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間違いだらけの犯罪

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 実際に、死体発見のその現場を、青山が見たわけではないので、何とも言えないが、本来であれば、
「あの場面で、警察に連絡を入れるくらいのことがあってもしかるべき」
 だったのかも知れない。
 しかし、
「不確実な状態で連絡を入れる」
 というのも、
「人騒がせ」
 ということになるだけで、しかも、その時は、最初から、
「通報はしない」
 と思っていたような気がするのだが、それは、
「すでに、体調が悪くなりかかっていて、それだけ、気分が悪かった」
 ということであろう。
 ただ、何かの気分が高ぶっていたのか、その時は連絡を入れるという感覚ではなかっただけで、意識はしっかりしていたのに、どこか、行動的になれない自分がいたのだ。
 それを思うと、青山にとって、何もできないでいる、その時だったということで、後悔はないつもりだったが、
「それを、いまさら知らされるなんて」
 と、仕方がないことではあるが、連絡しなかったことを後悔してしまった。
 だが、それは、
「きっと、あの場面に出くわした人は、警察に連絡を躊躇したのは、間違いないだろう」
 と思うのであって、
「青山だけのことではない」
 と思うと、少し安心した。
 安心すると今度は、急に身体が宙に浮いてくる気がして、意識が遠のいていくのだった……。

                 施しの禅寺

 時間は少しさかのぼって、青山が病院に来たのは、午後の診察からだったが、そこから、約半日さかのぼるくらいになるのか、時間的には、夜が明けるくらいの時間だっただろうか、
「この時期の夜明けだから、6時半をすぎてちょっとしてくらいのことだったのではないか?」
 と、坊主は、感じていた。
 朝起きてのルーティン通りに、坊主は、朝食の準備、寺の掃除、さらには、墓地の掃除と、それぞれの役割をこなしていた。住職も当然起きていて、いろいろと仕事をこなしていた時間だった。
 一人の若い坊主が、墓地を掃除している時のことだった。その坊主は、他の坊主ほど、さといタイプということではない。どちらかというと、いつも、
「ボーっとしている」
 という方で、時々住職から、叱咤されていたくらいだった。
 だからといって、不真面目なわけではなく、その分、真面目さは、引き立つほどで、
「マイナスを補って余りある」
 といってもいいくらいの真面目さを持っていたのだ。
 それが、その坊主のいいところで、本来ならボーっとしているように見えている時であっても、
「絶えず何かを考えている」
 という男だったのだ。
 そのことを本人は、自覚していないようだった。
 むしろ、
「俺くらいの状態が、本当なら皆同じようになっているはずなのに、自分だけが、集中していないと言われるのは、それだけ、まだまだ修行が足りないからだろう」
 というように、考え方は、基本的に、
「謙虚なところがある」
 ということであった。
 そのせいもあってか、謙虚すぎて、まわりに、追い付けないのを、
「すべて、自分のせいだ」
 と思い込んでしまっていたのだ。
 しかし、それは逆で、
「俺ほど、日ごろから何かを考えているやつがいないほどなので、これが俺の長所なのだろうな」
 と思えるほど、性格的にふてぶてしいくらいであれば、それこそ、住職は、
「こいつなら、寺を任せられる」
 と感じているに違いない。
 しかし、
「この坊主が優しすぎるのか?」
 それとも、
「考えすぎる」
 ということが、却ってマイナス面に働くということなのか、それ以上を考えるというのは、難しいことであった。
 その日も、この坊主は、ボーっとしながら、掃除をしていたことで、そこにある何かを見た時、想像を働かせた。
「動物がいるのかな?」
 と思い、猫かと思ったが、そのわりに、大きさがあまりにも大きすぎる、
「犬や猫の比ではない」
 と思うと、少しずつ近づいてみた。
 まさか死体だとは思っていないし、
「生物だ」
 という思いを最初にもってしまったことで、それ以外の発想は、頭の中になかった。
 彼は、一度、何かを思い込んでしまうと、それ以降は、その考えを覆すなどというと、結構大変だったりするのだ。
 そばに近づいていくうちに、ひそかに逃げられるように、体重は後ろに掛かっていた。
 近づくうちに、その物体が、まったく動かないのを見て、安心はしたのだが、しかし、それが却って不気味さを誘い、しかも、動かないということの方が、本来であれば、もっと気持ち悪いことだということが分かったのだ。
 その物体をよく見ると、大きさから考えても、発見してから、少しずつ近づいていくことで、
「その物体が死体ではないか?」
 と感じてから、それが確証に変わるくらいまでには、それほどの時間が経っているわけではないと感じるのであった。
 そして、実際に、
「それが死体だ」
 と分かった時、
「死体発見などの場面に遭遇すると、どんな慌てふためき方をするんだろうな?」
 と今までに何度か想像したことがあった。
「そこから、必死で逃げようとして、そのまま腰を抜かすかも知れない」
 と考えたり、
「金縛りに遭って、それこそ、声など立てられず、必死になって声を立てようとするが、そんなことできるわけはない」
 と考えたりしていた。
 実際には。その両方を、
「足して2で割る」
 という感じであろうか。
「一刻も早くその場から立ち去ろうとして、のけぞった後、今度は金縛りに遭ってしまって、動くことができない」
 という、一種の、
「2段階」
 という行動に、あれだけ悲鳴を上げるだろうと思っていた自分の喉が、カラカラに乾いてしまい、
「悲鳴など、上げられるわけもない」
 ということを感じていたのだった。
 そこから、どうなって、警察がきたのか、自分でも意識の中になかった。
 つまりは、
「死体を発見してから、警察が来て、事情聴取を受けるまで、自分は寝ていたのではないか?」
 と感じるほどで、その間に、睡眠が入っていたと思うと、
「夢を見ていたのではないか?」
 という、
「自分が第一発見者である」
 ということが分からずに、そのまま、気が付けば、
「どこかに逃げ出したくて仕方がない自分はいる」
 と思うと、
「やはり、自分が発見したのは、死体だったんだ」
 と感じた。
 それは、
「発見した」
 ということが大前提であり、決して。
「死体を8消した夢を見たわけではない」
 と、自覚できている証拠だったのであろう。
 それを思うと、
「私が、どうして、この状態で、これから、警察に事情を聴かれるのか?」
 と思うと、本当であれば、逃げ出したいという気持ちになってしかるべきなのだろうが、住職がやってきて、
「しっかりするんじゃぞ」
 と声を掛けられたことで、覚悟のようなものができたのだ。
「この状況から、犯人だと疑われるということはありえない」
 というのは分かっていたので、堂々としていればいいだけだ。
 だが、この坊主は、まだ高校生で、普段は、学校に通っている、普通の高校生のはずなのだが、この寺に預けられ、3年ほどが経った。
 そもそも、中学時代には、
「窃盗癖」
作品名:間違いだらけの犯罪 作家名:森本晃次