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三つの関係性

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 というものに対し、セミというのは、
「声帯を震わせるかのような音を立てる」
 と思えていた。
 だから、ジリジリとした暑さと、マッチして聞こえるのであって、
「もし、セミの声が聞こえない中、暑さだけに耐えなければいけない」
 と思うと、実際に、
「シーンとした静寂の中で、暑さだけが醸し出される」
 という雰囲気であれば、そこに、風もなく、暑さだけが、滲んでいて、まるで、
「巻貝を耳に押し当てている」
 というような雰囲気に、耳の奥の空気が振動もせず、熱だけが籠っているかのように思えるのだ。
 そうなると、
「熱さを逃がすことができない」
 という、密閉された空間の中で、次第に熱中症になりながら、真空状態から抜け出すことができず、呼吸困難になって、そのまま動けなくなってしまうと思えてくることであろう。
 そんなことを想像していると、
「セミの声というのは、喧騒とした雰囲気であるが、それは、静寂からの密閉した暑さを和らげてくれ、暑さを発散させるための、発汗作用を、もたらしてくれるものではないだろうか?」
 と感じさせる。
 やはり、
「夏には夏の、セミの声というものが必要なのだ」
 と感じさせられた。
 最近の夏は、10月くらいまで暑い。最高気温は30度を超えるなど、当たり前のようになってきて、
「秋分の日」
 と言われる。お彼岸が、まだ、夏真っ盛りというくらいなのである。
 歩く道すがら、
「彼岸花と呼ばれる曼殊沙華が、申し訳なさそうに頭を垂れて、深紅に近い色を醸し出している」
 ただ、この花を見た時。
「どこかで見たことがある」
 と感じたのだが、それが、以前、中学時代に好きだった探偵小説で、旧家の家の家宝が入れてある、漆黒の漆塗りの偃の表に書かれていた絵が、この、曼殊沙華であったことを思い出した、
 何といっても、戦後に書かれた小説で、舞台の始まりは戦前であったことから、製薬会社の経営を手始めに、手広く全国で、会社を展開し、大財閥の一つに数えられるところであった。
 そもそも、
「戦前における。製薬会社」
 というと、当時、一番力を持っていた、
「軍部」
 との癒着があったことに、ほぼ間違いない。
 歴史で習う時など、
「満州事変」
 や、
「226事件」
 などという事件をきっかけに、軍部が力を持っていたように勘違いしている人がいるかも知れないが、あくまでも、軍は、最初から力を持っていて、事件や事変を中心にのし上がっていったのは、
「暴走ともいえる、独走があったからだ」
 と言われるが、それは間違いないことだ。。
 当時の日本は、天皇を中心の、
「立憲君主国」
 だったことから、軍部というのは、
「天皇直轄」
 ということで、政府が口を出せないところであった。
 しかも、
「軍部の秘密は、国家機密」
 といってしまえば、当然、暴動するのも、仕方のないことだといってもいいだろう。
 しかも、軍部は、武器を買ったりするのに、アヘンまどの密売などで、力をつけていったという側面もある。
 アヘン密売に、当然軍部が絡んでいるのは当たり前で、製薬会社ともなれば、その軍と密約を結び、アヘンで儲けた金で、事業をどんどん展開したりすることで、会社の方も力をつけていったということであろう。
 そういう意味では、
「軍部と、製薬会社は、一蓮托生」
 ということであり、それこそ、時代劇でいう。
「悪代官と、越後谷」
 というような関係だったことだろう。
 これがもし時代劇であれば、悪代官と、製薬会社の結託のその場所に、正義の味方が現れ、彼らを成敗することになるであろうが、軍部以上の力を持っている人間というと、天皇しかいない。
 天皇が、どこまで知っていたのか分からないが、国家の国防であったり、治安を守るということであれば、ある程度の
「行きすぎ」
 というのも、若干仕方がないというところもあるということになるだろう。
 製薬会社を元手に、軍需産業であったり、重工業などに手を染めたりしていたことで、「戦争機運が高まるということは、我々が儲かるということだ」
 と、会社の方とすれば、軍と結ぶことは、決して損になることはないといえるのではないだろうか?
 その製薬会社が、軍需工場などと結んで、一つの財閥を作っているのだから、社長が、軍を掌握したりして、金儲けにも、一躍買っていた時だったということであろう。
 もちろん、今の時代では、そんなことが通用するわけはない、しかし、当時の軍部は、アヘンだけでなく、
「生物兵器」
 などというものも研究していたようで、それを裏で操っていたのは、この財閥における、製薬会社だったのだ、
 当時の日本には、
「財閥」
 と呼ばれる企業はいくつかあった。
 この会社以上に、金を持っているところもあっただろうが、結局、戦争に負けてしまうと、占領軍は、
「軍国主義となった原因の一つに、財閥の存在がある」
 ということで、戦後、
「財閥の解体」
 というのが行われた。
 それは、
「軍部の解体」
 つまりは、武装解除と同じくらいに大切なことであった。
 それにより、軍や政府の、
「戦争犯罪人を裁く」
 ということになったのだ。
 だが、日本においては、
「生物実験の研究」
 あるいは、
「化学兵器の製造」
 などということが行われていたということが、
「公然の秘密」
 であった。
 しかし、戦争が終わってみると、
「それらの開発をしていた」
 という証拠は、一切残っていなかったようだ、
 研究資料は、すべて、償却されm、残っていた捕虜も、皆殺し、
 そうしないと、
「生き証人を残してしまう」
 ということになり、
「しゃべられては、すべてが終わり」
 となってしまうからだった。
 だから、敗戦ということになった時、軍の命令で、
「徹底的に証拠を残さないように、すべてを闇に葬る」
 ということが至上命令ということになったのだ。
 当時の関東軍とすれば、
「とにかく証拠を残さない」
 ということで、焼却炉は、書類の焼却や、標本などでいっぱいだっただろう。
 少し残っている捕虜の始末を考えた軍とすれば、まず、自分たちが入ることになる穴を掘らせて、さらに、
「捕虜同士に殺し合いをさせる」
 ということで、捕虜の数が減ってきたところで、今度は、
「少なくなった捕虜を殺す」
 という方法を取ったりしたのだった。
 だが、莫大な量の資料や、研究材料を、結構広い研究所自体、何もなかったかのように破壊しなければいけなかったのだ。実際には、一切の証拠を残さなかったということになっているのは、考えてみれば、不思議なことだった。
 もちろん、証拠が残っていないからだろうが、その舞台にいた人間の誰も、
「戦争犯罪人」
 として、逮捕、起訴されたわけではなかったのだ。
「実際には、どの部隊が、研究をしていたのか?」
 さらには、
「誰がいたのか?」
 などということも、すべて分かっていたというではないか。
 それを考えると、誰も戦犯になっていないというのは、絶対におかしい。
 さらに、
「研究員のうちの数名は、敗戦後、研究所から、アメリカに渡ったという話も残っている。
作品名:三つの関係性 作家名:森本晃次