異次元交換殺人
結構時間はかかるというもので、夏などは、昼間は熱すぎるので、夕方くらいの行動になるので、4時すぎくらいから活動を初めても、いくら、
「夏は日が長い」
といっても、なかなか、すぐには回れないというのが、事実であった。
そうなると、
「全部回ると、結構な時間になるので、下手をすると、日暮れくらいまでになるかも知れない」
といってもいいだろう。
ただ、今回は、ちょうど、一番最後の方のビルだったので、西日の強さの、ほとんど消えていて、差し込んでくる日差しも、
「あってない」
というようなものだった。
それを感じると。
「薄暗さの中で、死体を見つけた時の、怖さを思い出して、ゾットする」
立川も、実はいろいろな迷信や言葉というものは知っている口で、
「あの時のような、日が沈むちょっと前の状況を、逢魔が時というのだ」
ということは知っていたのだ。
逢魔が時というのは、
「読んで字のごとし」
と言えばいいのか、
「魔物に逢う時間帯」
ということである。
というのも、これくらいの時間帯が、事故が起こりやすいと呼ばれるからだということであるが、それは、スピリチュアルな話でもなんでもなく、科学的にも証明されていることであった。
この時間帯は、それまでの、西日が、まるで、
「ろうそくの消える前の勢い」
というような感じで明るかった分。完全に光が落ちる前ということで、日が暮れるにしたがって、光の屈折の問題からか、
「すべてのものが、モノクロに見える」
ということで、明るさだけではなく、色や形もしっかりしないのだ。
だから、事故が一番起こりやすい時間とも言われている。
それだけ、夜が暗いということで、昔の人も、結構事故があったりしたのだろう。
だから、この時間帯に、
「魔物が降りてくる」
ということになるのか、
「逢魔が時」
と呼ばれるのだという。
そんな逢魔が時に事件が起こったのだから、
「それは、恐ろしさというものが、増幅するというものだ」
といえるであろう、
その日は、夕日がいつもよりも、黄色く見えて、日が暮れかかった時の、ある瞬間だけ、なんとなく真っ赤に見えるような時間帯があり、その時間帯から、非常なる気持ち悪さが感じられたのだ。
その真っ赤で、
「真っ赤と言えば?」
と言われて、今までであれば、
「口紅」
「リンゴ」
などという、比較的平和なものを想像できたのに、この時ばかりはm
「血の色だ」
と思ったのだ、
それはなぜかというと、そもそも、
「緊急事態宣言」
ということで、ほとんど誰も立ち入ることのない場所であり、さらに、普段から、最低限の掃除くらいしかしていない、老朽化寸前の建物なので、埃の酷さといえば、言語道断といってもいいくらいであるだろう。
そんなところで、まだまだ暑い日が続いていたということで、埃が立つ中、さらに、乾燥している状態なので、
「風邪をひいていなくても、引いたかのように思えてしまう」
ということだ。
特に、
「今は、伝染病が流行っているから、こんな状態になっているのではないか?」
ということである。
マスクをしているのは当然で、さらに、いろいろな装備もしていた。
ただ、問題は、
「相手は、空き巣だ」
ということで、最低限の自分を守る道具くらいは持っていた、
立川は、ハンマーのようなものを持っていたが、
「こんなもの、使わないに越したことはないんだ」
ということであった。
もちろん、
「空き巣が出るような時間、いくら3人とはいえ、危ない」
ということで、深夜にはできないということだけは、全員の意見だった。
「じゃあ、早朝では?」
ということで、最初は、早朝の5時くらいに集まって、それから行ったのだが、集まってこれる人が少なくて、
「3人のうち、誰も来なかった」
という日も普通にあったりしたくらいだった。
それを考えると、
「空き巣が、誰も来なかったという日は、実際には少なかった」
この繁華街には、
「1日に1件は、必ずどこかがやられている」
ということもあった。
しかも、
「同じ店が二度やられた」
というのもあり、
「やつらは、狙い目がうまい」
と、関している場合ではないと思いながらも、どうしても関心させられる。
さすがに、
「一度入った店には、二度と入ろうとしないだろう」
ということで、
「警察の目も、黒いうちなどない」
と言ったところであろうか。
「どうすることもできない」
と、店主は言って、手を広げるしかない気持ちも分かる気がするのだった。
目撃者
その時の被害者は、免許証などから、
「平岩」
という男性であることが分かった。
平岩という人は、正直、この雑居ビルの、
「直接的な関係者」
ではない。
「直接的な関係者」
という言葉を使ったのは、このビルの一室を借りていて、営業をしている人ではないということだ。
だから、三人の発見者に対して、
「この人は誰ですか?」
と聞いても、誰もそれに対して。答える人はいなかった。
三人のプライバシーを聞いても、3人ともが、
「ただの、自粛警備隊だ」
ということで、
「この雑居ビルの関係者ではない」
ということだったからだ。
それよりも、この、平岩という男が、
「店の客かどうか?」
ということが問題であった。
ただ、この時に捜査にきた刑事の一人である、桜井刑事は、そうは思わなかった。というより、
「可能性は低い」
と感じたのだ。
なぜなのかというと、桜井刑事が考えるに、
「この死体は、どこかで殺されて運ばれてきたのだとすれば、なぜ、この場所を選んだのか?」
ということである。
そもそも、死体を隠したいのであれば、こんなところに放置する必要もなく、
「どこかの山にでも捨てればいい」
というものだ。
「穴を掘って捨てれば、少なくとも白骨化する可能性は高く、いくら、科学捜査が進んでいるといっても、被害者の身元確定には、そんなに簡単にはいかないだろう」
例えば、
「DNA鑑定」
をするとしても、そのための資料を調べるのに、時間が経てば経つほど、困難になるのは、分かり切っていることである。
だから、
「犯人が、被害者の身元を知られたくない」
と感じているのであれば、本当に、
「山中に埋める」
などというのが、一番手っ取り早いというものだ。
ということを考えると、
「犯人が、ここに死体を持ち込んだ理由は、死体の身元を少しでも分からなくしておきたい」
ということではないだろう。
だとすると、少なくとも財布などを抜き取ることはするだろうし、もっとも、ナイフで刺しているのだから、身体を動かしたりすると、血が噴き出す可能性はあるというものなのだが、
「だったら、死体を動かすのも、リスクが高いのでは?」
と思うのだろうが。
「それでも、死体を動かさなければいけない何かがある」
といってもいいだろう。
ということは、