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警察に対する挑戦

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「村が買う」
 という形になったのだ。
 その方が、お互いに、損はないし、道を通してあげているという方にも、面目がたつというものであった。
 実は、
「こんな歪な町がある」
 ということで、世界的にも、こういう珍しいところを探して歩いている人には、
「まず、知らない人はいないだろう」
 ということで、観光客が結構やってくるということになったのだった。
 それを考えると、
「なっるほど、それだけでも、外国の観光客が多いわけだ」
 ということなのだが、そのわりに、日本の客はほとんどいない、
 というのも、日本では、基本的に、こういう街の存在をあまり、公にしたくないという風潮がある。
「この村と関係のない世界の人たちは、別に構わないだろうが、このような形にしてしまうと、例の私道というものが、トラブルの種になる」
 ということが慣例的になるということであった。
 だから、日本では、
「なるべく、こういう街の存在というものを、隠しておきたい」
 ということで、観光ブックに敢えて乗せるようなことをせず、ひそかな秘密ということにしておいたのだった。
 そんな村の中にある、私道というところから出てきて、この街に入ったところのすぐ裏に、
「この街の鎮守」
 というものが存在するのであった。
 ちなみに、私道と呼ばれているその道は、
「隣町の管轄ではない」
 ということは、当たり前のことである。
 だから私道の方から、この鎮守に入ることができる道がある、この私道に、また別の支道があるとすれば、この鎮守に入るこの道だけであろう。
 この支道の方に入る人は、それこそ、この神社の関係者くらいのものであろう。しかし、最近では、他にこの支道を利用している人がいる、それは、
「警察官」
 であった。
 この街に一つだけある、いわゆる、
「派出所」
 というところで、パトロールをしている警官が、自転車で走り抜けるには、ちょうどいいところであった。
 というのも、この支道は、車が入ってこれない。
 そして、ここは、
「神社の私道」
 でもあるのだ、
 そういう意味で、この街には、
「村時代からの、私道」
 というものが結構あり、
「村人だから」
 ということで許されている道を走る人もいるが、そのほとんどは、所有者しか使わない道になっていた。
 だから、一つのところが私道を宣言すれば。他の道を、その人の私道としてしまわないといけなくなる。
 そういう意味で、
「この街の細い道は、ほとんどが、私道となっている」
 といってもおかしくはないということであった。
 そんな鎮守へつながる
「私道」
 を、朝、パトロールに、いつものように出かけていた警官が、通りかかった時、
「その日、初めて、その道を通る人」
 ということであった。
 秋めいては来たが、木々はまだまだ緑色に覆われていて、木々の間から、かすかに漏れてくる、木漏れ日に、
「まだ暑いよな」
 と、警官に感じさせるのであった。
 そのわりに、この辺りは、落ち葉がたくさん残っている、
「春には、掃除したはずなのに」
 と警官がそう思ったのは、
「この街では、毎年、春頃にンあると、道に残る落ち葉を掃除するという習慣がある」
 というのだ。
 他の私道は、その持ち主がやるのだが、鎮守に関しては、街の人も協力するようにしている。
「いつもお世話になっていますからね」 
 ということを、街の人はいうのだが、それも、
「小さな町ならではの、心遣い」
 ということであり、その分、神社からのお返しというのも、なくはないのだった。
 形は毎回違うが、
「なんでこんなことを?」
 というようなこともあり、きっと、他の街の人間には、分かるはずのないというものであった。
 それを考えると、
「すでに、枯れ葉という落ち葉は、なくなっていなければいけないのに、神社に続く道だけは、なぜか毎年残っているのだ」
 ということであった。
「まるで、万年雪のようだ」
 というのが、神社の人間であったり、警官の共通下思いだったのだ。
 ただ、一つ言えるのは、
「この道のまわりの木々は、いつも、緑が多いような気がする」
 ということであった。
 だから、落ち葉の季節から、冬というと、期間が結構短く、しかも、冬の期間は、ほとんど雪が積もっていて、
「まるで、万年雪のようだ」
 というのは、落ち葉だけではなく、本当に、この道は、どこから見ても、
「万年雪」
 という発想から逃れられないというものであった。
 万年雪というのは、
「富士山の上にあるようなもの」 
 というものを想像し、中には、
「キレイなものだ」
 と思っている人も多いだろう。
 実際、
「雪というものは、実際にはきれいなのだろうが、それは、遠くから見ているだけで、その場所に行ってみると、土にまみれたりして、溶けかかっているような雪は、べたべたになっていて、決してきれいとはいえない」
 ということになるであろう。
 秋に限らず、この道は、雪のない時期に、乾燥していることはまずない。
 道はいつも濡れていて、粘土質になったような地面は、滑りやすくなっていて、自転車では結構きついところであった。
 慣れているはずの警官も、恐ろしいのか、ここを通る時は自転車に乗らずに、押して歩いているのであった。
 そんな、湿気を帯びた危ない道ではあったが、朝、そこを通り過ぎる時は、それほど危ないところではなかったのだ。
 というのも、
「道を歩いていると、ちょうど、朝日の木漏れ日が出てくるので、危ないといえば危ないが、慣れていることで、大丈夫なんだ」
 と、警官は思っていた。
 だから警官でなければ、この時間に、この道を通ることはないだろうと思っていたのだが、その日は、何やら、叢のところから、誰かが飛び出してきたのか、それこそ、黒い影が目の前をすっと走っていった。
「こんなところに、あんなに走ったら、危ないはずなのに、よく大丈夫だな」
 と警官は感じた。
 何しろ、見えている道も、木漏れ日と、粘土質の道が、濡れて光っているので、遠近化がまともに取れない道ということで、
「走るなど、もってのほか」
 ということである。
 しかも、今言ったように、粘土質なのだから、ただでさえ転びやすいのに、それを苦も無く通り過ぎていくのは、
「よほど誰も知らないところで練習をして熟知しているのか?」
 それとも、
「天性の才能のようなものがあって、通る時に大丈夫だといえるのではないだろうか?」:
 ということを考えると、
「あの男何者だろう?」
 と考えるよりも前に、
「自分が知っている人物なのではないか?」
 と考えるのであった。
 そのまま、同じように、警官が走り去る男を追いかけようとしたが、警官の方が足を取られそうで危なかった。その男は、警官がいることを分かっていながら、一直線で、支道を走り抜ける。
 走り抜けたその先にあるのは、支道の入り口。そこまでくれば、圧倒的に逃げ道は、安易な道だったのであろう。
 男は逃げた先まで、何とかして、追いかけた警官だったが、案の定、逃げられていた。
  道の向こうには、もう姿形もなく、
「忽然と消えた」
 とはまさにその通りであった。
作品名:警察に対する挑戦 作家名:森本晃次