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「悪魔の紋章」という都市伝説

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 昔から、いろいろな研究が施されていて、そこでは、大学生になった頃の瀬戸口が訪れていた。
 瀬戸口は、その頃から、民俗学に興味を持っていて、特に、妖怪、伝説のたぐいは、興味があったのだ。
 実際には、怖い話は苦手であったが、大学に入ってから、研究するのが一人ではないということで、大学生になってから、民俗学研究会に所属し、サークル内の活動は、当然のことながら、サークル活動以外でも、積極的に、いろいろ赴いているのであった。
 だから、一年生の頃から、いろいろなバイトをしていた。
 もちろん、お金に困っている時というのは当たり前のことであるが、それ以外の時であっても、アルバイトをして、小遣いを稼いでいた。
 そのほとんどを、一年生の時は、
「旅行代」
 に貯めていた。
 民俗学の研究を始めたきっかけというのが、そもそも、旅行好きだったことで、ある温泉地の、
「民芸村」
 なるところが気に入ったことから始まったのだ。
 その民芸村というところは、そもそもが、その温泉町の観光スポットとして営業していて、こじんまりとしたところであったが、その村の中でも、観光地の中心にあり、特に、若い女性に人気があったのだ。
 大学生になりたての頃は、女の子の動向が気になってしまい、旅行に行くのが好きだったのは、
「旅の恥はかき捨て」
 ということで、普段は女の子と話をすることすら恥ずかしいと思う、シャイな性格だったのに、旅行に行くと、自分から声を掛けたくなるくらいであった。
 そんな瀬戸口は、よく各駅停車に乗った。各駅停車限定の安い切符があり、約2,000円で、一日乗り放題というものだった。
 ここで、約という言葉を使ったのは、途中、ところどころで、値段が上がったからである。
 その切符は、冊子になっていて、最初は5枚つづりで、一万円で、そのうちの2枚が、2日分、有効だったので、結果、一万円で、7日間の旅行ができた。
 しかし、今は、値段が上がったことで、一万二千円で、1日分が有効な5枚つづりになっていた、
 瀬戸口が使っていたのは、まだ発売してから、間がない頃だったので、本当に初期の値段だった。
 この切符はかなり特殊で、
「1日分」
 という制限が掛かっているので、
「午前0時を超えて、最初に到着した駅までが有効」
 ということになっている。
 しかも、もう一つの特徴は、
「基本的に、各駅停車と快速電車だけが有効だったので、急に特急や新幹線を使いたいと思う時、特急券だけの購入でいいわけではない。乗車券から買いなおす必要がある」
 ということである。
 つまり、完全に、各駅停車専用であり、特急券と併用したとしても、その切符は使えないということになるのだ。
 そんな切符を使って、電車に乗ると、その目的として、
「どこから乗ったのか分からない」
 ということもあるようだ。
 そんな中で、その時、出かけた街が、T町だった。
 観光化されてはいるが、妖怪や都市伝説の街、それなりに、大人しめの街並みで、それなりの様相を呈していた。
 それを思うと、今まで行ったことがなかった町に初めて行ったという感覚と、田舎町の閑散とした雰囲気が、
「また来てみたい」
 という思いに誘ったものだった。
 その街には、一年生の間に2度訪れた。
 その場所において、祭りがあった時に出かけたのだが、その祭りがあることを教えてくれたのが、
「以前この街で知り合った女の子に教えてもらった」
 ということからだった。
 それも、知り合ったのは電車の中で、その時に、その子は、友達と一緒に旅行の最中だったのだ、
 相手も、同じ切符を持っていて、まだその時は、その切符は今ほどメジャーになっていなかったので、
「今まで続くなど、あの時は思ってもいなかったな」
 と感じるほどだった。
 だから、お互いに、同じ切符で旅をしているということで、意気投合したのだった。
 その頃の、瀬戸口は、旅行の計画を立てるということはしていなかった。
 もちろん、最初の日だけは、ちゃんと計画し、宿も予約をしていた。その時の宿というのは、今では見ることがなくなった、
「ユースホステル」
 というところで、全国の主要観光地などには、一つくらいはあったものだ。
 そこでは、どちらかというと、
「知らない者同士が、合宿をする」
 というイメージで、
 大学生などが、一人旅や、友達と旅をするということに特化したところであったのだ。
 だから、宿では、スタッフのことを、
「ピアレントさん」
 と呼び、挨拶も、
「いらっしゃいませ」
 ではなく、
「おかえりなさい」
 であり、
「いってらっしゃい」
 は、
「いってらっしゃい」
 なのだが、それは、
「また、戻っておいでね」
 ということを含めた言い方であった。
 それを思うと、完全に家族であり、合宿であったり、ボーイスカウトのような感覚に似ているのである。
 ユースホステルというのは、食事を作るのは、ヘルパーさんだが、後片付けの洗物は、自分たちでするということがあたり前であった。
 そして、食事の後には、皆でロビーに集まって、自己紹介から始まり、ゲームなどに興じたものだ。
 それこそ、楽しい、大学のサークルでの合宿を思わせるのだ。
 それを思うと、大学というところも、
「本当に楽しい」
 と改めて感じさせ、
「ユースホステルの楽しさ」
 というものを、実感させられるのであった。
 そんな合宿が楽しくて、さらに仲良くなった人に、
「明日の予定」
 を聞いて、まだ行ったことがないようなところであれば、
「じゃあ、俺も明日はそっちに行こうかな?」
 ということで、そこで初めて翌日の行動を決めるのだ。
「ユースホステル」
 の部屋が空いているということが、大前提であるが、ほとんどの場合は、大丈夫であった。
 だから、大学時代の旅行というと、
「その特殊切符を使って移動し、宿はユースホステル」
 というのが当たり前になっていて、それだけ毎日が楽しかったのだ。
 今の時代に、ユースホステルもあまり聞かなくなったが、結構年齢を重ねた人も多かったりするのだ。
 そして、その時の彼女は、その時だ微先であった女の子だった。
 よく聞いてみると、同じ町の、女子大生だという。彼女の方は、女子大なので、同じ大学というわけではないが、大学生同士の交流は結構行われていて、友達の彼女にも、そのそこの大学生が多かったのだ。
「同じ大学の方がいいのでは?」
 ということであったが、当時は、四年生の女子大生というと、どこか、
「お高く留まっている」
 と言われることが多かったようだ。
 だから、どうしても、近所の女子大、特に短大の女の子をゲットしようとする。それこそ、
「都市伝説」
 のようで、おかしかった。
 その彼女と知り合ったのが、ちょうど、一年生の時に例の切符で出かけた時、彼女も一人旅だった。
 その時は、ちょうど2日目で、その地方の大都市で、観光名所がたくさんある街を観光し、あてもなく、次の街を探っている時に、電車の中で、出会ったのだ。
 一人で電車に乗っていて、いかにも旅行というような、リュックを持っていたので、
「一人旅だ」
 とピンときた。