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異次元交換殺人

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「ああ、彼から初めて、平岩が詐欺をしているということを聞いたんだ。やつがいうには、自分も詐欺グループに誘われたが、断ったということだったんだよな」
 ということであったが、それを聞いた詐欺担当刑事は、
「それはおかしいな」
 という。
「どうしてなんだい?」
 と桜井刑事が聞くと、
「だって、木下という男は、我々のブラックリストに載っていて、しかも、平岩よりも、歴が長く、しかも、百戦錬磨なやつですよ」
 というではないか。
 それを聞いて、桜井刑事は少しびっくりしたようだ。
「どうして、すぐに分かるようなウソをついたんだ? しかも自分から出頭してまで」
 と桜井刑事が疑問を呈すると、それを聞いた、詐欺担当刑事が、
「それはそうだろう。灯台下暗しというじゃないか。当たり前のように言っていることが、実は全部ウソだったりするものさ。しかも、敢えて、自分が、日の中に飛び込んでみたりすることで、却って、相手を欺けると考えるのは、やつらの常套手段ですよ」
 と言った。
「なるほど」
 と桜井刑事は言ったが、それは、確かに、刑事課の捜査でもそうではないか、むしろ、その方が多いくらいだ。
 彼のいうように、
「常套手段」
 といえるかも知れない」
 と感じたのだ。
「それにしても、どうして、そこまで考えれるのだろうか?」
 と桜井刑事がいうと、
「俺たち、詐欺担当のものは、正直、刑事課の人間とは、あまりそりが合わないのさ。これは、君たち刑事課が、管轄争いをしているようなものだから、何となくは分かると思うんだけどね」
 と言われ、
「うん、それはそうだ」
 と言った。
 確かに刑事課だって、
「縄張り争い」
 はひどいものだ。
 同じ署内での、別部署との確執というのも、実際にはある、刑事課は、そこまでは意識がしないが、
「マルボウ」
 であったり、
「詐欺相手」
 であったりなど、いろいろであろう、
 それを思うと、どうしても、いろいろと考えさせられるというものだ。
 だが、どうやら、彼は、桜井刑事と同期で、署内でも、一番の仲良しであった。その彼からの情報なので、間違いもないだろう。
 それにしても、あの木下という男、詐欺師でありながら、何を堂々と、目撃者として、我々の前に姿を現したというのか?
 あの連中くらいになると、
「我々警察の行動パターンや思考回路を読んでいる」
 ということも考えられる。
 それを思うと、
「こちらも、それくらいのことを考えていかないといけないだろうな」
 といえるだろう、
 桜井刑事は、やつらを、
「百戦錬磨の犯罪集団」
 と位置づけ、正面からまともに相手しない方がいいという考えを持つということにしたのだ。
 というのも、
「少しでもわざとらしいと思うことがあれば、疑ってみる」
 という考えである。
 となると、目撃者として、現れたことにも、何か思惑があってのことだし、証言内容も、まともに聞けば、
「突っ込みどころ満載」
 といってもいいだろう。
 しかも、事件が発生してから、かなり経っての目撃証言。
 本人は、
「警察への出頭を迷った」
 というような、しおらしいことを言っていたが、相手が、
「したたかな人間だ」
 ということが分かってしまうと、
「それどころではない」
 ということになるだろう。
 というのも。
「俺たちの灯台下暗しというものを狙っているのではないか?」
 と考えたのは、まさかと思うが、
「警察が考えないようなことを考えて、こちらの度肝を抜こうとしているのではないか?」
 とすら思った。
 というよりも、
「奴らが、こちらの思考回路を握っていないと、できないことであろう」
 ということであった。
 というのも、こちらのことをいかに考えているかということであるが、
「我々の思考回路の外の限界を知らないとできないことだ」
 と思えたのだ。
「相手の上前を撥ねようと思うと、相手のすべてを知っている必要がある」
 しかし、そんなことはできっこないので、なかなかそこまでしようとは思わないのだろう。
 しかし、それでも、相手がしようと考えるのであれば、せめて、外枠の結界部分くらいがどこにあるのかということを知る必要がある、
 それが、普通の人間にはなかなかできないが、
「詐欺を働く人間には、そこがないとできないことではないだろうか」
 そのことを、知っていないと、警察もうかつに動けない。下手をすれば、相手は、それを見越して、罠を貼っているかも知れない。

                 大団円

 やつらとすれば、こちらをやっつけることをする必要はないのだ。
「警察が動けない」
 という状態にさえしておけば、自分たちは詐欺を行っても、うまく逃げられさえできればいいわけだ。
 しかし、警察としては、逮捕して、起訴し、最後には裁判で有罪にしないといけない。
 そもそも、警察の目的というのは、
「犯人逮捕」
 でもなければ、
「罰を与える」
 ということでもない。
「被害者を出さないようにする」
 ということが、
「平和な世の中を作る」
 ということで、そこに目的がある。
 といってもいいのではないだろうか?
 それを考えると、
「警察というのが、いかに難しいところなのか?」
 ということが分かる。
「それなのに、どこまで警察に特別な権力があるのか?」
 ということになれば、捜査に合うだけの権力があるとは、
「到底思えない」
 ということであった。
 そもそも、今の時代は、民主警察。
 しかも、今の時代は、
「コンプライアンス違反」
 の問題であったり、警察のモラルの問題であったりする。
 何といっても、警察というのは、
「公務員」
 であり、
「国民の税金で飯を食っている」
 といってもいいだろう。
 だから、
「公務執行妨害」
 という言葉があるのであって、
 もっといえば、警察は、それ以上に、不祥事であったりを特に嫌う。
 そういう意味で、捜査上のこととして、
「我々警察において、絶対に起こしてはいけないのは、冤罪というものだ」
 ということである。
 特に、昔のような、
「特高警察」
 であったり、
「民主警察」
 と言われるようになっても、昭和の頃までは、平気で、
「自白の強要」
 というものが行われていた。
 刑事も人間である。
 被害者の無残な殺害現場などを目撃すると、犯人に対しての憎しみが浮かんでくるのは当たり前というもので。容疑者を逮捕すれば、逮捕した時点で、
「こいつが犯人だ」
 と決めつけてしまうようなことになりかねないというものだ。
 それを、思い込みにより、憎しみから、
「行き過ぎの取り調べ」
 が起これば、気が弱い人であれば、
「自白の強要」
 ということになってしまい、警察の失態がその瞬間に出来上がってしまうということになるだろう。
 最初は、
「警察官も人間だから、勧善懲悪の気持ちは老全ある」
 ということで、警察にひいき目だったが、
「犯人と決めつけてしまった瞬間」
 から、
「冤罪事件を生んでしまった」
 ということになるだろう。
 少なくとも、裁判で無罪になったとしても、
「検察が起訴した」
 ということに変わりはないのだ。
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次