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無限の数学

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 ということが堂々と行われたりということも多いということであった。
 そういう意味で、社員の方も、会社に遠慮することはないが、会社の方でもいちいち社員一人一人のことを考えているなどということはなさそうだ。
 昔の正社員と会社の関係のように、
「社員あっての、会社」
 という、そういう今までの常識は通用しないのであった。
 それでも、何とか正社員で入ったので、とりあえずは、
「様子を見ている」
 といってもいいだろう。
 仕事の方は、結構楽しかった。
 というのは、それまで自分が好きだった、
「プログラムを作る」
 ということができるからだった。
 しかし、そのプログラムを作るということを本職としながらも、
「システムの仕事ということで、他にもしなければいけない」
 ということがいっぱいあり、自分の中で、
「やりがい」
 であったり、
「生きがい」
 と思っていたことが、本当にそう思っているというわけではないということが分かってきたのであった。
 前の会社の
「プログラムを作る」
 ということが、
「三度の飯よりも好き」
 と思っていたのが、少し音を立てて崩れてきた。
 というのも、
「その頃の仕事というのと、同じプログラムを作るということであっても、今までのような生きがいが生まれてこない」
 というのは、どういうことであろうか?
「やはり、ところ違えば品違うという言葉にあるように、同じプログラムを作るということであっても、違う会社に就職したということで、見え方がまったく違ってしまったのだろうか?」
 と考えさせられた。
 しかし、それが、
「少し誤解ではないか?」
 と考えるようになったのだが、
 その理由というのが、
「会社が変わったということを意識していないと一番感じていたはずの自分が、実は、一番意識していた」
 ということになるのであろう。
 そのことを解決してくれるのが、
「慣れ」
 というものであり、仕事に慣れてきて、毎日のルーティンが、自然にできてくると、まるでその会社に、
「何十年も前から働いているかのようだ」
 と感じるようになるのであった。
 それが、
「仕事に慣れてきたから、会社に慣れたのか?」
 あるいは、
「会社に慣れたから、仕事に慣れてきたのか?」
 ということであるが、この二つは似ているように思うが、実は少し違う。
 というのは、そのスピードが、それぞれで違うからであり、仕事は、前の会社とそんなに変わっているわけではないので、仕事に慣れるのは、結構早いことだろう。
 だから、
「まず仕事に慣れてくることを考えれば、それほどきつい思いをせずに、会社に慣れることができるのではないか?」
 ということになるであろう。
 それを思うと、
「今の会社に慣れるには、仕事になれればいい」
 ということになり、そうなると、
「仕事だけを一生懸命にしていれば、それだけでいい」
 と感じることになるだろう。
 そのことに気づいた時、
「もう転職を考える必要もないか?」 
 と思うようになった。
 会社にも慣れてくると、
よほどのことがない限り、
「システムの人間を、営業に配置換えさせる」
 というようなことをするはずもないということは分かっているのであった。
 それを考えると、
「しばらくこの会社で仕事をしていこう」
 と考えた。
 というのも、
「この会社では、なんでもしなければいけない」
 ということは、ある程度の年齢になっても、プログラム開発もすることになる」
 ということであり、それまでは、
「システムエンジニアとプログラマというのがまったく別で、そのかわり、どんなシステムであっても、その職種として、賄わなければいけなかった」
 ということである。
 しかし、転職した会社では、
「すべてをしないといけないので、そのできる範囲には、限界がある」
 ということで、業務分けというものを、
「仕事の内容で分けるのではなく、業務で分ける」
 ということであった。
 つまりは、業務関係のシステムごとに担当を分けるという形であり、たとえば、
「売上、売掛」
「仕入、買掛」
「物流、在庫」
 と言った、それぞれの業務ごとに、その担当分けを行うというわけで、一つの業務に関して、2人くらいが担当するという形だったのだ。
 だから、
「この業務に特化した人材」
 ということになるのだ。
 そもそも、坂下という男は、
「一つの業務を、入口から出口まで行う」
 というのは願ってもいないことであった。
 もちろん、それが管理職というものになってくると、それまでとはかなり違ったものであり、ある意味、
「前の会社とそのあたりは似てくる」
 ということになるだろうが、さすがに、
「その時はその時で、また考えればいい」
 と思うようになったのだ。
 ということもあり、
「職業あっせん会社」
 というところに登録はしていたが、実際に、
「もう転職を考えることはない」
 と思っていると、やはり、時代が、まだまだ厳しいということと、
「正社員での雇用」
 というものが、いよいよなくなってきたということで、連絡も来なくなっていたのだ。
 そもそも、最初の転職の際に、相談した相手が、ある意味悪かったといっていいのか、
 その人は、年齢的に、自分の父親といってもいいくらいの人間で、時代としては、
「完全に昭和の人」
 であり、
「派遣社員や契約社員などというのは、そんな不安定なところに所属していて、どうなるというのだ」
 と思っている人であった。
「バリバリの凝り固まった考え」
 というのを持っていたので、就職もなかなかうまくいかなかったし、今の会社に入社できたのも、
「運がよかった」
 といってもいいくらいでしかなかったのだった。
 それを思えば、
「今の会社のどこがいいというのか?」
 ということを考え、働いている間に、次の会社という考えになったのも、無理もないことだったかも知れない。
 ただ、それから十年も経たないうちに、
「ある金融会社の破綻」
 というものに端を発して、
「派遣切り」
 などという、社会体制を、根底から覆そうとするような事件が起こったことで、社会がまた不安になってきたのであった。
 そもそも、
「派遣社員体制」
 というのができたのは、
「バブル崩壊」
 というものが原因で、その時に、
「利益を上げるには、それまでの事業拡大では無理なので、逆に支出を減らすということでの、経費節減」
 そしてそのために、
「リストラ」
 という、人員削減ということが取られるしかなかった時代があったのだ。
 会社が生き残るためには、
「リストラ対策」
 そして、
「他の会社との、吸収合併」
 ということが大きな柱となっていたのだった。
 そのうちの一つ、
「リストラ対策」
 というものを取ってしまったことで、今度は、
「人がいない」
 ということで、業務が回らない。
「そんなことは当たり前のことだ」
 といえるのだが、
「実際に、会社が回らない」
 ということで、また正社員を募集するということであれば、
「本末転倒」
 ということになる。
 しかも、
「一から教えなければいけない」
作品名:無限の数学 作家名:森本晃次