。
そもそも、
「カルトなサークルにすれば、そんなに希望者はいないだろう」
と思っていたのだが、逆に、
「こんな面白いサークルはない」
などと言って入ってきたのだった。
これには、さすがに発起人の4人は戸惑っていた。
「これじゃあ、元々いたミステリーサークルよりも、大所帯になるじゃないか?」
ということであった。
そもそも、それほど運営を大変にしたくないという意味もあって、新たに発足したのであって、このコンセプトに決めた時の、