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異次元交換殺人

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 と、鼻歌を口ずさみながらでもないと、やっていられないと思っていることだろう。
 そんな中において、ある街の警備隊が、いつものように、
「空き巣は大丈夫か?」
 と見回っていると、一人の隊員が、
「ギャッ」
 と悲鳴を上げた。
 その様子は、
「本当はもっと大きな声が出てしかるべきなのだが、あまりの驚きと、この薄暗い中で、懐中電灯で照らしているという状態」
 ということで、ちょっとしたものでも、恐怖を感じるということになるのだろうと考えると、その悲鳴が、最終的に、声を飲み込むかのようになってしまったというのも、無理もないことであろう。
 その声に驚いて、あとの人たちがその場所までくると、今度は、やってきた人が、一瞬にして身体が固まってしまい、
「何が起こったんだ?」
 ということで、パニックになるべき事態であるはずなのに、結局、声も出せない状態になってしまい、しばし、その場は凍り付いてしまった。
 そもそも、誰もいないはずの場所だったので、凍り付いている状態に、
「自粛警備隊」
 というものが、
「生気を送った」
 といってもよかった。
 その警備隊が、今度は、一瞬にして、元に戻されたというその状態は、
「もう、どうしようもない」
 という、またしても、これまでに何度となく見せられた、
「この世の地獄」
 というものを思わせた。
「すでに慣れているはずなのに」
 と思うが、
「地獄というものは、何度見せられても、慣れるものではない」
 ということなのか、
「驚きも、結局、地獄の数と同じなんだ」
 ということになるのであった。
 今目の前に転がっているのは、うつ伏せに、一人の男が倒れていて。その背中には、光るものが突き刺さっていた。それがナイフであることは、一目瞭然で、倒れている男は、口を開けたまま、かすかに口から血が出ているのが感じられ、目は瞬きどころか、まったく閉じる気配は感じられない。
「これが、断末魔というものか?」
 ということで。皆、その場で固まったものだ。

                 第一の殺人

 空気がまったく動いていないといってもいい様子が、どれだけ続いたのか分からない。
 そういえば、最初に発見した人が、自分の中でパニックになりながら、頭の中で、昔のアニメを思い出していた。
 そのアニメというのは、毎回の一話完結だったのだが、ある街が、紫色の幕のようなものに覆われていて、実際には、その色が見えたわけではなく、テレビを見ている人に分かりやすくするために着けていただけらしいのだが、その世界に入り込むと、そこは凍り付いた世界であり、誰も、まったく動いていないという話だった。
 しかし、実際には、
「誰も動いていない」
 というわけではなく、
「あまりにも遅いスピードで時間が進行している」
 という世界だったのだ。
 地球侵略を企む、宇宙人によって、そんな世界が作られたということであったが、この事態を最初に発見した男性は、そのことがなぜか頭をよぎって、考えるということから離れないのであった。
 それを考えていると、
「そう簡単に我に返れるわけはない」
 ということで、身動きができない自分というものを、何とか、自分自身で納得させようという感覚だったのだろう。
 そんな中で、一人が、この金縛り状態から抜けると、つられるように、他の人も抜けることができて、今度は、生の状態で恐怖が襲ってきたのだが、身体が動ける分、
「何とかしないと」
 と思えるようになった自分を、
「ここで逃げては却って、どうすることもできない」
 と考えることで、何をするべきかということを真剣に考えた。
 しかし、真剣に考えるまでもなく、
「とにかく、警察」
 ということは分かり切っていて、一人がスマホを取り出して、 110番したのであった。
 警察はそれからすぐにやってきた。
 一瞬刑事も、この
「自粛警備隊」
 というのを見て、驚いた様子だったが、今はやりということで、別に驚くことでもなく、本当に一瞬だったのだ。
 刑事二人と、鑑識がやってきていたが、まずは、鑑識捜査が初動捜査の基本ということで、静かに、そして、厳かに、時を刻むように、その場の捜査が行われた。
 まるで、
「刑の執行がされているかのようだ」
 という雰囲気にさっきまでのどれとも違う緊張感に、
「自粛警備隊」
 の連中は、一か所に集まって、鑑識捜査を見ていた。
 鑑識が、一言の発することなく、厳粛に、しかし、まるで、形式的に動いているようにしか見えなかったが、実際には。その様子をまわりから刑事が見ていて、テキパキと指示を出している。
 ただ、その指示が的確かどうかわかったものではないが、見た目では、的確に見えていたというだけのことであった。
 刑事は、その様子を見ながら、顔は真剣であるが、慌てている様子はまったくない。
「刑事までもが、形式的に見える」
 というほどで、
「やはり、刑事というのは、百戦錬磨なんだな」
 と、警備隊の面々は、
「さすがにそこだけは、リスペクトせざるを得ない」
 と思ったことだろう。
 警察が、来てからどれくらいだろうか? 一人の鑑識官が、刑事に向かって。
「凶器は、背中に刺さっているナイフで間違いないでしょうね」
 といって、突き刺さったままのナイフはそのままにしていた。
 さすがの警備隊の面々も、
「鑑識も刑事もナイフを抜かない」
 ということは分かってたことだ。
 理由としては、
「ここで抜いてしまうと、解剖の時に、犯行当時の事情が分からなくなる」
 ということと、
「もし、抜いてしまえば、そのあたりに血が噴き出して、汚れてしまい、鑑識捜査の妨げになったり、発見できるものが間違った形で認識される」
 ということになってしまうということであろう。
 それを考えると、ナイフを抜くわけにもいかない。
 そもそも、死後硬直が始まっているだろうから、抜こうとしても、抜けないということも十分に考えられるだろう。
「死亡推定時刻は?」
 と刑事が聞くと、
「そうですね、死後、5,6時間というところでしょうか?」
 ということであった。
 刑事も、警備隊の連中も、みんな同時に、時計を確認した。今の時間が、午後9時くらいだから、
「時間的には、昼下がりから、夕方になるかならないか」
 ということになるであろう。
 それを考えると。
「この時間というのは、普段なら、学生が帰宅する時間か」
 と、普通の毎日を思い浮かべたが、今は学校は休校で、しかも、街は、
「緊急事態宣言中」
 ということである。
 誰もが、
「前は活気があったな」
 と思ったことだろう。
「そして、なんで俺たちがこんなことしないといけないんだ」
 とばかりに、また、毎回考える同じ思いに立ち返らなければいけないのかということを考えてしまうのだった。
 鑑識の調べが一通り終わり、刑事がこちらにやってきた。三人の隊員の中で、一人
がリーダーということであるが、そのリーダーも決まっているわけではなく、持ち回りで毎回違うのだった。
 その中で今日は、
「立川」
 という男が、そのリーダーの日だった。
 当然、内心では、
「なんで俺の時なんだよ」
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次