小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

永遠の循環

INDEX|16ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

 と感じさせられた。
「そういうところが、俺の面倒くさがりな性格に遺伝したのかも知れないな」
 と思うほどで、
 迫水は、本当は、
「我慢することは嫌い」
 だったはずだ。
「面倒くさがりで、我慢ができない性格って、ある意味、最悪な性格なのではないだろうか?」
 と思えるのだが、迫水自身は、その意識はあった。
 だから、その件に関しては、自己嫌悪のようなものがあったが、だからといって、
「それを決定的に嫌う」
 ということはなかったのだ。
 そんな、迫水の性格であったが、久保田は、迫水のそんな性格を、ほとんど知らなかった。
 知らなかったというよりも、
「表面上に見えている性格だけを見て、勝手に羨ましい」
 と思い込み、
 そんな迫水という男も真似をしようと思っていたところ、自分が好きになりかけていた女性が、迫水になびいたのだ。
 実は久保田の真似をしようと思っていた時、好きになりかかっていた女性がいて、その女性は、久保田のことを好きになっていたのだ。
 久保田はそれに気づいていないだけではなく、迫水ばかりを意識していたことで、彼女のことを、失念してしまった。
 それがそもそもの間違いで、久保田は、自分が勝手に迫水を見ていただけなのに、彼女は、久保田が、
「他の女を見ていた」
 と思ったのだろう。
 そもそも、自分が、
「好きだアピール」
 を表面に出しているのに、その目は別の誰かを見ている。
 と思うことで、
「私のことが嫌いなんだ」
 ということで、安心して相談できる相手として選んだのが、迫水だったのだ。
「来る者は拒まず」
 の迫水なので、その女も簡単に受け入れる。
 久保田としては、
「自分のことを好きになりかかっていた女を、迫水が奪った」
 と思い込んだ。
 そこで、
「俺は、なんてことをしていたんだ」
 と感じたのだ。
 それは、
「迫水のような遊び人に引っかかる女を好きになろうとしていたのか?」
 という感情なのか、普通に、
「俺を好きになってくれそうな女を、迫水が強引に奪い取ったのか?」
 という感情のどちらかであっただろう。
「いや、ひょっとすると、そのどちらも」
 があって、
「そのどっちが強いのか?」
 ということを分からずに、結局恨みというものだけがしつこく残り、その感情が、
「逆恨み」
 ということになったのかも知れない。
 久保田とすれば、
「自分が好きになったのかどうかも分からないが、その女が別の男になびいたということで、プライドを傷つけられた、屈辱という感情の下に、好きだったということが決定し、そうなると、当たり前のように、自分がこの女を好きだったということになり、好きな女を奪った、この男が許せない」
 という、三段論法的な発想になるのだ。
 それを、どこまで、久保田が理解しているのか分からないが、久保田という男は、
「迫水も、自分も、よくわかっていない」
 ということが言えるのではないだろうか?
 これは、久保田という男が、
「勝手に妄想し、その責任を、すべて迫水に押し付けようとしたことから起こった感情で、被害妄想なのか、猜疑心の強さからの嫉妬なのか、どちらにしても、その感情は、逆恨みにしかすぎない」
 しかし、迫水に、
「まったく責任がないのか?」
 ということになれば、それはそうではないだろう。
「迫水がどのような接し方を普段からしているか?」
 ということが、迫水にとっての、大きな問題となる。
 実際に迫水は、久保田という男を知らない。久保田の方では、迫水のことをかなり調べているようで、
「なんで、こんな男に彼女は引っかかったのか?」
 と思っているのだ。
「彼女だって、迫水のこんな裏を見れば嫌になって、俺のところに戻ってくるに違いない」
 と感じているようだが、たぶん逆であろう。
 もし、このことを彼女に告げて、
「あんな男のことは忘れて、俺のところに戻ってこい」
 などというと、久保田は彼女が、
「そうなのね、教えてくれてありがとう。やっぱりあなたが最高だわ」
 などといって。抱きついてくれるのではないかとまで思ったほどだ。
 しかし、久保田は女というのを知らなすぎる。
 女というのは、
「何かあれば、相手に相談するようなことはせずに、自分で考え込んでしまう。そして、それを相手に悟られないようにしているが、口数が減ったりして、おかしなところがあるように思えるのだ」
 というものだ。
 そして、そのあとに、急に別れを切り出してくる。
 男としては、
「何がどうなったのか分からない」
 という状態だ。
 しかし、この時には女というのは、すでに、気持ちが決まっていて、何を言っても、女はビクともしないというのが、ほとんどの女性のパターンのようだ。
 男としては、
「何も言ってくれなければ分かるはずがない」
 と、相談すらしてくれなかった女に、恨み言の一つも言いたいだろう。
 しかし、もう、
「時すでに遅し」
 なのである。
 だから、
「あの女は、いきなり別れを告げてきた」
 といって、知り合いに話したりすると、その人が、
「女性経験が豊富な人」
 ということであれば、
「彼女は、何かSOSのサインを出していたのでは?」
 というだろう。
「言われてみれば、急に会話をしなくなって、考え事をすることが多くなったような気がするな」
 というと、
「それだ」
 と言われるのだ。
 そして、こちらとすれば、
「俺の方は、彼女の方で何かあるなら、必ず相談してくれると思っていたんだ。だから、変に聞いたりして、気まずい雰囲気になるのが嫌だったんだ」
 というと、
「それだよ。その姿勢が、お前に疑問を感じていた彼女からすれば、決定的な気持ちを動かしたんじゃないか? 相手はSOSを出しているのに、相手に逃げ腰になられたのでは、もう、八方ふさがりだって思ったんじゃないか?」
 と言われるだろう。
 さらに、相談した相手は続ける。
「女性はえてして、考えている間は、相手に悟られないようにするものさ。そして、何かを口にした時には、すでに、覚悟ができていて、腹は決まっているというわけさ」
 というのだ。
「そんなの卑怯じゃないか」
 と男は思う。
 しかし、
「卑怯というか、それが、女性とすれば、自分への防衛反応のようなもので。相手に悟られないように、自分で動く、それが相手の気持ちを悟るという意味でも、考えられる防衛本能のようなものじゃないかな? それを分からずに男は、勝手に女性に対して、自分の考えを当てはめようとする、その時点で、完全に、温度差は激しいものだといえるんじゃないかな?」
 ということであった。
 実際に、この相談は、以前に久保田が、親友にしたものだった。
 迫水に、
「奪われた」
 女とは違い、その前に付き合っていた女性とのことであったが、久保田という男は、女性と付き合っても、大体、3か月くらいで別れてしまう。だが、不思議なことに、すぐに他の女性が現れて、付き合うようになるのだから、
「彼女がいない時期というのは、実に短い」
 それだけに、
「その前に付き合っていた女性と別れることになったきっかけというものを検証することはない」
 といえるのだった。
作品名:永遠の循環 作家名:森本晃次