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無限の数学

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 ということになれば、これほどの無駄なことはないだろう。
「首になった人も浮かばれない」
 と会社が考えるかどうか分からないが、そんなことを考えるくらいだったら、最初から首にするなどということはないだろう。
 といえるに違いない。
 だから、
「派遣社員であったり、契約社員」
 という体制が生まれてきたのだ。
 そのメリットは2つある。
「給料が安い」
 ということと、
「いつでも、首を斬れる」
 ということであった。
 ただ、デメリットとしては、
「責任を負わせることができない」
 ということと、
「時間外をさせると、その分、経費が掛かり、正社員を切った意味がなくなる」
 ということで、
「時間外をさせるわけにはいかない」
 ということで、このデメリットがどのような影響があるのかというと、
「残っている正社員に、その問題が、のしかかってくる」
 ということである。
 だから、バブルの時代には、
「リストラされる人間も地獄だが、会社に正社員として残る人間も、地獄だ」
 ということでしかなかった。
 結局、どちらにしても、地獄だということであれば、
「早期退職」
 というものを勧告された時、
「そんな理不尽な勧告に応じる人も中にはいたということが、今となれば、納得できる」
 ということだったのだ。
 今日は火曜日、
「いつものスーパー」
 が、安売りをする日であった。
 そもそも、他のスーパーが火曜日に安売りをしていたので、
「それに便乗した」
 というか、
「同じ日にぶち込んできた」
 というか、要するに、
「二番煎じ」
 ということであるが、二番煎じでではあったが、なぜか、こっちの二番煎じの方が客が多いというのは面白いものだ。
 別に格別に安いというわけではない。
 交通の便も、駅からの距離はそんない変わらないので、
「どうしてなんだろう?」
 と思ったが、前の店は、駅から帰宅通路としては、
「閑静な住宅街」
 という方が多く、こっちの方は、マンションなどの方が多い。
 当然、人口はマンションがある方に集中しているであろうし、マンション暮らしをしている人たちほど、安売りに執着しているわけではない。
 そういう意味で、こちらのマンションが集中している方が客も多いし、夕方などは、人も多いということになる。
 坂下は、別に、安売りにこだわっているわけではない。それに、一人暮らしなので、そんなに毎日買い物に来るわけではないので、大量に買う必要もない。何といっても、
「荷物が重たくなるだけだ」
 ということである。
 だから、遠回りになると分かっていても、客が少なくゆっくり買い物ができる、
「住宅街側のスーパー」
 に寄ることにした。
 その日は少し遅くなったので、日が暮れてからになりそうなので、本当であれば、いつもの近くのスーパーでも構わないとも思ったが、
「せっかくのいつものルーティンを崩すというのも嫌だしな」
 と思うと、
「火曜日はこっちだからな」
 と自分に言い聞かせるようにして、いつもの火曜日と変わらぬ行動をしたのだった。
 といっても、
「遠回りといっても、5分ほどのこと」
 ということで、歩いたとしても、それほど疲れ方が変わるわけではない。
 そもそも、前述のようにい、最初から重たいものを買う予定もない。
「重たいものは、ネットスーパーなどで買えばいいんだ」
 と思っていたのだ。
「だったら、なぜ、わざわざスーパーに寄る必要があるんだ?」
 と言われるかも知れないが、あまり酒を飲む方ではない坂下だったが、
「火曜日は、晩酌をする日」
 と決めていた。
「なぜ火曜日なのか?」
 というと、
「月曜日だと、休みの次の火ということで、まだまだ先が遠い。水曜日だと、中間ということで、一番身体がだるい時である。木曜日でもいいのだが、金曜日の仕事が、一番忙しさが見えない日なので、それを思うと考えてしまう。金土は、翌日が休みということで、夜更かしをしてしたいこともあるので、酒は控えたい」
 というような自分なりの理由で、
「火曜日が一番適切だ」
 と考えたのだ。
 それも、数回やってみると、すっかりルーティンとして嵌ってしまい、
「火曜日は、晩酌の日」
 ということになったのであった。
 だから、火曜日だけは、
「住宅街近くのスーパーに立ち寄る」
 ということで、しかも、それが、毎週ということになれば、しっかり、店員さんにも覚えてもらえているというものだ。
 逆に、毎日ではないが、週に2,3度は立ち寄っている近くのスーパーの店員からは、「顔を覚えてもらえている」
 というわけではなかった。
「たくさんいる客の中の一人」
 というだけで、
「毎回同じくらいの時間なのに、ここまで店員の質が違うのか?」
 と思えてきたのだ。
 しかも、それが、
「人の顔を覚えるのが苦手」
 という坂下が思うのだから、
「おかしな話」
 といってもいいもので、次第に、
「他の日も、向こうのスーパーに変えようかしら?」
 とすら思うくらいになっていたのだ。
 その日の火曜日は、いつものように、刺身を買った。
 飲む酒というのは、いつも、日本酒の熱燗であった。
 ビールのように炭酸だと、すぐに腹が膨れてしまうので、飲んだとしても、コップ2杯目までは結構きつかったりする。
 焼酎のお湯割りというのも、若い頃から、
「あの匂いが嫌い」
 ということで、
「いくお湯で割ったとしても、すぐに酔っぱらう」
 という暗示に罹っているかのようだった。
 しかし、日本酒だけは、
「お猪口でゆっくりと飲めば、そこまで酔うことはない」
 と思っていた。
 しかも、日本酒の味が自分に合っているのか、それとも、
「刺身というつまみ」
 がちょうどいいのか、
「これほどアルコールの中で、飲みやすいものはない」
 と思っていたのだ。
 その日は、いつものように、20分ほどというスピードで買い物を済ませ、いつものルートの帰途についたのだった。
 いつもは、だいぶ暗くなっているとはいえ、ここまで真っ暗ではないので、同じ道でも、少し気分的には違っていた。
 それなのに、あまり歩く人の姿が変わらないというのは、不思議な気がした。
「これくらいの時間が、帰宅ラッシュのピークなのかも知れないな」
 と坂下は感じたのだ。
 そして、スーパーを出てから5分ほど歩いたところで、前を歩いていたサラリーマンの様子が、
「少しおかしい」
 と思えた。
 その人を見ていると、その人自身が、何かを見つけたかのようであった。
 住宅街にはまだ差し掛かっておらず、途中には、公園のようなものがあり、そこが、ちょうど、
「一般の住宅街と、閑静な住宅街との間の分岐点」
 といってもいいようなところだったのだ。
 道を歩いているうちに、その人のことが気になっていたのだが、
「どうも最初から、その人の態度が不審に思えた」
 ということだったのだろう。
 あくまでも、
「最初から」
 と感じたのは、あとになってからということで、その人の態度を見ていると、
「何かその人の態度に吸い寄せられるかのような感覚を感じた」
 といってもいいだろう。
 坂下には、以前からそういうところがあり、
作品名:無限の数学 作家名:森本晃次