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警察に対する挑戦

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 と呼ばれるものは、すべてが、検視解剖に回される。
「ひょっとすると、死因に、怪しいところがある」
 などという場合に、検視に回され、
「死者の声を聴く」
 ということになるのだ。
 検視に関しての医学も進んでいて、ドラマになるくらいのことが、検視である程度分かるというものだ。
 だから、
「顔を潰されていたり、指紋がなかったりしても、DNA鑑定で、ある程度分かったりする」
 というものだ。
 ただ、それももちろん、
「被害者がある程度特定されていて、その痕跡がどこかに残っていたりした場合である」
 それが、毛髪であったりなどからも、分かるというものであった。
 そんな中において、戦後くらいであれば、
「顔のない死体」
 というのは、
「死体損壊トリック」
 として十分に、
「探偵小説」
 として使えたが、今では、それもままならないとして、
 この、
「死体損壊トリック」
 だけではなく、アリバイトリックなども、最近のように、至るところに、
「防犯カメラ」
 が設置してあったり、さらには、車の中には、
「ドライブレコーダーが存在する」
 というほどである。
 それを思えば、
「いろいろトリックを考えても、ここまで世間から見張られていては、犯罪を起こすということはできないだろう」
 ただ、防犯カメラや、ドライブレコーダーの発達というのは、元々が、
「犯罪の抑止力」
 としても開発されたということであると考えれば、今の時代は、防犯カメラという点では、
「成功している」
 といってもいいだろう。
 いろいろなトリックがたくさんあったが、探偵小説界では、戦前の
「探偵小説黎明期」
 と呼ばれた頃から、
「トリックのほとんどは、出尽くしている」
 と言われたくらいなので、今の推理小説などというのは、
「バリエーションを利かせないと。トリックが生きてこない」
 ということになるのであろう。

                 トリックによる相乗効果

 今のような、トリックというか、殺人手法と言えばいいのか、
「交換殺人」
 であったり、
「顔のない死体のトリック」
 などというものがあるが、それ以外に、顔のない死体のトリックに、似たところがあると考えられるのが、
「一人二役トリック」
 というものである。
「一見、まったく関係のないトリック」
 と思えるが、
 これは、
「殺された人間を架空の人物で、実際には、まったく上がってきていない人物が犯人だ」
 ということになれば、それは、一人二役のトリックとしても、使えるというものであった。
 ただ、
「顔のない死体のトリック」
 と、
「一人二役のトリック」
 というものは、似ているようで、決定的に違う部分がある。
 というのは、
「顔のない死体のトリック」
 というのは、最初から、
「この事件は、死体損壊トリックだ」
 ということが分かっている点である。
 しかし、これが、
「一人二役のトリック」
 ということになると、
「一人二役のトリックというのは、分かった時点で、その事件は解決するのだ」
 ということで、探偵小説の中でも、
「決して、分かってしまっては困る」
 というものであろう。
 そういう意味では、最初から分かっているという犯罪としては、
「死体損壊トリック」
「アリバイトリック」
 などであろうか、
 あと、トリックが分かってしまうと、その事件が解決されるというのは、
「一人二役トリック」
「交換殺人」
「叙述トリック」
「密室トリックの謎」
 などであろうか?
 密室トリックの場合は、
「これが密室殺人である」
 ということは、最初に分かっていないといけないが、トリックや謎解きによって、トリックの謎が解けてしまうと、
「事件解決に近づく」
 というものだ。
 ただ、密室トリックの場合は、
「密室だからといって、犯人が誰なのあ?」
 ということに影響することはない。
 あくまでも、
「探偵小説も面白味を深める演出」
 ということで、密室トリックを使うことが多い。
 特に、昔から日本家屋は、密室トリックには向かないということであったが、密室の謎というものが、犯罪の動機に繋がってくるなどということは、なかなかないに違いない。
 それだけ、密室トリックというものは、
「派手ではあるが、事件の本質とは関係ないところであったりする」
 ということであろう。
 密室トリックというと、どうしても、
「針と糸などを使った、機械トリック」
 というのが普通だったりする。
 しかし、その場合は、本当に、大きなトリックとしては使えない。
 前述のように、ちょっとしたエッセンスというか、
「ただの演出」
 ということにしかならないかも知れない。
 だから、そのために考えられることとしては、
「トラップのような、一種の読者を騙す」
 というようなやり方を、
「作者が読者に仕掛ける」
 というようなやり方で、それを、
「叙述とリック」
 という。
 まるで手品師のように、
「右手を見るようにまわりに仕掛けると、その間に左手で細工をする」
 というようなやり方である、
 密室の中で犯罪が行われたということであれば、
「最初から、そこに死体があったのかも知れない」
 ということを悟られないようにするのが、
「叙述トリック」
 というもので、それには、
「アリバイトリック」
 と併用する場合もある。
 アリバイトリックの中には、
「Aのアリバイが崩れるということは、Bのアリバイも崩れる」
 ということだというのを聞いたことがあるが、これも、一種の、
「三段論法」
 のようなもので、
「完全犯罪のように見える犯罪も、一つの小さなほころびから、すべてが崩れてしまうということがある」
 それこそ、
「大きな山も、アリの穴から崩れる」
 というような話を聞いたことがある。
 まさにそのことではないだろうか?
 完全犯罪というのは、前述のような、
「交換殺人」
 というのも、完璧にできさえすれば、
「完全犯罪」
 となるのかも知れない。
 もし、完全犯罪を100として考えた時、
「どんどん、削れていって、結局、ほとんど、完全の部分はなくなってしまうのではないだろうか?」
 それも。完全というものが、
「すべてにおいて、重なることなく、平均的に密度を満たしていれば」
 ということである。
 要するに、最後の一つが合わないということは、少なくとも、
「もう一つは絶対に違う」
 ということであり、間違いが最後になって、どんどん小さくなればなるほど、一つが嵌らないというわけではなく、いくつもの間違いが、積み重なって、小さなほころびになっただけである。
 レジの清算をする時、
「もし、違っているのが、1円だったとすれば」
 ということである。
 1円などという商品がないわけなので、どこかの、プラスマイナスが、微妙に絡み合ったのだろう。
 例えば、双六で、ゴールするのに、ぴったりさいころの目が出なければ、ゴールできないという場合、いくら途中まで、ぶっちぎりで来ていても、最後の一振りでうまくいかないと、また戻ることになる、要するに、
「運がいい人が勝つ」
 ということだ。
作品名:警察に対する挑戦 作家名:森本晃次