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永遠の循環

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 だが、そんな女性でも、毎回。
「ピル飲んでるよな」
 と聞かれ続けると、いい加減、
「面倒くさい」
 と思うのか、飲まなかった時も、
「ええ」
 とウソをついて、結局、妊娠してしまうという女性もいたようだ。
 だが、男性には。非がない。
 何といっても、
「ピル飲んでるよな?」
 と聞かれて、
「ええ」
 と答えてしまったのは、自分なのだ。
 あとから後悔しても始まらない。
「私が、あの時、もっとしっかりしていれば」
 と女性は感じ、男には何も言えずに、一人で、
「始末する」
 ということしか道はないのであった。
 そうなると、さすがに女も、このまま迫水についていくわけにはいかない。
 迫水の知らないところで、女は人知れずに、迫水の前から消えていく。
 迫水の方も、
「去る者は追わず」
 という性格なので、結局、そのまま、別れてしまうのだった。
 迫水は、
「来る者は拒む」
 ということをしないので、次から次に女が現れる。
 そういう意味では、
「役得な性格だ」
 といえるのではないだろうか?
 だが、そんな中でも、自分が、
「愚かだったんだ」
 と思いながらも、どうしても依存症が消えない女が一人いて、それでも、
「迫水さんが、少しでも、悪かったと思ってくれたら、私は水に流す」
 と考えていた女がいる。
「愚かだった」
 と言いながらも、迫水に、その責任を押し付けようとしているのはありありなのに、それを自覚していないから、
「迫水さんを許すのは、私の天性の真心」
 とばかりに、すべてを自分が相手のためにしていることだと思いたい一心で、
「詫びの一言がほしい」
 という理屈になるのだった。
 迫水は、最初こそ分からなかったが、そんな女の下心が見え隠れするのを許せなかった。だが、自分の愚かさということもあって、むげにはできないという気持ちもあり、迫水は、その女を突き放すことはできなかった。
 かといって、
「その女の奴隷に成り下がることはできない」
 と思っている。
 迫水は、誰かの奴隷に成り下がるということが一番嫌だった。
「奴隷に成り下がるくらいなら、相手を陥れて、自殺に追い込むというくらいの方がまだマシだ」
 というくらいにまで思うのだった。
 だから、相手の女に、
「絶対に従わない」
 という強い気持ちを持っていて、それを表に出さないようにするのは無理なことだった。
 自分で思い込んでしまわないと、考えたことを実行できないのが、迫水だった。
 だから、女が、どう思おうと、迫水は、自分の考えていることを隠そうとはしないのである。
 人によっては、
「そこが、迫水のいいところだ」
 という人もいれば、
「そんなことを考えるから、いつも、女のことでひどい目にあうんだ」
 ということになると思っていた。
 まわりの人が、どんな気分になるのかというと、
「迫水さんは、相手にいつも気を遣っているけど、どこか、結界のようなものがあって、自分では、絶対に認められないと感じることがあると、結界から先にはいけなくて、もし、自害するとしても、その死体を決して表に出さないようにするために、部下に埋めさせるということをするだろう」
 と考えるのだ。
 だから、彼は、その考えゆえに、
「もろ刃の剣だ」
 といってもいいだろう。
 まわりに、気を遣っているかのように思わせるところがあるし、結界を超えてしまうと、びくとも動かないというところがある。
 というのであった。
 もろ刃の剣」
 というのは、
「どちらに転ぶかも知れないが、うまくいけば、強力な武器であるが、一歩間違えると、こっちが危険になる」
 という意味でもある。
 だから、
「迫水のように、途中に、結界というものを持っている人間は、そこから先、もろ刃の剣で勝負するということは、明らかに命取りになる」
 ということで、
「もろ刃の剣」
 と呼ばれるものを使用するというのは、まるで、
「見てはいけない」
 と言われるものを見てしまった時のように、リスクを自らで招いたようなものだといえるのではないだろうか?
 だから、彼が、
「誰かに狙われる」
 というのも、そういう危険性が、背中合わせになっていて、まるで、
「長所と短所」
 が同居しているかのようではないか?
 迫水を狙うとすれば、そんな中の真理子という女ではないだろうか?
 彼女は、迫水に妊娠させられたと思っているが、ただ、前述のように、ピルを飲んでいなかったということが原因だったのだ。

                 失敗した経験

 迫水を狙っている人間は、もう一人いた。その人間は、本来であれば、迫水が狙いを定めた人でもあった・
 かつて、迫水のそんな女遍歴を知っていて。その迫水の真似をしようとしたやつがいた。そんなことができるはずもなく、それがうまくいかずに、失敗した経験を持っていた男であった。
 何をどう失敗したのかというと、そもそも成功するわけはないのに、それを強引にしてしまったことで、相手の女性を傷つけることが往々にしてあった。
 迫水が、一度として、女性に強引なことをしたことがないのが、迫水の成功の秘訣であったにも関わらず、この男は、タブーである、
「強引さ」
 をもって女を口説こうとした。
 その根本的なことが分からずに、失敗しているのに、それを逆恨みし、迫水を恨むようになっていたのだ。
 迫水は、自分が、
「何となく、その人から嫌われている」
 というのは自覚していたが、
「狙われる」
 という意識はなかった。
 そもそも、
「そんなことで狙われるなどということは、普通ならありえない」
 と思うであろうが、その男は違った。
 元々、その男が逆恨みをする原因となったのは、その男が好きだった女性がいて、彼女とは、会社の同僚だということで、仲が良かったのだ。
 しかし、仲が良かったといっても、
「会社で挨拶をする」
 という程度のことだったのだが、その笑顔が、
「まるで、俺にだけしてくれる笑顔だ」
 ということで、その笑顔を見るたびに、
「俺を好きになってくれているんだ」
 と思ったのだ。
 この男が、
「いつ、その女性を好きになったのか?」
 というと、どうやら、
「彼女の笑顔を見ているうちに」
 というのが、本当のことのようだった。
 最初は、そこまで好きだったという意識はないようで、この男というのは、名前を
「久保田」
 というのだが、女性のことを、
「好きになったから好かれたいというよりも、好かれたから、好きになった」
 というタイプである。
 女性というものを好きだというのは、男である以上、皆同じではないだろうか。しかし、そんな中で、好きになる女性というものに対して、
「いかに好きになるか?」
 ということに関しては、いろいろなパターンがある。
 迫水の方も、
「別に俺が口説いたわけでもないのに、女の方から寄ってくる」
 と思っている。
 それは、迫水が、最初から下心がないわけではなく、自分では、
「下心がない」
 と思っていて、
「相手が好きになってくれるから、こっちも好きになるだけだ」
 と思っている。
作品名:永遠の循環 作家名:森本晃次