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なんちゃって犯罪

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 ただ、これらの覗き集団というのは、ある意味、
「警察の裏の情報網」
 といっていいかも知れない。
 下手に、警察が一網打尽などにしてしまうと、せっかくの街の情報であったり、裏組織の動きを探ってくれる、
「情報屋」
 という存在がなくなってしまうということで、
「それは困る」
 という、
「必要悪がなくなるのは、これほど悪いことはない」
 ということになるであろう。
 そんな覗き集団を大目に見ていたところで、警察とすれば、
「思わぬ発見があった」
 といってもいいだろう。
 アベックの女性側が叫んだ声が、人払いとなり、覗き軍団までいなくなったところで、取り残されたのは、
「何かを発見して、奇声を上げてしまったアベックだった」
 二人はその場あら立ち去ることもできずに、お互いに逃げだしたいのだが、腰が抜けた状態になったのか、お互いに抱き合ったまま、震えが止まらずに動くことができなかった。
 そこに警備の若い警官が訪れ、その異様な光景を目の当たりにしたことで、
「何かあったんだ」
 と直感した。
 普段であれば、
「抱き合っているカップルにかかわるなど、そんな野暮なことはしない」
 と思っていたが、
「ここは、職務質問しないわけにはいかない」
 と思い、急いで近寄ると、
「なるほど、これは恐怖で硬直しているんだ」
 と感じると、警官までもが、緊張で少しおじけづいているかのように感じられたのだった。
「大丈夫ですか?」
 と声をかけると、それまで固まって、抱き合ったまま身体を離すことができなかったカップルは、若い警官を見て、
「助かった」
 と言わんばかりのその表情は、それまでの身体の硬直に、いくばくか、楽になるおまじないを与えたかのようだった。
「お巡りさん。大変なんです」
 といって、女性が、その先を指刺した。
 夜のとばりが降りた状態で、申し訳なさそうに光っている街灯が、あたりを照らしていた。
 そもそも、そこまで明るくないところから、ここにアベックがやってくるようになったわけで、あまり明るくしないのは、
「お互いに顔が見えると、気まずくなるからだろう」
 ということで、
 最初から、
「アベックありき」
 で設計されているということだ。
「どうせアベックが集まってくるのであれば、一か所にいてくれる方がいい」
 というのは、誰の考えなのか、確かに警察としても、その方がいい。
 ただ、覗きの連中からしても、それは願ってもないことで、
「こんなことでは、覗きを煽ることになるのではないか?」
 ということであったが、
「覗き以上の犯罪が蔓延ってしまうのも困るし、さらには、人が散らばってしまうと、それだけ、汚い場所がいくつにも増えるということで、掃除の手間が増えるということは、それだけ人員を増やさなければいけないということで、それは、自治体からしても、困ったことである」
 ということなのだ。
 女性が指さしたあたりは、少し暗めのところで、街灯がギリギリ当たっているところであった。
 暗い部分と明るい部分が、ちょうど斜めの線を描いていて、気にしなければ、
「一切気にならない」
 という光景でもあった。
 しかし、彼女は、そのことに気づいた時、
「嫌なものを見た」
 と思い、
「見なかったことにしよう」
 と思ったのだが、それがどうしてもできないことで、次第に不安が募ってくるとことで、その震えが、相手の男にも伝わったのだ。
「どうしたんだい?」
 と男はまさか相手が、そんな大それたものを見つけたなどと思いもしない、
 というよりも、
「覗いているやつと目が合った」
 ということではないかと想像し、それ以外には考えられないというところまで行っていたのだ。
 しかし、実際に彼女の震えの大きさは、それまでの彼女の性格を把握しているつもりであいる自分からも、
「想定外の気がする」
 というものであった。
「一体、何を発見したというのだ?」
 と思い、後ろを恐る恐る振り向きながら、彼女の目線から、その物体の位置を確認しようとしたのだった。
 実際に、その視線がたどり着いたその先にあるものは、最初、
「少し大きな石がある」
 ということであった。
 しかし、不自然に中途半端な大きさの石であり、
「大きすぎることもなく、かといって、小さいというわけでもない」
 と思っていると、もう一つ感じた不自然さは、
「なんであんなに白いんだ?」
 と感じたことだった。
 まるで、観光地の日本庭園にある、石灰石をさらに磨いたかのような白さではないだろうか。
 でなければ、彼女が気づくことも、ここまでブルブルと震えるということもないだろう。
 その白さの原因を彼女は想像し、その想像が、
「悪い方にしか考えられない」
 ということを見つけた時、震えが始まって、今もなお、止まることがないところまで来てしまったということであろう。
 歪に身体をねじりながら、後ろを振り向いていたが、もうそんな状態ではない。彼女を振り払って、正面から見ないと、その正体を想像はできるのだか、本当にそれなのかを確認しないと、そこからまったく動くことができないということになってしまうのであった。
 それを思うと、さらに身体をねじり、力を持って、こちらに委ねる彼女を押しのけるくらいしないといけなかった。
 アイコンタクトで彼女を制すると、彼は思い切って身体を捩じると、その向こうに見える白いものが、
「俺の想像した通りだった」
 と思うと、またしても、寒気が襲ってきた。
「これは、この場を自分だけで収めることはできない」
 と思い、それだけに、まわりが、
「クモの巣を散らしてしまった」
 ということは、困ったことだったのだ。
 そんな時、
「大丈夫ですか?」
 とやってきたのが、警官だったことで、
「実にナイスタイミング」
 と二人は、まるで、
「地獄に仏」
 というものを見つけたような気分になったに違いない。
 警官も、二人に促されるように、ゆっくり見ていると、警官は、二人のアベックに比べれば、それだけの訓練を受けているということもあって、二人を制するように、その場に待たせておいて、自分はその白いものに近づいていった。
「ああ、これは、白骨死体ではないか」
 ということを、途中ですぐに分かったのだ。
 白骨死体というものが気持ち悪くないわけはないのだが、
「そこにいるのが人間で、こちらに危害を加えようとしているわけではない」
 ということが分かると、少し安心した気がしたのだ。
 しかし我に返ると、
「ここから先は、どれくらい続くのか分からないが、喧騒とした雰囲気が続くことは分かっていた。
 自分が規制線を貼ったり、本部からの刑事たちが行う、
「捜査の雑用」
 をしなければいけないということは分かっていることであった。
 とにかく警察本部に連絡し、すぐに刑事や鑑識が駆け付け、
「あっという間に喧騒とした雰囲気が、出来上がるに違いない」
 ということが分かることであろう。
 まだ若い警官は、訓練では何度か行ったことはあるが、本当の事件の発見者となるのは、初めてだったのだ。

                 別の城での犯行
作品名:なんちゃって犯罪 作家名:森本晃次