小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

異次元交換殺人

INDEX|16ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

「被害者って、たぶん、平岩さんじゃないかと思うんですが、違いますかね? あの人は、最近、詐欺まがいのことをしていると聞いたことがありました。それに実際に、最近はみかけなかったんですよ。それでどうも自分を狙っている人がいるということから、その人から逃げていたようなんですね。自宅も分かってしまっているので、このままでは、自分の命が危ないということで、自宅にも帰っていないようですね」
 と、言ったが、木下は、よく被害者のことを分かっているようだ。
「じゃあ、木下さんは、その平岩さんとは、面識があるんですか?」
 と聞かれた木下は、
「ええ、あります。実は私も以前に、その詐欺商法のグループに誘われたことがあったんです。私はすぐにそれが詐欺だということが分かって、入らなかったのですが、平岩さんは、飛びついていましたね」
 というので、桜井刑事は興味深くなっているようだ。
「平岩さんは、それを詐欺だと分かったうえで、飛びついたんでしょうか?」
 ということを聞くと、
「ええ、分かっていたようですよ。あの人も、保険お営業の端くれ、分からないはずはないでしょう」
 と木下はいう。
「被害者の家に行ってみると、ほとんど生活臭がしなかったのは、そういうことだからかな?」
 と聞くと、
「それはそういうことでしょうね。自分が詐欺を働くと思うと、さすがに、一か所にとどまっているのは危ないですからね」
 と木下がいうので、
「まるで、逃走犯のようですね。費用もかなり掛かるだろうに」
 と桜井刑事がいうので、
「そりゃあ、そこまでしても、余りあるくらいの金額をせしめているからなんでしょうね」
 と木下がいうので、
「いくら、お金のためとはいえ、そこまでして、詐欺に走りますかね?」
 と桜井刑事が聞くと、
「詐欺集団というのは、私には理解しかねるところがありますが、お金目的ではないところがあると思うんですよ、今まで一生懸命に働いてきたのに、報われなかったり、ひどい時は、何か問題が起こった時、誰か一人に責任を押し付けて、上の人は、のうのうとしているというようなことだって、平気でありますからね」
 と木下は言った。
「そこまでさせるほと、会社ってひどいんですかね?」
 と桜井刑事は考え、世間でよく言われる、
「ブラック企業」
 という言葉を思い出していた。
 職種によっては、残業時間の平均が、平均でも、数十時間というのが当たり前というところもあったりする。その人たちの一定数が、精神疾患を患い、辞めていくっ人が後を絶たないという。
 たろえば、
「学校の先生」
 などというのは、それが顕著のようで、
「学校での、教師としての、業務時間にプラスして、部活の顧問であったり、生活指導なども考えると、就業時間以外でも、大変だという。さらに、修学旅行などに行った時は、睡眠時間が、2,3時間しかないという話も聞く。生徒にとっては、楽しい修学旅行も、教師にとっては、地獄といってもいいだろう」
 という話を聞いたことがあった。
 そんな毎日の学校で、楽しいことなどあるわけはない。それは、
「学校の先生」
 に限らず、他の職種であったり、普通だったら、そんなこともないが、企業によっては、本当のブラック企業ということもあるのだろう。
 この間訪れた時には分からなかったが、
「卑猥輪がかつて勤務していた」
 という保険会社も、そんな雰囲気が垣間見れた気がしたのだ。
「きっと、もう一度いけば、見えなかったことも見えてくるんだろうな」
 と、桜井刑事は感じたのだ。
「じゃあ、そんな詐欺を働く平岩さんに対して、恨みを持っていた人も結構いたんでしょうね?」
 と聞いてみると、
「いたと思いますよ。特に詐欺というのは、意外と最初に自分たちの身内からやってみるということが多いようなことを聞きました。だから、調べてみれば、分かりそうな気はするんですけどね」
 と、木下がいうのを聞いて。
「確かに、その情報がなくて、ただ、平岩のことを知りたい」
 と思って、彼の身辺を探っていただけであったが、この話を聞いたうえで、捜査をしてみると、
「今までに分からなかったことが分かってくるかも知れない」
 と感じたのだ。
 桜井刑事は、そこまで聞くと、再度この情報を元に、事件を洗いなおしてみることにした。
 ただ、木下という男の態度も、
「どこまで信じていいのだろうか?」
 ということを感じさせる男だったこともあって、必要以上に、この男に心を開くとひどい目に遭いそうな気がしたのも確かであった。
 木下という男も、一緒に探ってみることにしたのだ。
「目撃者」
 としての、木下であったが、彼が目撃者だとすれば、被害者を知っているというのは、どこか都合がいいような気がする。
 しかも、やつは、こちらが、
「目撃現場はどこですか?」
 ということを聞いて、一瞬驚いたにも関わらず、それ以上言及しようとしなかった。
「ひょっとすると、あの時、驚いて見せたのも、フェイクかも知れない。何もかも分かっていて、驚いたふりをしているのであれば、やつもやり方は、実に巧妙といってもいいのではないだろうか?」
 それを思うと、
「ついでに犯人も知っているのではないだろうか?」
 と思ったが、犯人については、何も言わない。
 それなのに、被害者のことは、誰なのか分かっているということだ。
 ということは、
「あの木下という男、被害者の姿を見ていることは間違いないだろう」
 ということであった。
 ただ、彼が犯人であるということは、早急な考えだ。何しろ、自首というわけではなく、
「目撃者」
 という形で出頭してきたのだ。
 それを思うと、
「一体、何を今頃になって、出頭してくる気になったのだろうか?」
 ということも言える。
 特に、
「被害者を分かっているにも関わらず」
 にである。
 そんなことを考えると、
「この男、犯人かどうかは別にして、事件に何かかかわっているのかも知れないな」
 と思えた。
 共犯であり、その役割が目撃者という役である」
 ということも、事件としては、決して珍しいことではないだろうといえるのではないだろうか?
 それを考えると、
「事件の側面的なもの」
 というものが、おぼろげながら見えてきたような気がした。
 実際に、木下がいうように、
「被害者が、詐欺をしていた」
 ということを前提に詐欺行為を頭に入れてみると、分かってくることもあった。
 さらに、同じ署内で、こういう捜査をしている部署に聞いてみると、
「ええ、この管内にも、詐欺が横行しているということは分かっています。平岩ですか? ああ、あの男も、詐欺師として、我々のブラックリストに載っていますよ。ここ最近になって、載ってきたので、比較的新しいやつですね。確か、こいつ、最近殺されたんですよね?」
 と聞かれて、桜井刑事はゆっくりと頷いた。
「我々の捜査では、この平岩という男の正体がなかなかつかめないですよ、この間木下とかいう目撃者が現れて、木下が詐欺をしているということを、我々に吹き込んでいったんだけどね」
 と桜井刑事は言った。
「木下?」
 と詐欺担当の刑事が聞いてきた。
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次