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間違いだらけの犯罪

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「この和尚、なかなかやるな」
 と思った。
 だからなのか、本来では絶対に言わないような情報をわざと流したのだ。
「実はですね、この被害者なんですが、どうやら、身体から、身元を示すようなものを抜かれているようなんですよ」
 というと、それを聞いて、本気でそう思ったのか分からないが、和尚の方から、
「えっ、そうなんですか? じゃあ、行きずりの犯行ということもあるということでしょうか?」
 と聞いてきた。
 この状況から考えて、
「行きずりの犯行」
 であることは考えにくい、もし、行きずりであっても、死体の発見が、ここだというのは、
「あまりにもおかしい」
 といえるのではないだろうか?
 明らかに、
「刑事がカモを掛けてきた」
 ということであろうが、だからといって、
「身体から、身元が分かるものを抜かれていた」
 ということは、まんざら嘘ではないだろう。
 それを思えば、
「警察も、体裁ばかり構ってはいられない」
 ということであろうか。
 ただ、もう一つ、警察は、何かを気にしていた。
 それが何かを考えていると、桜井刑事は、こちらの様子を伺いながら、いろいろ考えているようだった。
「いいたくて仕方がないという感じであろうか?」
 と、和尚は感じていた。
 これは犯人にとってなのか、被害者にとってなのか、刑事が何を言いたいのかということを考えていると、最初に思った状況を考えて見ると、和尚が考えたことというのは、
「犯行現場はここではないな」
 ということであった。
 これは、鑑識が見れば一目瞭然であろう、
 なぜなら、人が殺されているにも関わらず、まわりがほとんど荒れていない。
 これが、
「刺殺」
 であるにしても、
「絞殺」
 だとしても、暴れるはずだろうから、まわりが荒らされているのも分かるというものだ。
 といっても、この寺の墓地は、思ったよりも、まわりが殺風景なところであった。
 そういう意味では、犯行が行われたとしても、ここであるかどうか、最初から分かりにくいところであった、
「まさか、犯人がそれを狙って、考えてのことではないだろうか?」
 と、和尚は考えた。
 そして、和尚は、
「自分にもわかるくらいだから、当然プロである、桜井刑事にも、高田刑事にも分かるというものである」
 と感じた。
 それなのに、何かこちらの探りを入れてくるということは、一番考えられるのは、
「こちらが犯人だ」
 ということを決めてかかって、こちらのボロが出るのを待っているのではないだろうか?
 そんなことを考えているとすれば、
「どこまでが、こちらを探っているのか?」
 ということが分からなければ、お互いに、
「腹の探り合い」
 でしかないということになるだろう。
 相手も同じことを思っていて、敢えて、仕掛けてきているのかも知れない。
「ハッキリと分かっていることは、被害者が、絞殺されたということなんですね。だから、あの場に血が流れていなかったですよね?」
 と、高田刑事に言われたが、和尚も、坊主も、正直死体を見たわけではないので、それに関しては何とも言えなかった。
 これは、あくまでも、何かの迷信なのかも知れないが、実は、ここの宗派であるところの宗教団体は、
「死体を直接見てはいけない」
 ということを言われているようだった。
 死体を見るとしても、キチンときれいになった状態で、これから供養をするということで、
「自分たちの出番がある」
 ということになるのだ。
 そのことがあるので、二人とも、死体を直接見ることができないので、だからこそ、すぐに警察に連絡したのだ。
 もちろん、
「死体を直接見てはいけない」
 といっても、不可抗力の場合は仕方がない。
 交通事故などのような突発的なことであったり、しょうがない場合は、見たとしても、それは、問題にされることはないが、そもそも、
「お寺の敷地内」
 というところで、
「供養もされていない死体が、横たわっているなど、想像もしていないだけに、その思いは、とにかく、驚きでしかなかった」
 ということである。
 そんな状態において、いくつかの、
「行方不明」
 というものが、この場に存在している。
 まずは、
「被害者の身元を示すものである」
 この場所が、
「犯人とも、被害者ともに、まったく関係のある場所なのか?」
 それとも、
「関係のない場所なのか?」
 ということを考えると、そもそも、お寺の坊主も、和尚も、殺害された人間の顔を見ることはないのだから、そういう意味でいけば、最初の疑問である、
「元々、死体が仰向けだったのではないか?」
 ということであれば、死体を触るなどできるはずがない。
 この宗派は、当然ながら、供養していない死体を触ることも許されない。
「顔を確認することすらできないのに、触るなど、もってのほかだ」
 といえるのではないだろうか?
 もっとも、刑事は、そんな、
「宗派の掟」
 のようなことを知るはずもない。
 そういう意味では、ここに死体を置いておくというのは、犯人が何かをたくらんでいるとすれば、その目的は、
「死体をお寺に放置する」
 というだけのことで、成り立つというものではないだろうか?
 そんなことを考えてみると、この場における。
「行方不明」
 となっているものがいくつあるのか?
 ということである。
 そういう意味で、お寺側の状況から考えると、
「死体は、他で殺されて、運ばれてきた」
 ということは間違いないだろう。
 誰も悲鳴も何も聞いていないのだから、それも騒然だ、
「お寺の朝が早い」
 ということで、
「深夜はここに持ってきて置いても、誰に見つかることもない」
 ということである。
「行方不明の隠し場所」
 ということではいいかも知れないが、結局死体を隠すという意志はないのだ。
 そういう意味でいけば、
「何が行方不明というのか?」
 ということなのであった。

                 もう一つの行方不明

 青山が、体調を崩している間、青山の会社の方でも、少し厄介なことが持ち上がっていた。
 青山のことを、以前、全否定していた上司が、
「行方不明になった」
 ということであった。
 一応、自宅の方から、捜索願を出してもらったのだが、
「一体、どうなってしまったというのか?」
 ということなのだが、それは、内輪だけの話で、警察が、真剣に捜査しているかどうか、怪しいものだった。
 というのも、
「警察は、事件性がなければ、捜索願を受理しても、動くことはない」
 と言われている。
 捜索願というのを警察が受け取っても、
「ただの家出かも知れない」
 と言われてしまえば、無理もないことだった。
 実際に、
「事件性があると思われた人を探していて、実際に、ただの旅行をしていただけだ」
 ということもあったりした。
 警察からすれば、
「捜索願というものを、一つ一つ処理していたら、他の仕事がない」
 というののだ。
 要するに、
「どれだけの数の、捜索願を裁かなければいけないんだ」
 ということである。
「さすが、警察」
 という意味で、ここでいう、
「さすが」
 というのは、決していい意味ではない。
作品名:間違いだらけの犯罪 作家名:森本晃次