警察に対する挑戦
というものの中から、探そうというのは、一番考えられることである。
今回の被害者は、いろいろ当たっては見るが、少なくとも、近くの署には出ていないようであった、
そもそも、捜索願などというのは、警察は、受理したとしても、本当に捜索することはないだろう、
いわゆる、
「犯罪性のあるもの」
だけが捜査される。
何といっても、
「ただの家出の可能性だってあるわけで、実際には、そういう場合が多かったりする」
ということになり、ほとんど、毎日のように、数件の捜索願が出されても、ほとんど捜査はされないだろう、
しかし、逆に今回のように、
「殺人事件が起こったが、身元が分からない」
ということで、
「逆に殺人事件の方から、捜索願をほじくり返す」
ということも、普通にありなのである。
それを考えると、
「警察を、手玉に取っているとも言え、犯人がこのことを分かっているかどうか分からないが、一種の警察に対しての挑戦だ」
ともいえるのではないだろうか?
だが、これも、別の考え方が許されるのであれば、
「警察を使って、誰かを探させるために、わざわざ、首を切り取ったのではないか?」
ということも考えられるというものだ。
これは、
「いくら何でも発想が奇抜すぎる」
といえるのだが、
「元々の犯罪とリックというものが、いろいろなパターンで重なることで、相乗効果を引き起こしているとするならば、ここでも、「1+1=3」という公式が成り立つのではないだろうか?」
と考えられるのだ。
出されていない捜索願い
「被害者は一体誰なのか?」
捜査本部の見解としては、
「さすがにこれだけの首なし死体を作るくらいだから、行きずりの犯行ということはありえないだろう」
というものであった。
だから、被害者は、捜索願が出ていないとおかしいはずだと思うのだ。
当然、被害者が殺されてから、すでに、数日が経っている。
確かに今の時代、マンションやアパート暮らしをしている人が、
「隣に誰が住んでいるのか分からない」
というのは、普通にあることで、下手をすれば、
「空き部屋かどうなのかも、知ったことではない」
というのも当たり前のようになっている。
それを考えると、なかなか、普通は捜索願も、簡単には出さないだろう。
中には、
「無断欠勤が続いていて、おかしいと思い、行ってみると、ずっと帰っていないということが判明した」
ということで、会社が捜索願を出すこともあるだろう。
しかし、実際には、それもなかなかありえない。
というのも、普通の会社であれば、
「数日無断欠勤が続けば、通告なしに、会社を首にするだけ」
という、会社は、
「ただ、雇っているだけ」
ということで、
「社員のプライベイトには、干渉しない」
というのが当たり前であろう。
特に、今の時代のように、
「個人情報保護」
という観点からも、必要以上に会社の人間とはいえ、干渉はできないのだ。
そもそも、警察自体が、
「民事不介入」
ということで、その対応範囲が明確化されているではないか。
実際の世の中においても、必要以上に、他人に干渉すると、下手をすると、自分が損をしたり、被害にあったりということが、往々にしてあったりするのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「家族であっても、簡単には、捜索願を出さない可能性だってある」
というのは、
「ただの家出かも知れない」
ということが考えられるからである。
「警察に捜索願を出したはいいが、実は家出でした」
といって、捜索願を取り下げるというのは、恥ずかしいことだ。
と考える人がいるかも知れない。
他人に干渉したり、されたりすることを嫌う人間が多いわりに、このように、
「世間体を繕う」
という人も、いまだ一定数いることである。
しかも、
「その両方が、共有される」
ということだってあったりする。
それを思うと。
「捜索願」
を出す方も、結構いくつかの、
「ハードルを越えなければいけない」
ということになるのではないだろうか?
出す方にも警察にも、こんなにハードルというか、
「出すことに、何かの意味を見つけなければいけない」
ということであれば、それは、行方不明者が増えるわけで、捜索願が出されたものは、
「氷山の一角」
ということで、
「本当の行方不明者がどれだけいるか?」
など、想像を絶するものなのかも知れない。
実際に、被害者が、外人ということもあるので、捜索願の取り扱いも難しいだろう。まず、捜索はしていないと見て間違いないだろうということで、
捜索していないところから探すことにした。
といっても、まったく誰か分からないところから探すのだから、そうもうまくいくわけはない。
しかも、捜索願が出されているのかいないのか、それすら分からないのである。
そんなことを考えると、
「この事件というものが、どういう意味を持つのだろうか?」
ということになるのだった。
実際に捜索願が出されてはいなかったが、それには、
「出せない何か理由があるのではないか?」
と考えた時、
「相手が外人だ」
ということを考えると、
「何かの不法就労であったり、果たして、犯罪に絡んでいることであれば、捜索願というのも、簡単には出せないわな」
ということであった。
これだけ、世の中に、外人が溢れているのだから、その問題は大きいというものだ。
警察も、外人に対してのそれなりの対策があるのだろうが、よくわからない。
そんなことを考えていると、事件は、それから少しして、進展したようだ。
死体発見から、1週間ほど経ってからのことだったが、ある男が出頭してきた。
といっても、
「犯人が自首してきた」
というわけではなかった。
「ある目撃情報を持ってきた」
ということで、最初は、その目撃情報が、事件に関係があるかどうかも分からなかったくらいだった。
というのも、その男がいうには、
「私は、その日、会社の飲み会があって、繁華街の方に出たのですが、その裏手で、人が争っているような声が聞こえたんです」
ということであった。
この男性が出頭してきたのは、例の死体が発見された街も管轄になっている、この辺りでは、小規模な市だった。
「平成の市町村合併」
というもので、元々、市ではなかったところが合併したことで、市に昇格したわけだが、それが、ちょうど、21世紀になった頃だっただろうか。ちょうど、市に昇格してから、四半世紀が過ぎるくらいであろう。
それでも、市に昇格してから、駅に隣接している近くは、繁華街もできていた、近くには、
「郊外型のショッピングセンター」
というものもあり、車以外の人も利用できるところから、この繁華街も、結構賑やかだったのだ。
ショッピングセンターから、駅までの途中に繁華街はあったが、夜も9時を過ぎると、人が結構多くなってくるというものだ。
ただ、この繁華街というのは、少し規模は大きいのだが、飲み屋街と、風俗街に分かれている。
その風俗街では、市に昇格してから、どんどん、店も増えていったのだ。