小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

三つの関係性

INDEX|11ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 それを分かっていて、雇うというのだから、犯行の有無が、そうも簡単に考えられているということもない」
 と思っていたところでの、あのメモの存在であった。
 当然、依頼人も、そんなメモが飛び出してくるなどということまで予知できるわけもない。
 ただ、警察が知ることができない、探偵が持ち出した
「守秘義務」
 ということを言われると、いくら警察とはいえ、それを聞き出すことはできなかった。
 それはさすがに殺人事件が勃発しても同じことで、
「これは、まだ、もう少し警察には言わないでいただきたい」
 という、依頼人の意志なので、当然、警察にいうわけにはいかない。
「依頼人裏切ったら、終わりなんだよ。この世界は」
 と、よく探偵が言っているセリフをテレビで見たことがあったが、
「まさにその通りだ」
 ということになるのだった。
「殺人事件とはいえ、探偵には依頼人がいて、その依頼人の意志が働いている以上、探偵にはそれに逆らうことはできない」
 といえるだろう。
 警察の捜査とは、一線を画したところで進めなければいけないということで、今回の犯罪は、今までのように、警察と、
「二人三脚」
 というわけにはいかない。
 もっとも、事件が発生してしまうと、探偵と依頼人の間の、
「守秘義務」
 というのも、
「警察に話しても構いません」
 と、依頼人も、殺人事件ということを憂慮して、当然のごとく、
「情報公開」
 しなければいけないということになるだろう。
 そこが、今回の事件の特徴であり、そのための、
「殺人予告メモ」
 の存在であると言えなくもないであろう。

                 殺人予告メモ

 その時の小説と同じようなメモが、つかさの友達の机の中に入っていたという。その内容は、別に殺人を予告するものでも、縦に線を引っ張っているわけでもなかったので、彼女は、それをそれほど気にはしていなかった。
 気にしていないのだから、わざわざ誰かに話す必要もないので、誰も、そのことについて、知っている人もいなかった。
 彼女は名前を柿崎いちかといい、いつも明るい性格で、輪ができれば、いつもその中心にいた。
 というのは、いちかの方から、人を集めるわけではなく、いつの間にかいちかのまわりに人が集まっているというわけだ。
 だから、ひょっとすると、いちかの意志に関係なく、まわりに人が集まってくるので、悪く見れば、
「いちかは、まわりに利用されている」
 といってもいい。
 しかし、いちかはまったくそんなことを気にするでもなく、普通にふるまっている。それが、余計に、
「いちかが、人を自然に集める」
 という結果になっているのではないだろうか?
 それをわかっている人は意外と少ない気がしているのは、つかさだけではないかと思っていた。
 だから、いちかのまわりに、いつも人がいるような感じがするのだが、それはあくまでも、
「いちかの意志だけではなく、性格的にも関係のないことではないか?」
 と思えた。
 どちらかというと、性格というわけではなく、その佇まいによるものではないかと思うのであって、いちかという女性が、まわりに安心感を与えることが一番大きい区がした。
 しかし、それを感じさせないのは、いちかの性格ではなく、どちらかというと、
「いちかは、まわりに影響を与えるタイプではなく、まるで、保護色のように、その場所にいても、目立つことがなく、ある意味、
「一番、当たり障りのないタイプだ」
 といってもいいだろう。
 それをつかさは、
「石ころのような人間」
 と評していたのだ。
 いちかという女性の性格として、
「まわりを巻き込みたくない」
 という思いがあることだけは確かで、人との距離は、ある程度一定以上のものをいつも保っていて、必要以上に近づくということをしないのが、いちかという女性であった。
 その気持ちはつかさにも分かった。
 つかさは、時々、
「足がつる」
 ということがあった。
 特に夏の暑さに弱く、たまに熱中症のような症状になることがあって、その時、一緒に足がつるようなことがあったという。
 その時、
「なるべく、他の人に知られたくない」
 という思いがあるようで、そうなると、顔をしかめながら、息を殺すようにして、耐え忍んでいるということになるのだった。
 それを思うと、いちかが、
「人に悟られたくない」
 という思いを持ったとすれば、自分の足がつった時のことを思えば、その気持ちはわかるというものであった。
 いちかという女性は、別に無口だというわけではない。いつも他愛もない話題には、結構食いついていく方なのだが、自分から、話題を振りまくということをするわけではない。
 それを思うと、
「私だから、いちかのことを何とか分かるくらいなので、他の人が分かるなんてこと、ないだろうな」
 と、つかさは感じていた。
 つかさにとっては、いちかという女性は、どこか、
「自分を映す鏡」
 のようなところがある女性だと思っていた。
 しかし、だからと言って、
「性格が似ている」
 というわけでも、
「考えていることが手に取るようにわかる」
 というわけです。
 むしろ、分からないところが多いくらいなのだが、
「自分を映す鏡だ」
 と思うのは、
「他の人にはわかりそうにもない、いちかの部分を、自分だけが分かっている」
 と思っているのだ、
 なぜなら、それは、
「いちかが、意識的にか無意識に何かを隠そうとしている時、明らかになにかを隠そうとしているのが分かる」
 ということだからであった。
「ツーと言えばカー」
 というような感じDもない。
「ただ、何かを隠そうとしている時や、後ろめたさを感じている時のいちかのことが、手に取るようにわかる」
 と思うからだった。
 しかし、それは、逆も言えるのだった。
「いちかにも、私のある部分を、他の人には分からないというそういうところを、分かっているということではないだろうか?」
 ということであった。
 それを考えると、
「私といちかは、お互いに、相手を意識しないようにして、意識をしているのかも知れない」
 と感じた。
 他の人からは、
「つかささんは、分かりやすい人だ」
 と言われるが、実際には逆で、
「分かりやすいということで、深くは知ろうとしないのが、まわりの人の性格なのかも知れない」
 ということであった。
 しかし、いちかに関しては。必ずしも、
「自分のことをわかっているわけではないので、私を少しでも気にしてくれたら、興味を持つくらいのことがあってもいいだろう」
 と感じていた。
 それは、自分がいちかに対して感じることであり、いちかとすれば、その思いが、間違っていないということをわかるからであった。
「いちかと、つかさ」
 人によっては、
「まるで、双子のようだ」
 と評する人がいた。
「人によってはというのは、その人たちに何か共通性があるというわけではなく、ただ、似ているところが、他の人にはない酷似性というのがあった」
 ということだからであった。
 一つ言えることは、
作品名:三つの関係性 作家名:森本晃次