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三つの関係性

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「それは、大まかな内容のあらすじで、起承転結の形になっているもので、それを書くために、ジャンルを何にするか。あるいは、登場人物をどうするか? さらには、書く視点を、主人公目線でいくか、第三者目線で行くか? などという話をまとめたものを、プロットというんだけど、でも、作り方に規則なんかないし、プロットが表に出ることもない。まるで、数学の問題を解く時に、別紙として白紙をもらって、それを計算用紙にしたりするでしょう? あれと同じような感じだと思ってもらえばいいんですよ」
 ということであった。
「なるほど、そういわれると、なんとなくイメージが湧いてきたかも知れない」
 と思って、実際に作ってみると、それはそれで難しかった。
 それを友達に話すと、
「確かに最初に書くのは難しいでしょうね。でも、それをガッチガチに書いてしまうと、今度は、本文に、遊びの部分がない感じで、先に進まなくなってしまうんですよ。あなたも、考えながら書いていて、先に進まないといっていたでしょう? それと同じ感覚だといってもいいかも知れないですね。だから、プロットは、フラットに書いて、書きながら、少し内容が変わっていくくらいの方が、遊びの部分があっていいんですよ。そうでもしないと、プロットを書き上げたことで安心して、本文が進まないということが結構あったりするということを聞いたことがありますからね」
 というのであった。
「小説を書くうえで、まずは、ジャンルを決めて。それから大まかな展開を書いて。そこに、登場人物を当てはめていって。目線をどのようにするのか? というのが、プロットだと思っていいのかな?」
 と聞くと、
「ええ、そうね。でも何度もいうけど、プロットというのが完成系ではないので、プロットの通りに書き上げる必要もないし、プロットで満足する必要もない。あくまでも、本文が、その人の作品であり、まわりが見るものなんですよね。それを忘れずに書いていると、そのうちに、本文とプロットのバランスがうまくいくようになり、小説の骨子ができてくるということになりますよ」
 と話してくれたのだった。
 つかさは、小説を書く時のプロットを考えていた時、全否定をしてくる父親が、以前いちかが、拾ったという、
「殺人予告メモ」
 と持っていたという発想を結び付けた。
 そもそも、それは本当の殺人計画メモであったが、それこそ、ただの妄想で、妄想を抱いていた時に自分が、訳の分からないという精神状態だったことで、錯乱していたことからのことであったのだろう。
 だから、我に返って、
「えっ、俺はなんて恐ろしいものを書いたんだ?」
 と感じ、それを破り捨てるくらいのことをすればいいのだろうが、我に返っておいて、そこから先がただの小心者ということで、破り捨てるということすら、できていない。
 それだけ、人間としての、本能も、か細いということにしておいた。
 あくまでも、この主人公は、
「父親であって、父親ではない」
 父親を想像して書いているのだが、あくまでも、作者の妄想も一緒になっているからだ。
「作者の妄想が、主人公の妄想を動かす」
 妄想が妄想を生む。
 あるいは、かけ合わせるということで、
「いちかは、自分が、いかに父親というものを恨んでいるか?」
 と考えていた。
 これは、母親が一度だけ、つぶやくように言っていたことであったが、その時だけのことで、それ以前にも、それ以降にも聞いたことはなかったし、それも、つぶやいただけというくらいのことだったので、信憑性もないが、それだけに、つかさには、気になってしまうのだった。
 というのは、
「お父さんは、あなたが生まれる時、不倫をしていて、ほぼ同じくらいの頃に、他の女にも子供を産ませたのよ」
 ということであった。
 それを聞いたのが、小学生の頃で、驚愕を通り越して、本当に他人事であった。
 さすがに、母親も話した後、
「まずかった」
 と思ったのだろう。気まずい思いとなっていたようだ。
 要するに、この小心者の主人公の正体は父親であるが、途中、ところどころに母親も交じっている。
 それは、急に意識がなくなって、言わなくてもいいことをつぶやいてしまったりして、我に返ると言い訳もできない母親というイメージキャラクターまで入り込んだ。
「人間としては最低の主人公」
 だったのだ。
 だから、性格としては、
「多重人格」
 であり、途中で無意識に何かをやっていて、それも、本人にとっては、
「都合がいいのか?」
 それとも
「都合が悪いのか?」
 それは、その時のまわりの反応によるのだろうが、
「致命的である」
 ということに変わりはないということであろう。
 そんなことを考えていると、
「主人公の性格は、自分が誰かに全否定をされたところからのたまものではないか?」
 と考えると、そこに、作者自身というキャラクターまで含まれているということを感じた。
 そうなると、
「じゃあ、せっかくだから、自分が知っている人間すべてを、この人に織り込むか?」
 という妄想まで働いてきた。
 しかし、すべての人間というのは、土台無理なことであり、
「限界があるものに対して、無限を織り込むなど、最初から無理というもの」
 ということであり、
「しょうがない。ごく身近な人間だけにしよう」
 ということで思いついたのが、
「いちか」
 だったのだ。
 いちかの性格は、どこか、父親に似ていた。
 あれだけの多重人格なのだから、
「たいていは誰かに似ていることだろう」
 と思えるのだが、実際にはそんなこともなかった。
 そういう意味で、盛り込むことにそれほどの難しさはなかったのだが、そうなると、登場人物がいなくなってしまう。
 そこで、今度は、父親の中に織り込んだ誰かを、分離させて、そこで、脇役としての、配役を作ることにした。
 つまり、
「主人公だけではなく、主人公以外の人物にも、主人公の性格が分かるということにした」
 ということであった。
 そこで、いちかの性格を考えてみると、考えれば考えるほど、父親の中の何かと共鳴しているかのようだった。
 それは、正直、あまり気持ちのいいものではなく、ただ、
「以前にも同じような気持ち悪さを感じたような気がする」
 と感じたものだった。
 それがどういうことであったのかというと、
「それが、私のことだったからだ」
 というものであった。
 というのは、
「自分が、あの父親の娘なんだ」
 ということを、
「今までに何度思い知らされたのか?」
 ということであった。
「父親なのだから、思い知るのは当たり前のことであり、他の人だったら、ここまで神経質になることはないはずなんだろうな」
 と漠然と考えたのだが、それだけ、自分が、
「あの父親と血がつながっている」
 というだけで嫌だ。
 と感じたのだろう、
 そんな発想は、しかし、それほど極端にひどいというものではなかった。
 それなのに、何度も思い出すのは、
「その元が夢によるものだったからなのかも知れない」
 と感じるのだった。
 例の
「殺人予告メモ」
 というものが、小説の骨子にあることは間違いない。
作品名:三つの関係性 作家名:森本晃次