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襷を架ける双子

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「博士と目が合うことが多くなった」
 と感じるようになった。
 その瞬間、満面の笑みを浮かべるのだが、それは、まるで、
「してやったり」
 という表情ではあるが、それ以上に、
「笑顔というだけでいいのだろうか?」
 と感じたのだ。
 その顔は、微妙に歪んでいるように見えた。
「こっちが考えているのとは違う考えを秘めている」
 と感じたのだが、
「それが何であるか?」
 ということは、決して分かるわけではなかったのだ。
 そんな回答の中で、一つ考えられるのは、
「少なくとも、今回の発明に関してというよりも、博士が欲しいのは、この俺なのではないだろうか?」
 ということであった。
 自分でいうのは、あまりにも、自信過剰なのかも知れないが、確かに、今度のタイムマシンの発想は、
「俺でなければ思いつけなかっただろうな」
 という自負はあったのだ。
 博士は、そんな状況を分かっているというわけではない。
「今回の発明は、久保君でなければできなかっただろう」
 と何度も口にしている。
 もちろん、
「本当の開発者は、博士である」
 ということにしておかなければいけない。
 それは、今までの学術界の常識であったり、慣習からも、それ以外は考えられないのであった。
 もちろん、部下が研究した」
 ということになれば、マスゴミの食いつきも変わってくるし、そもそもの研究がどこに変われることで、
「一番金になるか?」
 という、そういうリアルな話も大きなことである。
 ただ、
「開発者が、有名な博士であり、誰が見ても、その信憑性を疑う人はいない」
 といってもいいだろう。
 しかし、それが、
「一研究者」
 ということであれば、
「そんなもの、本当に信頼していいのか?」
 ということで、世間は、相手にしないのがオチだ。
 ということになり、
「本当は、ここで舞台に上がらないと、誰も。認めてくれることはなく、せっかくのタイムマシン研究が、まったくの水泡に帰すということになる」
 というのが、関の山である。
 それを考えると、
「どうすればいいのか?」
 ということは、一目瞭然だ。
 一人の研究者の、
「ヒューマニズム」
 だけで、どうなるというものでもないということなのだ。
 実際に、タイムマシンの研究というものは、今までに百年近くされてきたといってもいいだろう。
 もちろん、19世紀から、20世紀前半にかけては、
「戦争の世紀」
 と言われるくらいだったので、それを思うと、
「世の中、戦争以外の開発は、してはいけない」
 と言われていた時代でもあった。
 博士が、今回、久保氏を擁護したのは、
「久保氏がかわいそうだ」
 というようなわけではないことはさすがに久保氏にも分かっている。
 そんな、
「お涙頂戴」
 というのが、研究開発界にあるわけはない。
 そう思うと、
「久保氏の何かに注目をしたのだろうが、それが、研究内容そのものではなく、久保氏という人間に関してのことだ」
 ということになるのである。
 今回の研究は、
「無限」
 という考えから、タイムマシンの第一歩に繋がる研究ができた。
 しかし、まだまだ同じレベルの開発ということで、同じく、
「無限」
 というものをテーマにしたものが、できていないということで、
「ロボット開発の研究」
 というものに、久保氏がどうしても必要で、
「他に引き抜かれるようなことがあっては一大事」
 ということを、博士が誰よりも分かっていたのだろう。
 逆にいえば、
「博士がいなければ、誰も、久保氏に注目することもなく、他に盗まれることはないかも知れないが、開発ができるとも思えない」
 ということだったのだ。

                 傀儡

 博士が久保氏を利用したのは、久保氏の生い立ちなどの話を聞いていたからだった。博士はその話を聞いて、
「この男なら、最大級の利用価値がある」
 と考えた。
 そして、実際に、その利用価値は、自分が想像していたよりも、かなり強かったのだ。最初は、
「少しくらいは、研究に役に立つだろう」
 という程度に思っていたのだが、役に立つところか、
「アイデア部分のほとんどは、久保氏の力なんだ」
 ということを知ると、博士も最初は、
「自分の博士としてのプライドが許さない」
 というくらいにまで思っていた。
 しかし、それどころか、時間が経つにつれ、久保氏の力を目の当たりにしてくると、
「これは手放してはいけない」
 と思うようになった。
 ジレンマはついてまわったが、それ以上に、
「もう後戻りができないところまで来てしまった」
 と思えて仕方が亡くなってしまったのだ。
 博士は、今でこそ、物理学であったり、化学分野に力を入れているが、元々は、生理学であったり、心理学の部門に進みたかったのだった。
 そういう意味でも、
「以前から、自分の人生は、自分が望んでいない方向に行く方が、成功する」
 と思うようになり、
「複雑な気持ちにさせられる」
 と感じるようになったのだった。
 だから、今回も、
「久保氏がいたおかげで自分が目立つことができる」
 ということであるが、
「決して、本意ということではない」
 と感じているのだった。
 だから、久保氏というのが、
「何か大きな力を持っている」
 ということを、最初から感じていたわけではなかったが、途中で急にピンときたということが、
「博士にとっての、本来の力なのかも知れない」
 と思うと、
「久保氏を使おうと考えたことも、決して悪いことではないのだ」
 と思えてくるのであった。
 久保氏に目をつけてから、博士は、久保氏という人間がどういう人間なのかということが気になって仕方がなかった。
 というのは、
「私の家系には、双子が多かった」
 ということを聞いたからだった。
 博士が学生時代に研究していた心理学の中で、
「双子は、天才児が多い」
 という仮説を立ててみて、その根拠を研究することで、
「その証明ができれば、心理学や生理学の方面で、第一人者になれる」
 と考えていたのであった。
 だが、実際に、その証明をできることもなく、
「研究室に残るために、大学院に進むか?」
 あるいは、
「民間の企業で、研究を続けるか?」
 ということになったのだが、実は、博士をほしいという会社が出てきたことで、博士は、その会社に入社することにしたのだった。
 その会社では、今までにも、結構たくさんの特許を持っているところで、その会社で実績を積むと、大学で博士として在籍することができるというのを知っていたからだった。
 実際に、今までに、何人もの博士が誕生し、
「博士となった人たちの下で、いろいろと勉強してきたことで、やっと今、博士号を取ることができ、そして、研究室でも、会社の方でもどちらにも在籍する形で、会社の方は、半分、
「名誉教授」
 という肩書から、第一線から遠ざかっていたのだった。
 大学の方では、元々やりたかった
「心理学」
 などの研究をしていた。
 その中で、ちょうど、
「双子の研究」
 というものを行っていて、
「双子というものが、今まで世の中にどのような影響を与えてきたのか」
作品名:襷を架ける双子 作家名:森本晃次