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間違いだらけの犯罪

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 は行ってもいいだろう。
 しかし、これも難しいところで、刑事の中には。
「鑑識から言われただけで、いら立つ人もいる」
 というわけだ。
「刑事の方が偉い」
 とでも思っているのか、
「鑑識ごとき」
 などと口には出さないが、そう思っている人も若干はいるのではないだろうか?
 実際に、口に出す人もいるだろうが、そこは、さすがに鑑識も
「腹が立っても、文句を言えない」
 という、昔からの、
「悪しき風習」
 というものがあるのか、
「刑事には逆らえない」
 という感覚でいる鑑識官もいることだろう。
 そうなると、鑑識も、
「余計なことを言わない方がいい」
 と思うに違いない。
 下手に、進言して、間違っていたり、まったく無駄なことだったりすれば、今度は刑事に恨まれて、
「もう二度と、鑑識は、口出すな」
 と言われて、それで終わり。
 ということになってしまうことだろう。
 そんなことになってしまえば、
「刑事と一緒に仕事をするのが嫌だ」
 ということになり、
「鑑識の仕事は嫌ではないが、刑事との軋轢がたまらない」
 ということで、中には辞めていく人も多いだろう。
 それが、人間関係というもので、特に警察という組織は、
「人間関係」
 ということには、シビアなのかも知れない。
 鑑識の方も一段落したのか、今度は、刑事の一人がこちらにやってきた。
 鑑識の様子を見ていると、
「現状でも分かることがある」
 ということでの、驚きのようなものが、数個あったような気がする。
 それを、事情聴取の時に、言ってくれるのかどうかまでは分からないが、その内容に少なからずの、
「予期していなかった」
 ということが含まれているような気がして仕方がないのだった。
 死体がうつ伏せだったことで、顔もハッキリと分からないので、男か女かもわからない。
 しかし、雰囲気としては、
「女ではないか?」
 と思えたのだ。
 それは、身長から見ても、小さいのが分かった。そして、からdあのくびれなどから、男性にしては、華奢に見えるが、
「出るところはちゃんと出ている」
 と住職にも分かったのだ。
 住職といっても、別に本人も、
「聖人君子だ」
 とも思っていない。
 普通に酒も飲むし、女も抱く。
 ただ、職業が
「寺の住職だ」
 というだけのことであった。
 しかも、この住職は、本を読むのが好きで、昔の探偵小説などが好きだった。
 正直、今回の事件が寺で勃発したというのは、住職としては、
「これ以上の侮辱というのもない」
 といってもいいかも知れないが、
 だからといって、
「私は、別に俗世間から、離れているとは思っていない」
 と感じていることから、逆に、
「この犯人、この私が暴いてやろう」
 というくらいに考えていたりした。
 だからといって。
「警察の捜査の邪魔」
 をするというわけにはいかない。
「自分でできる範囲でやってみて、それでだめなら、それだけのことである」
 と考えれば、気も楽というもので、何といっても、
「寺で人が死んでいる」
 というシチュエーションは、
「住職のプライド」
 というものをかなぐり捨てて、自分の立場を考えることなく、
「他人事だ」
 と考えることさえできれば、
「面白い目で。事件を見ることができる」
 と感じるのであった。
 警察が、第一発見者を呼び出した時、
「私が保護者のようなものですから」
 といって、刑事に名乗り出て、、住職は、
「自分も一緒に話を聞きます」
 といって、そこで同席することにした。
 刑事は、
「そうですね、まだ、彼は未成年ですから、ご住職にそばにいてもらうと、こちらも助かります」
 といって、同席を許されたのだ。
 これは、どこの警察でも、同じような対応であろうが、面と向かった今回の刑事は、想像していたよりも、温和な感じで、
「テレビドラマに出てくる。堅物刑事」
 という感じではない。
「それでは、よろしくお願いします」
 ということで、お互いに、顔合わせというところであった。
 刑事と面と向かって、二人は挨拶をした。お寺側の方は、
 住職を、
「朕然和尚」
 といい、房洲を、
「了然」
 と言った。
 警察側は、上司の方が、桜井刑事で、もう一人が高田刑事という。
 まず、桜井刑事が、最初に質問した内容は、お寺側からすれば、意外なものだった。
「了然さんが、死体を発見された時、あの様子に変わりはなかったですか?」
 と聞くので、坊主は少しびっくりして、
「え、ええ、そうですか?」
 と答えた。
 今の質問は、完全に、
「死体を動かしませんでしたか?」
 といっているようなもので、それが何を意味するのかも分からなかった。
 了然とすれば、
「うつむせになっていたので、顔を確認することもできなかったので、動かせるくらいなら、動かして、確認していますよ」
 と言いたかったくらいだったが、さすがに、相手が何を考えているか分からないだけに、とりあえず、
「ここは、和尚に任せるしかない」
 ということで、和尚が、何を言い出すかということを考えると、黙って見ているしかなかった。
 それを察した、和尚は、
「桜井刑事、今のご質問ですが、それはうちの坊主が、死体を動かした形跡があるということでしょうか?」
 というので、
「ああ、いやいや、実際に、うつ伏せだったのかどうかということが、正直鑑識の話によると、違ったかのように言われているので、それを確認したいと思いましてね」
 と桜井刑事が言った。
 それを聞いて和尚は、
「ということは、被害者が、本当はあおむけだったということが言いたいんでしょうか?」
  と聞くと、桜井刑事は、少し戸惑いながらも、正直に、
「まあ、そういうことですね」
 というと、今度は和尚が少し考えて、
「ということは、鑑識の見解としては、あおむけになっていたという見解だということは、背中に土がついているとか、それとも、死後硬直の具合が、違っているということでしょうか?」
 と尋ねると、今度は桜井刑事が、恐れ入ったというような驚きの表情を見せて。
「詳しいことは、解剖の結果を見ないといけませんが、背中の土の付き具合から、背中を下に向けていたのではないかという考えもあったみたいですからね」
 と桜井刑事がいうと、それに構うことなく、和尚の方は、
「動かしたかどうか、死体に、うちの坊主の指紋がついているかどうかで、分かるというものですよね?」
 というと、またしても、桜井刑事は恐れ入り、
「まさしくその通りですね」
 と言った。
 きっと、この坊主は頭がいい坊主で、死体を発見すれば、触ってはいけないということを瞬時に理解できたということなのだろう。
 だからこそ、さっきからの証言で、
「被害者の顔を確認していない」
 といっているのも、辻褄が合っている。
 先ほど、少し制服警官が、
「あなたは、被害者に見覚えは?」
 と聞かれた時、
「ありません。しかも、うつぶせになっていて顔が確認できないのですから、余計に分かるわけがあるません」
 というのだった。
 これが、
「死体を動かしていない」
 という証明にもなるというものだった。
 それを聞いた桜井刑事は、
作品名:間違いだらけの犯罪 作家名:森本晃次