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なんちゃって犯罪

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 と思っていたことで、実際に、その声は小さなものだったのだろうが、何といっても、静かな公園に反響したのだから、声は大きく感じられたであろう。
 しかも、その時は、夏の虫と秋の虫とが、その声のコントラストを描いていた時であったので。その声の大きさに関係なく、虫の声との反響が、その場の緊張感を極限まで保たせていたことで、覗きの連中は、
「どういう声が聞こえてくるのか?」
 ということは、想像していたのだ。
 というよりも、
「そういう声を聴きたい」
 ということを自分たちで想像し、
「その声が、どのような声なのか?」
 ということを想像していることで、その声が少しでも想像と違っていると、急に我に返って、
「クモの子を散らす」
 というのも、当たり前のことであろう。
 それは、そのあたりを統括している、
「常習犯の中の常習犯」
 であっても、同じことで、却って、
「そんな男ほど、最悪に、
「一目散で逃げるに違いない」
 ということである。
 何といっても、
「その場で逃げ出すか逃げ出さないかということは、
「覗きというものが、どのような罪であるか?」
 ということと、
「その罪と、捕まってからの自分たちの将来とを比較すれば、これほど割に合わないことはない」
 と思っていた。
 覗きの連中には、
「覗かれる方も、それを期待している」
 という思いがあるのだ。
 そうでなければ、何もくそ暑い公園などに出没する必要などないであろう。
 というのも、
「蚊に刺されたり、暑いという思いをしながら、夜の公園で、わざわざイチャイチャすることもない。俺たち、覗きの存在も分かっているだろうからな」
 ということであった。
 もし、これが痴漢のように、触られる危険性があれば、怖いだろうが、そんなことが起これば、警察も黙っていることもないので、もっと大々的に警察連中も、警備に余念がないに違いない。
 しかし、覗きというのは、確かに犯罪ではあるが、決して相手が嫌がるような、接触を試みるということはしない。
 あくまでも、
「相手が見てほしいと思っているから、覗いでいるだけのことで、これは、一種の人助けなのだ」
 と考えているのであった。
 警察からすれば、
「そんな都合のいい犯罪などあるものか」
 と思っている。
 それは、
「覗きが犯罪だ」
 と思っているからで、そうなってしまうと、
「覗きを犯罪だと認定する警察」
 と、
「覗きは人助けだと認識している覗き連中」
 ということを考えると、それは、
「交わることのない平行線」
 というもので、彼らは、もし警察に捕まったとしても、
「俺たちは何も悪いことはしていない」
 という思いが強いであろう。
 初めて捕まったくらいでは、初犯ということもあり、
「事件として扱われることもない」
 というくらいかも知れない。
 だから、
「しょせんは、それくらいの罪なのだ」
 ということであるが、ただ、二度目はそうもいかない。
 完全に、
「痴漢」
 と犯罪的には変わらないのではないだろうか。
 といっても、刑事罰というほどのことではなく、
「迷惑防止条例」
 という、都道府県で制定されている、
「条例」
 というものがその罪状となり、捕まったとしても、起訴されるとしても、略式起訴ということで、実際の公開裁判というものが行われるということはなく、そのほとんどは、罰金刑ということで済まされるものであった。
 ただ、前科というものが就くことにはなるので、そこまでくると、さすがに、
「引退するか」
 と考える人もいるだろう。
 ただ、こういう犯罪は、
「常習性」
 というものがあるようで、
「薬物犯罪」
 と似たところもあり、その犯罪は、いわゆる、
「依存症的なところがある」
 ということで、
「なかなか改心することはない」
 という人も中にはいるようだ。
 特に、これが、
「痴漢」
 ということになると、再犯の可能性はグンと上がるということのようで、警察もそのことはしっかり把握をして、
「性犯罪の中でも、そこまでひどい犯罪ではない」
 ということを考えると、
「覗きというのは、なかなかなくならない」
 ということになるであろう。
 しかも、
「自分たちは望むことをしているのだ」
 と考えるのだから、それも無理もないことであろう。
 そんな中において、その日は、少し寒気を感じる日であった。それまでが、暑くて夜でも、熱帯夜が続くことで、アベックはもちろん、覗きをする連中も、いい加減きついと思っていたのであった。
 さすがに、そんな毎日を過ごしていると、少しでも涼しいくらいの方が、楽に思える、何よりも、
「夏の虫が鳴いているのを聞いている」
 というのは、辛さ以外の何物でもないと思っていたのである。
 秋の虫が聞こえるようになると、覗きの方も、
「一つの季節が終わった」
 と感じるのである。
 本当であれば、
「少しは涼しくなってくれてありがたい」
 という気持ちもあるのだが、実際に、覗きや痴漢の時期というのは、そんなに長い時期は続かない。
「季節もの」
 といってもいいだろう。
 というのは、そもそも、そのターゲットであるアベックが、寒くなってくると、表に出没することがなくなるからだ。
 確かに、
「見てほしい」
 という気持ちはあるだろうが、さすがに、真冬の寒い時期に、
「見られたい」
 という一心で、表でイチャイチャするわけもない。
 当然、
「不本意ながら」
 と思いながらも、ラブホテルなどにしけこむというのは、当たり前のことであろう。
 だから、涼しさを感じたり、
「夏の虫の声が聴けなくなる」
 ということになると、
「ああ、今年のシーズンも、だいぶ来てしまったな」
 ということになる。
 彼ら覗きの常習犯というのは、地域によって、違うのであろうが、ここでの出没者は、
「ホームレス」
 であったり、
「日雇い労働者」
 のような人もいるだろう。
 中には、
「生活保護」
 を受けている人もいて、特に生活保護を受けている人は、
「覗きというのがバレると、生活保護が受けられなくなる」
 ということで、彼らだけは、他の人たちとは一線を画している。
 つまり、
「君子危うきに近寄らず」
 ということで、毎日のように出没することもなく、ただ、自分の性癖を満足させるということだけにまい進するという感覚であった。
 だから、
「彼らほど、警察に対して警戒心が強い連中はいない」
 ということになり、逆にそんな連中を、覗きのグループは、
「引き入れたい」
 と思っている。
 警察への警戒心の強さが、覗きの連中には、他の犯罪に手を染めている人に比べてないからだ。
 なんといっても、
「覗きというのは、そんなに罪が重くはない」
 という感覚が強いので、甘く見ている人が多いということである。
「自分たちは、プロだ」
 というとおこがましいが、少なくとも甘く見ている連中ほどひどくはないと思っている人から思えば、
「生活保護の人たちの警察に対しての嗅覚というものを利用しない手はない」
 ということになるだろう。
 生活保護」
 を受けている連中は、
「世の中に少なからずの不満を持っている」
 いや、
作品名:なんちゃって犯罪 作家名:森本晃次