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異次元交換殺人

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 というのは、
「争った跡がない」
 ということであった。
 そもそも、背中から刺されているので、被害者は、殺されるという意識はなく、いきなり刺したのだとすれば、争った跡がないのも分かるというものだ。
 そして、まわりに血が飛び散っていないのは、
「ナイフを抜いていないから」
 といってもいいだろう。
 ということは、
「犯人は、人間の身体をよくわかっている」
 ということではないか?
 と思えた。
 というのは、
「素人であれば、相手を殺すという殺意があったのであれば、本当に心臓を刺したかどうか分からないだろうから、何度も突き刺すくらいのことをしてもしかるべきではないか?」
 ということだ。
 犯人を刺し殺したとして、そのあと、もし自分が捕まったとして、
「めった刺しでは、明らかに殺意があった」
 ということを認定されて、
「罪がさらに重くなるのでは?」
 と考えるのは、考えすぎであろうか。
 そもそも、相手を殺すことが目的だとすれば、目的が完遂されなければ、元も子もないといってもいいだろう。
 やる前から、
「裁判のことまで考えている」
 ということは、少し変だ。
「捕まって罪になるのが怖いくらいなら、殺人などしなければいいんだ」
 と、犯人の事情も精神状態も知らないで、中立的な立場から考えれば。
「当然。それくらいのことは考えるであろう」
 ということになるだろう。
 警察は、捜査のプロである。
 素人の立川が考えることくらいは想像しているだろう。
 しかし、結局。彼らの、
「公務員」
 であり、うかつな捜査はできない。
 それこそ、小説の中で、探偵が鮮やかに証拠を握って。
「大団円で、事件を、見事に解決してみせる」
 というようなことは、実際には小説の中でしかないことであろう。
「事実は小説よりも奇なり」
 とはまさにこのことで、
「警察というものが、組織としては、雁字搦めだ」
 ということになるのだろう。
 立川は、刑事から、事情聴取を受ける前から、自分の独自の考えを持っていた。
 ただ、
「ある程度くらいなでは、自分の意見は、警察の考えや、事件の真相から、それほどかけ離れているものではないだろう」
 と考えていたのだった。
 警察というのは、確かに、
「公務員」
 であり、
「それだけに、公務というものがあり、それを妨害すると罪にもなる」
 という一般市民にはない、
「権限」
 というものを与えられている。
 とはいえ、昔の特高警察のように、
「治安維持法」
 というものに守られる形で、容疑者や犯人には、
「人権はない」
 とまで言えるような、ひどい時には。
「拷問」
 などによって、洗脳されたり、いうことを聞くようにしなければ、拷問でそのまま死んでしまうということもあったかも知れないくらいの時代があったのだ。
 だから、今の民主主義の時代では、
「警察の横暴はいけない」
 ということであったが、昭和の途中くらいまでは、まだまだ、捜査では、
「警察による誘導尋問」
 であったり、
「強引に、白状される」
 という方法を、
「アメとムチ」
 を使って、誘導され、自白させられることが多かった。
「そのため、犯人でもないのに、犯人にされてしまう」
 という、
「冤罪事件」
 というのが、絶えなかったのだ。
 取調室を閉め切って、ライトを顔に当ててみたり、机やいすを蹴飛ばして、威嚇して見たりなど、昔の拷問のようなことはなかったが、できるだけの脅迫じみたことで、白状させることもあった。
 また、中には、
「お涙頂戴」
 ということで、テレビドラマなどでは、
「老練の刑事による、説得」
 などから、
「落としの〇〇さん」
 などという異名の刑事もいたりした。
 その頃は、自白させることに長けている刑事が、
「優秀な刑事」
 ということであったが、今の時代は、そんな
「力技」
 というのは通用しない。
 そんなことをしてしまえば、それこそ、
「コンプライアンス違反」
 ということでの、
「自白の強要」
 となり、実際に裁判に持ち込まれると、
「警察の誘導尋問で白状しました」
 と被告が言えば、事情は変わってくるのだ。
 昔であれば、
「自白と、状況証拠だけで、起訴する」
 ということが結構あり、有罪にもできたのだ。
 それだけ、自白というものに、証拠能力が強いのだが、裁判になった時、
「自白後の、現場検証であったり、犯行の状況を取った調書では、実際には、物証ではないということで、その証拠能力は、昔のようにはなく、警察のでっちあげといって、弁護側から強い攻撃を受ける」
 ということは、必死であろう。
 だから、今の時代では、昔の刑事ドラマのような、取り調べ風景は考えられない。
 例えば、
「取調室を閉め切る」
 ということは許されない。
 中で何が行われているか分からないというのは、大きな問題だからである。
 さらに、昔であれば、取り調べ中に、定番として、
「かつ丼」
 などが、出前として用意されているようだが、それもありえない。
 一つは、
「食事で自白の強要をしている」
 と思わせるからなのか、単純に、
「警察の予算が足りない」
 というだけのことなのか分からないが、
「警察は、必要な食事以外は、容疑者には与えない」
 というのが当たり前のようであった。
 そもそも考えてみれば、まだ、その人は、犯人でもなければ、被告でもないのだ。
 せめて、
「一番犯人に近い」
 ということで受ける取り調べでは、
「重要参考人」
 ということで、あくまでも、参考人でしかないのだ。
 これが、任意ということであれば、
「出頭を拒否する」
 ということだってできるのだ。
 だから、容疑者として取り調べを受ける時、
「弁護士が来るまで、一言のしゃべりません」
 ということだって、当たり前にあるのだった。
 事件のいろいろなことを考えてみたりしたが、今回の事件は、少なくとも、一番の問題は、
「この被害者が誰か?」
 ということであった、
 正直、自分たちは、
「自粛警備隊」
 というものを築いてはいるが、実際には、
「繁華街全般をランダムに回る」
 というもので、実際には、いくつかの班が同時進行で、見回りをしている。
 つまり、
「合計、十数人という人が、3人セットで、数か所を同じ時間に回っているといいうことで、8組くらいあるのだが、その面々を均等に分けて、2班で、街を東西に分けて、雑居ビルを監視する」
 ということになっているのだ。
 繁華街といっても、そんなに狭いところではない。一つの街の、丁目でいえば2つくらいのところになるので、そこをそれぞれで回るのだった。
 だから、8組で、2組同時の時間にまわるということで、4日に一度回ってくるという計算になるのだった。
 もちろん、見回っているのは、この繁華街の店長さんたちであるが、自分の店のビルを中心に回るということはない、
 もちろん、自分の店がある方に振り分けられることになるが、それ以外にも、たくさんのビルの、さらにたくさんの店の、表から見るだけだが、問題がないかということを見回っているのである。
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次