小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

召された記憶

INDEX|11ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 うめき声が、断末魔の声に変わり、次第に、その声が糸を引くように、メリメリという音が、規則的だったはずが、次第に早くなったかと思うと、断末魔が切れて、またしても、静寂が戻ってきたからだった。

                 意図的なのか?

 真っ暗な丸い物体は、こちらを振り向いたようで、そこには、帽子をかぶった真っ黒なサングラスをかけて、マスクをした男が、こちらを振り返り、こちらが、たじろいでいる瞬間に、慌てて逃げていったのだ。
「一瞬のことで、目が追いつかない」
 とは、まさにこのことであろう。
 というのは、気のせいだったのかも知れない。
 男が慌てていると感じたが、そのわりには、音はほとんどしなかった。
 目撃されて、
「まずい」
 と思ったのであれば、慌てて逃げるその間に、幾分かの音がするというのは当たり前のことで、そのことに、その男は分かっているのか、急いで逃げるというよりも、
「音を立てない」
 ということに集中しているかのようだった。
 よく考えれば、
「俺に気づかれてもいいが、他の人には気づかれては困る」
 と感じていたのではないかと思えるほどで、もしそうであれば、向坂には、その男が少なくとも、不可解に感じられた行動の理屈も分かる気がした。
 しかし、だからといって、その男の意図がどこにあったのか分かるはずもなかった。
 そんなことを考え、意識がその男に集中していたが、次の瞬間。またしても、
「ううう」
 といううめき声のようなものが聞こえたので、我に返ったのだ。
「あっ」
 と思い、そこに、うつぶせに倒れている男がいたのだが、
「どうしてそのことにすぐに気づかなかったのだろう?」
 と感じた。
 その人が男であるのは、うめき声で分かった気がした。さっきまでは、恐る恐るであったが、うつぶせで倒れている男が、どのような状態なのか、もうここまでくれば、容易に想像ができるというののだ。
「大丈夫ですか?」
 と声をかけて、急いでその場に駆け込んでいった。
 もう、今の状況がどういうものなのか、想像がついたというもので、その想像が間違いないのであれば、これから自分が行う行動はハッキリと分かっているというものだ。
 そこで苦しんでいる男は、さっき、この場から立ち去って行った男に、首を絞められたのだろう。
「ミシミシ」
 という音は、首を絞められる時の音であり、
「ううう」
 といううめき声は、明らかに首を絞められて、悲鳴を上げようにも、声を出すことができず、苦悩の中でも苦しみにあえいでいるというところであろう。
 急いで男に近寄ってみると、男は、息はあった。今のところ、死んでいるわけではないので、まずは、
「救急車の手配」
 が最初だった。
 すぐにスマホで、救急車の出動を要請し。さらに、警察にも電話を入れた。そこまでやっておけば、あとは救急車の到着を待つばかりであった。
 冷静さを取り戻してくると、自分の置かれている立場というものが、少しずつ分かってくるのだった。
「自分は、殺人未遂事件を目撃したことになるのだ」
 ということであり、当然、警察からの事情聴取が待っているのは当然のことだろう。
 正直、犯人と思しき人間の顔は見ていない。
 見たとしても、帽子をかぶっていて。サングラスをしていた。さらに白いマスクをしていたという、一見して怪しい恰好であったが、今の時代では、この格好は、決して怪しいわけではない。
 5年以上前くらいであれば、
「なんとも怪しい人物」
 ということであるが、
「今のような、世界的なパンデミック」
 というような状況下であれば、その問題は、
「しょうがない」
 といっても過言ではないだろう。
「世界的なパンデミック」
 というのも、最近では、世界的にも収まりかけていて、政府も、
「金を掛けたくない」
 という理由から、そのパンデミックも、規制が緩和されたのだ。
 そのかわり、
「治療費も、ワクチン代も、すべてが、今までは患者はただであったが、これからは、実費となることになった」
 という分かりやすい理屈だった。
 政治家が、自分たちの金を圧迫されるということで、緩和したのである。
 そして、ここでは、政治家というものが、
「自分たちの金」
 と思っているところが、肝であり、間違いなく、その金は、
「政治家たちも金」
 なのである。
 そう、あってはならないはずのことだが、それが存在しているというのが、真相なのだろう。
 ただ、それが、
「許されることなのか?」
 というのは、あくまでも、勝手な思い込みであり、
「本当に、政治家というのは、それで正しいのか?」
 といえるのだろうが、問題は、
「そんな政治家を選んだのは、国民だ」
 ということである。
 中には、有権者の中には、
「俺はそんなやつに投票はしていない」
 ということになるのだろうが、それだけのことなのだろうか。
 確かに、投票はしていないかも知れないが、この世が、
「民主主義」
 というものである以上。
「数の多いものが勝ち」
 という理屈になり、実際に、投票した人間でなければ、確かに責任はないかも知れないが、何を言っても、
「後からでは何とでもいえる」
 ということになる。
 何しろ選挙においては、名前を書いて投票するわけではないので、
「これが、俺の票だ」
 といっても、その証拠はどこにもない。
 投票しなかったという証拠であれば、
「選挙にいかなければいい」
 ということであるが、そうなると、
「そもそも、選挙に行かないということは、政治に参加していないということで、そんな人間に最初から、口を出す権利はない」
 という、
「投票したしない」
 という以前の問題である。
 それが、民主主義というもので、何といっても、数の勝利というのは、結局は、不正を読んだり、
「票を金で買う」
 ということで、
「金を持っている人間が強い」
 ということになり、それが、果たして公平な政治ができるという政府をキチンと作り上げる世界なのであろうか?
 それを思うと、世の中というものが、
「どれほど汚い世界なのか?」
 ということが分かるというものである。
 民主主義には、さらに、大きな問題があった。
 そもそもの民主主義というのは、
「自由、平等、博愛」
 という精神から生まれたといってもいいだろう。
 しかし、
「自由」
 というものと、
「平等」
 というものを比較した時、
「絶対にそれらが、並び立つものではない」
 といえるのではないだろうか?
 自由というものを、優先するのが、
「民主主義」
 というものの、やり方であった。
 平等というものは、考え方ということであり、実際の経済などは、自由競争というものが、率先される。
 平等という静的なものであれば、何かを動かすことはできない。
「経済を回す」
 ということは、
「自由競争」
 によって、
「よりよいものを社会に発信していく」
 というのが、企業の目的であり、それだけに、利益を出さない企業は、
「罪悪だ」
 とまで言われるようになっているではないか。
 つまりは、
「自由競争」
 によって生まれる、
「より良い製品」
作品名:召された記憶 作家名:森本晃次