小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

異次元交換殺人

INDEX|10ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 ということであり、今のところの捜査で、先決なこととしては、
「被害者の実質的な特定」
 ということと、
「犯行現場もハッキリわかっていないということでの、犯行現場の特定」
 ということになるのだろう、
 もちろん、捜査が進む中において、徐々にその方針が少しずつ変わってくることは、当然のごとくであろう、
 なぜなら、あまりにも不確実すぎる状況ということだからであり、警察も、まだ初動捜査の延長くらいにしか思っていないだろう。
 そんな状態において、事件が急転したのが、事件が発生してから、1週間くらいが立った時であった。
 その男が現れたのは、犯行現場近くの交番に出頭してきたことだった。
 出頭といっても、
「自首してきた」
 というわけではない。
 本人曰く、
「その事件のことを知っている」
 といういわゆる、
「目撃証言」
 というものであった。

                 犯罪心理学

 事件のあったその日から、警察はいつもの捜査に沿う形で、近所の聞き込みを、足を使って地道に行っていた。
 それは、警察の、捜査マニュアルといってもいいだろう。
「普通のことを普通にしていた」
 というだけのことである。
 それが、ほぼ最近までは行われていた。
「ちょっと長いのではないか?」
 とも思われるが、
「犯行現場はここではない」
 という意識があったことで、
「特に、付近の聞き込みは入念に行う」
 ということであった。
 そして、同時に被害者の身元を、全力で探っていたが、そもそも、そのもとになる情報が少なすぎるので、捜査員をさくまでもないのだ。
 だから、こちらの聞き込みに捜査員を増員することでバランスを保っていたのだが、こちらの聞き込みも、いまいちはかどっていないようだ。
 重要と思えるようなことが、何もないからであった。
 だが、少しだけ、被害者のことが分かりかけてきたことで、そちらに捜査の目を向けなければいけなくなったことで、こっちは、おろそかになり、捜査員を、向こうに回すことになったのだ。
 被害者のことが分かってきたというのは、それほど大げさなことではないが、
「勤め先」
 と言っても、数年前まで勤めていたという会社が分かったからだ。
 その会社というのは、ある保険会社で、そこで、
「課長をしていた」
 ということであった。
 被害者の年齢は、45歳ということだったので。、
「前の会社で、課長をしていた」
 というのも分かるというものだ。
「平岩課長は、そんなに何か特化したようなところはなかったかも知れないですね。特に人から恨まれるということはなかったと思います。もっとも、数年前までの話ですから、その後どんな感じだったのか分からないですけどね」
 と、被害者と同期入社という人から話が聞けた。
 しかし、その後、彼のかつての部下だったという人の話が聞けたのだが、
「平岩課長ですか? あの人は、変わってましたね、普段は普通なんですけど、あれは、ほら吹きとでもいえばいいのか、大風呂敷を広げて、ちょっと、常軌を逸するようなことをいうことがあったんですよ」
 という。
「ほう、それはどういうことですか?」
 と聞くと、
「自分は会社を立ち上げるので、その時は自分に来てくれるか? などということがあったんですよ。もしそうだとしても、いきなり、どこから漏れるか分からないような情報を簡単に話すところがあったので、それこそ、何か、精神疾患でもあるか、多重人格なのではないか? と思ったりしましたね」
 というのであった。
「じゃあ、平岩さんが、退職された時はどうだったんですか?」
 と聞いてみた。
 同僚にも同じことを聞いたが、
「いえ、別に何もないですよ」
 という答えしか返ってこなかったが、今回部下から聞けた答えとしては、
「本人曰くですが、起業のパートナーが見つかったので、自分は、これから起業の準備をするといって辞めていったんですよ」
 というではないか。
 部下からはそれ以上の詳しいことは聞き出せなかったが、少なくとも、
「同僚と、部下とで、ここまで証言が違うということは、それだけ、普段から多重人格性があった」
 ということになるのであろう。
 それを思うと、
「あの男は、どっちが本当の性格なのだろうか?」
 と考えたが、逆に、
「どっちも本当なのかも知れないな」
 とも思えた。
 それは
「ジキルとハイド」
 のような、同一の人間の中に。まったく別人、対称となる性格が潜んでいるという場合であったり、
「双極性障害」
 などという、精神疾患などによって、作られる
「多重人格性」
 というか、
「躁うつ病」
 といってもいい、実際に病的なものだったりする可能性があるというものだ。
 それを考えると、
「今回の被害者には、病的なところと、多重人格性があるということを踏まえなければいけない」
 ということであった。
 そうでなければ、相手を、
「普通の人間」
 として考えるわけにはいかなかった。
 そもそも、
「被害者」
 というものになる人間なのだ。
「何か、曰くがある人間だと最初から考えてもいいだろう。刺殺である以上、相手が凶器を用意していたということであり、普通であれば、銃刀法違反の罪を考えれば、普段から持ち歩くはずもない。それこそ、何か誰かに狙われていると感じている人で、疑心暗鬼な人ならあり得るかも知れない」
 ということである。
 今回の被害者は、本当にどう解釈すればいいのか分からないが、一歩、
「被害者の全容解明」
 というところまで、少し進んだといってもいいだろう。
 ただ、それが、まだ一部だけのことなのか、ほとんど分かってきたといってもいいことなのか、正直誰にも分かっていないといってもいいだろう。
 引き続き、
「被害者が会社を辞めたあと、彼が言っているような、起業の準備に本当にいそしんでいたのかどうか、なかなか足取りがつかめないでいた」
 といえる。
 しかも、そこから先の被害者の足取りがぷっつり切れているというのは、そこに何かの作為的なことが潜んでいるのではないか?
 と思えてきて、
「どう解釈すればいいんだ?」
 というものであった。
 そんな状態が、誰にも分からない状態で、少しずつ、事件の解明を行おうとしていたところで、
「交番に、目撃者と名乗る男が現れた」
 ということで、
「事件は、別の方向にいくのではないか?」
 とも考えられるのであった。
 交番に出頭してきた人がいうのは、
「この間、死体が発見されたことで、ちょっと気になることを見た」
 ということで来た男だった。
 交番の警官も、先日の殺人事件のことは、まだ頭にしっかりと残っていて、その景観本人も、刑事と一緒に出向いたからであった。
 その警官は、捜査に加わることはなかったが、黄色い線を貼ったり、鑑識官のお手伝いをするなどの、雑用をしていた。
 それでも、死体を運び出すところを自分がやったりと、それなりのことをしていたのだ。
「これも警官の任務」
 と思っていた若い警官だったが、彼は、実際には、まだ警察に入って2年しか経っていなかったので、殺人現場に入るというのも初めてだった。
作品名:異次元交換殺人 作家名:森本晃次