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捏造が、偽造となり、真実になった事件

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 田丸は、ここ最近、最初は、移転した部署に通い詰めていたことで、
「家から通う」
 ということが、難しくなった。
 会社から、長期出張扱いということで、ウイークリーマンションのようなものを借りるようになったが、そこから、会社までの間に、一軒の、
「居酒屋」
 があることに気づいた。
 最初の頃は、仕事が終われば、
「途中のコンビニで惣菜やカップ麺などを買って、部屋で食べる」
 などという、少し寂しい生活をしていたが、居酒屋があるのを見つけると、
「一度行ってみよう」
 と思うようになったのである。
 そのお店に、初めて入った時は、ちょうど客が少ない時で、ちょうどよかった。
 お店の雰囲気は、
「こじんまりとした小料理屋」
 ということで、一人の女将さんと、もう一人、若い男性が、従業員として、調理を担当し、表には、これも若い女の子が、レジや奥のテーブル席に、料理やお酒を運ぶという役目を担っていた。
 最初に訪れた時は、カウンターに、1人、奥のカウンターで、ちびりちびりやっている時間だったのだ。
 あまりにも、人が少ないので、思わず時計を見たのだが、時間的には、もう午後八時を過ぎているので、当たり前に客がいる時間だった。
「早すぎる」
 という時間ではないということである。
 お品書きを見ていると、
「値段的には、良心的な気がするな」
 と感じたほどで、お酒も、どうやら地酒であったり、全国のお酒が、ある程度くらいなら揃っていそうなのは、カウンターの奥の棚を見れば、分かったのであった。
 田丸は、それほそアルコールが強いわけではない、特にビールなどの炭酸系であれば、コップ一杯でも、気持ち悪くなるというくらいであった。
 しかし、日本酒の熱燗というものであれば、
「ゆっくりと飲んでいれば、酔っぱらうことはない」
 と思っていたのだ。
 これは、今に始まったことではなく、以前から感じていたことであり、
「どこか、居酒屋にいけば、飲み物は、日本酒」
 と決めていたのだ。
 以前から、
「会社が終われば、家に直行」
 というのは決まっていたことなので、居酒屋を気にすることもなかった。
 だが、一時期、どうしても、お腹が減ってしまったことで、居酒屋で飲んで帰ったことがあったが、その時に、
「たまに、居酒屋というもの悪くない」
 と思うようになり、
「一週間に、2,3度くらいは、飲んで帰る」
 という時期が、半年ほど続いたであろうか。
 急にいかなくなったのは、一人気になる女性がいて、その人が、急に来なくなったからだ。
 だから、実際に行かなくなったので分かるわけはないのだが、まわりの勘のいい人は、
「田丸が、来なくなったのは、きっと、彼女のことが好きだったからなんだろうな」
 と思っているだろうことを感じさせた。
 だから、
「本当なら、もう少し通いたかったな」
 という、店の雰囲気と、料理のおいしさには、一目置いていたこともあって、行かなくなったというのは、自分でも後悔してしまうのであった。
「いまさら行き始める」
 というのは、後戻りできないということを示しているのであった。
 だが、出張ともなると、何か大きな気分になるということは、往々にしてあることであり、時期的に、もう後を引くようなこともないので、
「ほとぼりが冷めた」
 ということで、その居酒屋に行くのが好きになった。
 女将さんは、落ち着いた人で、女の子も、どちらかというと、
「おしとやか」
 という雰囲気で、二人とも、
「店の雰囲気にあっている」
 ということで、毎日であっても、結構楽しいと思うようにいなり、3日目くらいで、すでに、
「常連認定」
 という感じで、皆がいってくれたことが嬉しかった。
 ほとぼりが冷めたことで、安心感が戻ってきたといってもいいのか、店の雰囲気も似ていることもあり、
「店側からも、許された」
 という気持ちになり、毎日でも通ってもいいだろうと思うようになったのだ。
 出張というと、
「日当」
 というものが出る。
 さすがに日当だけでは賄えないが、それでも、
「毎日どこかで外食」
 ということになれば、そんなに変わるわけではない。
 一度、こういうアットホームな雰囲気に慣れてしまうと、いまさらながら、元に戻ることなどできないだろう。
 それを思うと、
「この店と運命を共にするのも、悪くない」
 とばかりに、かなり大げさなことを考えたりもしたのだ。
 最初の日は、客が一人だけだったのだが、毎日来るようにいなると、その客も、
「毎日来ている」
 ということが分かってきた。
 3日目くらいから、常連扱いをしてもらえるようになると、
「田丸さんは、いつも同じ席ですね?」
 と女将さんから言われ、
「ええ、そうです。同じ席でないと、落ち着かないんですよ」
 というと、
「そうなんでしょうね。これが不思議なことに、常連の皆さんは、別々の席が多く、そして指定席になっているのに、かぶることがないんですよ。これを偶然というのか、それとも、都市伝説的な不思議の事実ということになるのか、面白いですよね」
 と女将がいった。
 なるほど、確かに、常連の席というのは、指定席が多くて、しかも。かぶらないのが多いというのは、それぞれに、事情があるわけではなく、運命というものに操られているのではないか?
 というように、勝手な発想を抱くこともあったりするのであった。
「席が、皆常連で指定席が違うというのは、暗黙の了解というものを、それぞれに信じているからではないだろうか?」
 というように田丸は考えていた。
 最初にいた老人と思しき人も、同じように、誰ともかぶっていない。
「もし、かぶったら、どうするんですか?」
 というので、
「私にはわかりませんが、最初に座っていた人が、当然優先権があるわけなので、別に気にすることはない」
 と言いながら、決して、田丸と顔を合わせるということはない。
 それは、田丸に対して、何か、言えないようなことがあり、田丸が、
「絶対に知っておくべきことではない」
 という思いがあることで、
「何かこの街には、都市伝説的なものがあるのではないか?」
 と感じるのであった。
 ただ、それはこの街だけに限ったことではない。考えられることはいくらでもあり、そのおかげで、
「どこか、閉鎖所のある街だが、指定席にこだわりがないということは、ありえないのではないか?」
 ということが考えられるのであった。
 店の中の雰囲気は、
「いつも時間の進みが少しずつ違っている」
 という思いがあったのだ。
 それは、たぶん、
「自分の体調の違い」
 であったり、
「疲れ」
 などによって、酒のまわりが違っているからではないかと考えるようになっていた。
 そんな時、いつも自分が来るときには、いつもいる老人がいた。
 その人は、最初にこの店に来た時、一人で奥のカウンターで飲んでいた老人だった。まだ、話をしたことはなかったが、なんとなく気になる存在であった。
 話をしないのは、意識してしなかったわけではなく、指定席が離れているということで、「話をするタイミングがなかった」
 というだけのことだった。