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間違いだらけの犯罪

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「やっぱり警察のやることだ」
 という意味の、
「さすが」
 であった。
 警察というのは、基本的に、
「民事不介入」
 である、
 夫婦喧嘩も、
「刃物を持ち出して暴れている」
 というのであれば、急いで現場に向かうが、
「口喧嘩」
 であったり、その内容が、離婚の際の、
「財産分与」
 であったり、
「親権問題」
 などは、すべてが、民法の範囲になるので、警察が動くことはできない。
 だから、
「借金取りに追われている」
 といっても、実害があれば別だが、そうでなければ、何もしない。
 相手が、
「指定暴力団」
 であったり、明らかな脅迫であるということが分かれば別だが、そうでなければ、警察は、うかつに動くわけにはいかないのだった。
 それが、
「法治国家の日本」
 ということになるのだろう。
 ただ、この上司がいなくなる理由が見つからないことと、本人が、最近、
「誰かに殺されるのではないか?」
 といって、怯えていたということもあって、一応、警察の方でも、
「何かないか?」
 ということを調べていると、どうやら、
「多額の借金がある」
 ということが判明したようだ。
 それが、
「どれだけの額なのか?」
 そして、
「どこから借りたのか?」
 ということを調べてみると、失踪の理由も分からなくもないということであったが、やはり問題が、
「借金」
 という民事関係のものなだけに、本気で動くわけにはいかないが、ただ、自殺の可能性もないわけではなかった。
 というのは、家族が、最初のうちは、
「プライバシーの侵害」
 ということで、部屋を物色することを控えていたが、さすがに借金の問題が明るみに出ると、
「そうもいっていられない」
 ということで、部屋を探してみると、ある程度分かりやすい場所に。
「遺書」
 というものが置かれていたという。
 そこには、借金のことであったり、家族に申し訳ないということ、最後には、
「死んでお詫びする」
 ということが書かれていて、それを、警察にもっていくと、
「さすがに捜査しないわけにはいかない」
 ということで、捜索願への手配が行われた。
「分かりやすいところに置いているというのは、気になるな」
 ということで、まずは、最近の自殺者の中から、身元が今のところ分かっていない人を探ってみることにした、
 本人が失踪したと思われる時から、そろそろ、一か月が経とうとしている。警察の捜査で、借金のことも、事実だということが分かると、遺書にも信憑性が生まれてくるのだった。
 警察が捜査した、自殺者で、身元が分かっていない人で、さらに、ここ一月の間で発見されたものの中に、問題の捜索人はいないとのことであった。
「実際にまだ自殺を思いとどまっているだけなのか?」
 それとも、
「自殺はしたが、死体が発見されていないだけなのか?」
 ということを考えていたが、
「自殺未遂で、死にきれないまま、どこかの病院で治療を受けているという可能性はないですかね?」
 ということを言い出した人がいて、今度は、病院の捜索が行われた。
 すると、その中で、一人該当する人がいるということで、警察はその病院に赴いたのだった。
 すると、その入院先と思われる病院に行って、実際に、写真を看護婦や医者に見せると、
「ああ、この人ですね」
 といって、その人が、
「自殺未遂のまま、病院に担ぎ込まれた」
 ということが分かったという。
 睡眠薬を飲んで、ガス自殺を試みたということであるが、死にきれず、しかも、すぐに発見されたということで、病院に運び込まれた時は、
「命に別状はない」
 ということで、その時、警察もさほど、気にはしていなかったという。
 もちろん、身元も分かっているということであったので、捜索願が出ていないかということを警察が調べようとした矢先、ある程度まで回復し、動けるようになったところで、本人が、また、失踪してしまったという。
 さすがに、発見された場所の所轄では、
「これは不祥事に当たりかねない」
 ということで、とりあえず、
「ひそかに捜査」
 を行うことにした。
 知っている人もごく一部、これが、知られてしまうと、
「署の名誉にかかわる」
 ということで、秘密裡な捜索が行われたが、そう簡単に見つかるわけでもない。
 行方不明者の捜索など、ローラー作戦でも取らないと、なかなか見つかるものではない。そういう意味でも、所轄としては、焦ってもいただろう。
 特に、捜索願を出している家族には、まだ何も言っていなかったので、
「実際に自殺を試みて、未遂に終わり。病院の担ぎ込まれた」
 というところまでであれば、家族に、病院の場所を教え、そこで、終わりだったのだが、何と、まさか、その本人が失踪するなんて、想像もできなかった。
「問題は、また、自殺を試みないか?」
 ということと、
「借金取りに狙われたりしないだろうか?」
 ということであったが、
「さすがに借金取りも、自殺未遂をした人をこれ以上追い詰めるようなことはしないでしょう。そもそも、死なれてしまっては、借金取り側が一番困るでしょうからね」
 という。
 確かにそれは間違いないことで。
「そうですね。死なれてしまうと、借金の取り立てができなくなるし、自分たちが追い詰めたということになるのを、やつらも恐れるでしょうからね。その説はないかも知れないですね」
 ということであった。
 もちろん、借金取りたちも、失踪した男を探してはいるだろうが、あくまでも、見つかっても、必要以上な、刺激を与えるようなことはしないだろうと思われた。
 そして、もう一つの、
「もう一度自殺を試みないか?」
 ということであるが、
「楽天的な意見ですが、普通は、一度自殺に失敗した人は、二度も、死ぬ結城は持てないと思っている人が多いような気がしますけどね」
 という人もいるが、逆に、
「そういう人は、病院でおとなしくしているんじゃないかな? わざわざ病院を抜け出して、さらに行方不明になるというのは、よほど、借金取りを恐れているのか、何かではないだろうか?」
 ということでもあった。
 ただ、とにかく本人をまず確保することが大切だ。何とか、生きたまま確保しないと、警察としても、しっかりしないといけないということだ。
 警察としても、行方不明者を必死で探している。
 当然、前述のような、殺人事件などで、被害者の身元が分からないものなどが、その対象だったが、今回の、
「墓地で発見された被害者」
 というのも、その該当であった。
 しかも、身元が分かるものを、一切身に着けていないというではないか。これは明らかに、
「身元がバレるのを恐れて」
 ということであろうが、今の自裁の警察の捜査で、身元がバレないということはないだろう。
 となると、
「時間稼ぎ」
 ということになるのだろうが、その時間稼ぎの意味がどこにあるというのか、警察としては、考えさせられるところであった。
 幸か不幸か、墓地にての身元不明事件の被害者が、この所轄であったということで、桜井刑事たちも、ちょうど、捜索願を探しているところに、捜索願で動いている方の刑事たちと話すことになった。
 ただ、それは、
作品名:間違いだらけの犯罪 作家名:森本晃次