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間違いだらけの犯罪

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 で、入門した人は、少しあてが外れたかも知れない。
 世間のお寺にも、確かに、
「庶民のために」
 というところもあったようだが、いかんせん、目立たなかったり、庶民が、
「お寺は、別世界だ」
 という考えを持っていたこともあってか、なかなか浸透してもいなかった。
 だが、その当時の住職の力は、結構強かったようで、
「このお寺の近くでは、比較的、栄養失調などで亡くなる人は少なかった」
 ということを、戦後というものではなくなった時代の調査で、白書として、市から発表されたりもしていた。
 そういう意味で、この寺では、
「経済が困窮した時など、助けを求めてやってくる人に対して、ひどい扱いをするようなことはなかった」
 当然、
「門前払い」
 などはなかったし、それだけ、市民からも慕われていたという。
 だから、世の中の景気が良い時は、
「あの寺にお布施をしておけば、いざとなった時、助けてくれる」
 という話が持ち上がり、相当なお布施があったようだが、
「寺としては、必要以上のお布施をいただくわけにはいかない」
 ということで、余分と思った分は、
「丁重にお返していた」
 というものであった。
 だから、高度成長時期には、順調にお寺も潤っていき、元々は、本当に小さな寺だったが、それなりの規模になってきた。
 それでも、地道な努力を続けていたことで、
「バブル崩壊」
 というものの影響もほとんどなく、逆に、
「お布施をいただいたことのある人」
 だけでなく、周辺の自治体であったり、施設などに、惜しみなく、寄付をしていたりしたのだ。
 もちろん、困った人を受け入れるということもあったが、いくら寺が少し大きくなったとはいえ、全員を救えるわけではなく、
「あくまでも、できる範囲で」
 ということから、
「助けを求めてきた人には、平等に施しを与えていた」
 ということであった。
 だからといって、
「本当に金がなくなるまでできるわけでもない」
 要するに、
「共存共栄」
 を、できる範囲で実現していく。
 ということが、大きな目的だったのだ。
 しかも、彼らの宗派は、宗派の垣根を越えていた。
 もし他の宗教団体で困っていれば、
「助けを求めてくれば、それを放っておくようなことはしない」
 という考えだった。
 助けを求めてもいない者にまで施してしまえば、本当に助けを求めている人に対して、「助けてあげられない」
 ということは必至であった。
 そんなこのお寺にて、
「まさか、殺人事件があるなんて」
 ということで、さすがに普段は落ち着いている住職も、内心では、ソワソワしていたようだ。
 さすが住職としては、そんな素振りを、表に見せていなかった。
「微塵もない」
 といってしまうと、語弊があるが、
「み仏のおあす寺にて、このような殺生があるなんて、これは、住職であるわしの、付録の致すところ」
 ということなのだろうが、ここの住職は、
「そんな当たり前のようなセリフを言わせるという気持ちは、持ち合わせてはいない」
 ということで、何も言わなかった。しかし、さすがに、立ち合いくらいはしないとまずいということで、二人で警察が来るのを待っていたのだった。そこから先は前述のように、刑事二人と、鑑識が来たということであった。

                 行方不明

 警察がそそくさとやってきて、静寂の中で、鑑識作業が始まると、最初のうちは刑事ふたりとも、鑑識の様子を見ていた。
 そこで、何かが発見されたりすれば、それを踏まえたうえで、
「第一発見者や証人がいれば、その人に聞いた方がいい」
 ということになるだろう。
 それを感じたのか、最初は、刑事や鑑識の様子を眺めていたが、住職が、一人の刑事に耳打ちするように話しかけると、刑事は、それに頷いて、一言声をかけた。
 その声も、忍び声で、実に静かなものだった。
 すると、住職が、第一発見者である坊主に向かって、
「刑事さんの許しが出たから、いつものお勤めに戻りなさい」
 と、住職は、ニコニコしながら言った。
 このニコニコ顔が、この住職の、
「いつもの顔」
 であり、さっきからの様子を垣間見ていた皆は、住職の表情が、彼らから見て、いつもと違っていたので、
「心配で皆、陰から垣間見ていた」
 ということであった。
 刑事たちから見れば、
「住職は、落ち着いていて、さすがはご住職だ」
 ということであっただろう。
 しかし、他の坊主たちから見れば、
「あんな住職の顔を見たことがない」
 ということであろう。
 というのも、その表情は、完全にこわばっていて、顔色もまるで、坊主たちから見れば、変わっていて、
「まるで土色のようだ」
 と感じていたことだろう。
「そう、車やバスが、黄色い点灯のトンネルの中で、助手席から運転席の人の顔を見た時など、顔色はまったくないように見えて、もしニコニコしていたとしても、その顔には、恐怖が宿っているようにしか見えない」
 というようなものである。
 確かに住職の表情は、
「怖い」
 としか見えなかったであろう坊主たちであったが、それは、さすがに、
「寺の中で死体が発見された」
 ということであるので、それが何を意味するかということを、子供の彼らに分かるはずもない。
 住職とはいえ、
「今までに一度も起こったことのない、前代未聞のできごとがいきなり起こったのだから、顔が青ざめるということも、あって当然」
 ということになるだろう。
 坊主たちは、警察の尋問というのがどういうものなのか、テレビドラマくらいでしか知らないので、
「さぞや、冷淡で、事務的なものなのだろう」
 としか思っていない。
 実際に、そうでなければ、冷静な判断力で、事件に立ち向かうなどできっこないということである、
 坊主も、住職も知らないことであったが、
「刑事として、捜査に向かうには、いろいろ厳しいことがある」
 という、
 刑事としての権利があるとした場合に、
「自分の何親等か以内に、過去に犯罪者がいない」
 ということが前提だという。
 そもそも、警察官として雇う場合には、そういうところま調べ上げて、
「もし、そういう人が身内にいれば、警察官として雇うことはできない」
 ということになるだろう。
 だから、逆に、警察官の身内が、何かの犯罪を犯したとすれば、その警察官も、警察を辞めなければならず、
「退職願」
 を提出するということになるのだろう。
 もちろん、警察の場合が、一番重たいのかも知れないが、
「公務員」
 というのは、そのあたりの規律は、非常に厳しい。
 彼ら公務員は、普通の一般会社員が、何かの罪を犯したとしても、よほど大きなことでもなければ、ニュースで実名が乗ることは、それほどないだろう。
 しかし、
「犯罪に貴賤というものはないのかも知れないが、罪状の大きさからからいうと、飲酒院展でも、公務員が行えば、必ずといっていいほど、ニュースなどで、報道されることだろう」
 しかし、一般市民であれば、
「よほどの酷さでもなければ、実名報道は控える場合が多い」
 という、
 それも、いい悪いは別にして、
「プライバシー保護」
作品名:間違いだらけの犯罪 作家名:森本晃次