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異次元交換殺人

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 とばかりに感じていたことであろう。
 立川は、考えてみれば、学生時代から、こういう、
「持ち回り制のリーダー」
 になった時に限って、
「どうして俺ばかり」
 という思いをしたことが何度かあった。
 もちろん、自分が何か悪いことをしたわけではなく、
「団体行動によるイベント参加などで、登山に行った時に、仲間の一人がはぐれてしまったり」
 あるいは、
「海水浴に行くと、おぼれる人がいたり」
 と、なぜか、立川がリーダーになった時、結構トラブルが起こったりしていたのだ。
「だったら、リーダーを最初から決めておけばいい」
 ということになるのだろうが、自分たちの中に、
「リーダーになりたい」
 というような、
「マウントを取りたがる」
 という人はいなかった。
 むしろ、
「そんな面倒なことをしないといけないのなら、俺は抜ける」
 という人が多いので、
「じゃあ、交替制の持ち回りすればいいじゃないか」
 と言い出したのが、何と、立川だったのだ。
 最初は、
「これなら、皆公平だ」
 と思っていたが、結果としては、
「自分だけが、貧乏くじを引くことになった」
 ということで、
「あるある」
 ではないが、
「言い出しっぺが損をする」
 という、言われがちなことになっているのであった。
 そのとどのつまりが、今回の、
「死体発見」
 ということだろう。
 もちろん、これ以上の問題が勃発しないとは限らないが、今までの他愛もないことから比べれば、死体発見というのは、本当にまれなことだろう。
「一生のうちに、死体を見るなんてこと、そんなにあるわけではない。ましてや、殺害された死体など、一生のうちに一度でもあれば、それこそ貴重な体験だといってもいいだろう」
 さすがに、それを口にするのは、憚れる。
「なんて、不謹慎な」
 と思われるに違いないからだ。
 相手が、
「毎日のように、犯罪と向き合っている刑事であるとしても、この冗談は、冗談ではない」
 と言われるに違いない。
 そんな警察であるが、さすがに、事情聴取というと、あまり気分のいいものではない。
 この時は、
「三人一緒」
 という事情聴取であった。
 それが分かった時、
「ああ、さすがに警察は、自分たちの中に犯人はいないと考えたのかな?」
 と勘ぐってしまった。
 もし、この中に犯人がいると思っていると、警察は、個別に事情聴取をするのではないだろうか?
 というのは、
「個別に話を聞いて、それで、辻褄が合わなければ、その人が怪しい」
 とも考えられるからであった。
 しかし、実際には、皆一緒に聞いた。
 ということは
「警察は、この中に犯人はいないと思ったから、時間短縮の意味でも、三人一緒に話を聞くことにしたのだろう」
 と考えたのだ。
 それを考えると、
「警察もバカじゃないな」
 と思ったが、それは、あくまでも、
「この中に犯人はいない」
 という結論で考えた場合であった。
 ただ、立川もバカではない。
「もし、この中に犯人がいるとすれば、わざわざここで見つかるようなことはしないだろう」
 と思ったのだ。
 そして、
「犯人が、最初から殺意はなかったのではないか?」
 ということも考えられるが、
「だったら、ナイフで刺殺というのはおかしい。最初から、殺すつもりで凶器を用意していた」
 と考える方が、よほど自然ではないか?
 と考えてくると、やはり、
「犯人は、この中にはいない」
 と考えたとしても無理はないだろう。
 となると、疑問は、
「なぜ、この男がここで死んでいるのか?」
 ということであるが、一番考えられることとしては、
「この男が空き巣で、ここのどこかの店舗の人がたまたま、自分の店に、何かを取りに来たというような時、見つかったのかも知れない」
 という考え方だ、
 ただ、そうなると、凶器の問題や、犯人は、ここの人間ということになるのではないだろうか?
 さらに、立川は、
「もう一つの仮説」
 というものを立ててみた。
 それは、
「空き巣複数説」
 ということである。
 しれにも2パターンあり、一つは、
「まったく関係ない空き巣」
 というのが、
「この場所でバッティングしてしまった」
 という考え方である。
 というのは、
「これだけ頻繁な空き巣がいるとすれば、一つのビルを狙っている人が複数いても、無理もない。それがたまたま一緒になって、お互いの警戒心から、どちらかが、どちらかに襲い掛かり、そのどさくさで、殺されてしまった」
 ということである。
 犯人というのは、見つかった時を考えて、相手を恫喝するために、護身用といってもいいナイフを所持していたとしても、それは無理もないからだ。
 もう一つの場合であるが、これは、複数説といっても、今のような、複数の空き巣が存在したというわけではなく、
「一つの空き巣を、数人で実行した」
 という場合である。
 最初に入念な計画を立てた人がいるとして、共犯が、きちんとふるまってくれるかどうか分からない。
 それはあくまでも、計画者が、几帳面な性格で、共犯が、ちゃらんぽらんであれば、計画通りにはいかないだろう。
 もっとも、
「それが分かっているとすれば、そんな相手を共犯にしなければいい」
 ということなのだろうが、いざとなった時は、
「こいつにすべての罪を擦り付ける」
 くらいのことを考えていたとすれば、理屈には合うだろう。
 しかし、想像以上に、相手が、自分から言わせれば、
「間抜け」
 と思っていなかったということかも知れない。
 最初のうちは、何とか理性を抑えてきたが、あまりにもいうことを聞かないことで、主犯が切れてしまい、
「共犯を思い余って、刺し殺してしまった」
 ということも、決して言えなくもないだろう。
 ただ、この可能性はあまりにも薄い気がする。
「やはり、ここまでひどい相手を、仲間に引き入れるというのは、大きなリスクになるからだ」
 といえるだろう。
 もっといえば、前者の、
「それぞれの複数犯」
 というのは、もっと可能性が低い。
 同じところに、同じ日のしかも、同じタイミングで入るなどというのは、
「できすぎている」
 というもので、
「それこそ、示し合わせての犯行ではないか?」
 とさえ、勘ぐることもできるような犯罪は、信憑性としては、
「相当に薄い」
 といってもいいだろう。
 やはり、
「犯人複数説」
 というのは考えにくい。
 それに、立川は、被害者をみて,まったく違和感を感じなかったのだが、その違和感のなしというものが、
「違和感だ」
 といってもいいかも知れない。
 警察がどこまで考えているのか分からないが、あくまでも、まだ、
「死体が発見されて、初動の鑑識と、第一発見者から事情を聴く」
 というところであろうから、警察としても、考えはあるかも知れないが、断定的なことは言えないだろう。
 死亡推定時刻も、死因も、あくまでも、
「司法解剖前」
 ということで、
「表に見えたことしか、言えない」
 ということである。
「犯人が、誰なのか?」
 ということはもちろんのこと、もっといえば、立川は、
「本当に殺害現場は、ここなのか?」
 と思っているのだ。
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次