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なんちゃって犯罪

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 と分かったところ、相手も同じタイミングで同じことを考えるだろう。
 勝負がつかないほどの力関係であれば、
「交わることのない平行線」
 ということになり、
「三すくみにおける抑止力」
 というものを感じなくとも、戦になれば、決着がつかないということで、それが、
「抑止力」
 というものの代用をするといっても過言ではないだろう。
 つまり、
「三つ巴」
 というものにも、
「抑止力」
 というものは存在し、結局、
「三すくみと三つ巴の違い」
 というのは、
「永遠に続く平行線」
 というものなのか、
「どこかで限界のあるものではあるが、力関係という意味では平行線でしかない」
 ということで、三つ巴というのは、
「無限に続く平行線」
 といってもいいかも知れない。
 ただ、その場合は、
「交わることのない」
 ということに関しては、信憑性のないものなのかも知れないということで、
「平行線というものは、無限に続くものと、どこかで限界というものがあるというものの、両方が存在する」
 といってもいいのかも知れない。
 それを考えると、
「この国の三つに及ぶ、三大勢力というものが、三つ巴だったのか、三すくみの関係だったのか?」
 ということをどう証明すればいいのだろうか?
 少なくとも、戦は行われていたということであり、
「それでも、三つともすぐに潰れるということはなかった」
 というのが、その答えだったといってもいいのかも知れない。
 その三つの城のうちの、
「一番小さくて、目立たない城」
 というところが、最近では、一番、
「カップルが最近多いところ」
 ということで、ひそかに有名になっていた。
 小さい公園なだけに、覗きも多く、その分、警察の方としても、そこは分かっていたのだが、プライバシーの問題もあって、勝手に警備を強化するということもできなかった。
「カップルを覗くというのは、立派な犯罪なのだろうが、だからといって、警察も暇じゃないしな」
 ということだったのだ。
 確かに、カップルが多いから覗きが増えたというだけで、他の事件が起こったわけではない。
「トラブルからの喧嘩」
 であったり、
「ひったくり」
 などという、
「警察が出動しなければいけない」
 というような事件の発生というわけではない。
 それでも、警察のパトロール地帯ということもあり、一応警備にも当たってはいる。そのたび、警察官としても、
「おいおい、いい加減にしろよ」
 と言いたいくらいに大胆なカップルもいたりする。
 そんなカップルのことを交番で話す、上司と若い警官であったが、さすがに上司は、長年の経験からか、それくらいのことでいちいち驚かない。
 むしろ、若い警官の方が照れている様子を見て、
「最近の若い連中はシャイなのかね?」
 というのであった。
「シャイというと?」
 と、若い警官が聴くと、
「いやいや、俺たちが若かった頃というと、アベックに対して、必要以上な反応で、本当はいけないのだろうが、自分たちもできることなら、覗いてみたいなんて、血気盛んだったものだよ」
 というのだった。
 すると、若い警官は、キョトンとしている。まるで、頭のてっぺんに、マンガみたいな、
「?」
 マークがいくつも出ているような感じであった。
 すると、若い警官が聞いてきた。
「アベックって何ですか?」
 というではないか?
 という、実に意外なリアクションが返ってきて、
「ん? そっちか?」
 と思わず、上司は聞いたものだ。
「いやいや、アベックって言わないか?」
 というので、
「いいえ、初めて聞きました」
 というのだ。
 そこで、上司も、少し冷静になって考えてみると、
「ああ、そういえば、最近、アベックって言わなくなった気がするな」
 というと、
「ええ、少なくとも自分は聞いたことがないです」
 といって、実に真面目な顔で答えたのだ。
 それを見ると、さすがに、さらに冷静になった上司は、
「だけど、アベックホームランとかいう言葉だってあるんだけどな、それも聞いたことないか?」
 と聞くと、
「ええ、初めて聞きます」
 と言われて、今度は上司の方が、自分の頭に、
「?」
 マークが写っているのを感じたものだった。
「いや、アベックというのは、今でいえば、そう、カップルのようなものかな? 例えばだけど、相合傘を刺しているような男女がいれば、アベックなんて言ったりしたものだよ」
 と言いながら、上司はカップルという言葉と比較して考えていた。
 実際に初めて聞く若い警官は、それ以上を想像することなどできるはずもなく、勝手に想像しようにも、同じ、
「そうぞう」
 という言葉であっても、
「自らが作り出す」
 という意味での、
「創造」
 という方になってしまいそうな気がするのであった。
 すると、少し考えがまとまってきた上司が、
「カップルというよりも、アベックという方が濃密な気がするかな?」
 と呟くと、
「それはどういう意味ですか?」
 と、若い警官はまだピンと来ていないようで聞き直した。
「カップルも、アベックも、それぞれ、他でも単語として使うことはあるのだけど、カップルという言葉の方が、もう少し広い意味に感じる。アベックという方が、人間に近い感覚があり、カップルというのは、つがいという言葉全般を表しているかのように感じるんだけど、気のせいなのかな?」
 というのだった。
 もちろん、言いながら、
「いや、本当にそうなのかな?」
 と感じながら答えていたが、それも、言葉の意味が言いながら、次第に曖昧になっていくように感じているからだったのだ。
 若い警官とすれば、
「話をする方が混乱しているのだから、分かるわけもない」
 ということに、自分で気づいているのだろうか。
 さすがに警察官ということで、そのあたりの勘であったり、考察というのは、訓練されたものであってしかるべきだと本人は思っただけに、なかなか理解できないことを、
「それだけ、時間が経っているということであろうか?」
 と感じているのであった。
 警察官というものは、
「時代の流れに対して敏感にならなければいけないのか?」
 ということを考えることもある。
 特に、毎日のように、パトロールに出かけ、市民と一番寄り添っている立場にいると思っている交番勤務の警察官は、世間の話題に対して、
「一番敏感でないといけない」
 と思っている。
 若い警察官は、
「こんなところで、ずっと終わるつもりはない」
 と思い、近い将来、刑事課で、刑事として事件の捜査に携わるということを夢見ているといってもいいあろう。
 しかし、中には、自分の父親くらいの年齢の上司がいて、その人は、
「きっと、交番勤務のまま、定年を迎えるんだろうな」
 と思うのであった。
 最初は、
「耐えられないだろうな」
 と、プライドが邪魔すると思っていたのだが、一緒にいると、本人は、
「まんざらでもない」
 と思っていて、
「年を重ねるごとに、そう感じてくるのではないか?」
 と感じ、
「自分もいずれはそうなってしまう」
 ということを思うと、これほど恐ろしいことはないと思うようになるのであった。
 それを思うと、
作品名:なんちゃって犯罪 作家名:森本晃次