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都合のいい無限理論

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「大東亜共栄圏の確立」
 などという大義名分があると、邪魔でしかない。
 したがって、
「勝者の圧力」
 でもって、その言葉を使わないようにしたのだが、それも、占領統治の間だけでよかったのだ。
 占領軍が引き上げていったのだから、晴れて
「大東亜戦争」
 という表現を使えばいいものをそれを使わないということは、どこかの権力が働いているのかも知れない。
「南京大虐殺」
 というものをでっちあげたと言われる、
「マスゴミの一部の力」
 というものが働いているのかも知れない。
 と、感じる人はたくさんいることだろう。
 そんな時代に思いを馳せながら、歴史を振り返ってみると、表記だけでなく、言われていることの中には、
「おかしいこと」
 あるいは、
「理不尽なこと」
 というのが、少なからずあるのではないだろうか?
「歴史が答えを出してくれる」
 という言葉があるが、これも、ある意味、胡散臭い気がする。
「226事件」
 というクーデターの映画があった時、このセリフがあり、志半ばで倒れた青年将校たちは、この言葉で、自分の正当性を訴えたいのだろうが、そもそも、この言葉には無理がある。
 というのは、まず、
「答えを出してくれるというが、では、その答えは誰が分かっているというのか?」
 しかも、それが、
「いつどこでなのかもハッキリしないわけで、自分たちが生きている間にその答えがあるわけではない」
 もっといえば、そのセリフを口にした青年将校は、
「そもそも、このクーデターの意味を本当に分かっていたのか?」
 ということである。
 確かに、
「意味を知っているから、クーデターに参加した」
 と思っているわけで、しかし、実際には、
「自分たちが目を覚まさせようとしている天皇が、自分たちを反乱軍とみなし、激怒しているということであるから、何が間違っているのか?」
 と思ったに違いない。
 そもそもが、天皇の側近にいて、下々の生活を見えないようにしている、
「君側の奸」
 という連中をやっつけるというのが、その目的だったはず。
 しかし。実際には、天皇が、ここまで怒っているとは知らないまでも。
「まさか、天皇が、自分たちを反乱軍とはしないだろう」
 と思っていたのは、かなりの確率であるだろう。
 何といっても、軍機違反というよりも、
「憲法違反」
 ということに近いことをやっているわけである。
 というのは、
「天皇は、陸海軍を統帥す」
 ということであるのだが、つまりは、陸海軍は、
「天皇の軍隊」
 というわけで、
 要するに、
「天皇の軍隊を動かせるのは、天皇だけなのに、それを勝手に反乱軍を組織して、クーデターを仕掛けた」
 ということで、
「銃殺刑」
 になっても、仕方のないことだったはずである。
 しかし、それをどこまで分かっていたというのかということであるが、いくら青年将校と言えども、それくらいのことは当然分かっているはずである。
「自分たちの決起趣意書」
 というのを見れば、分かってくれるとでも思ったのか、
 何といっても、暗殺候補者は、天皇の側近であり、
「政治に口出しのできない天皇が、裁可を行う際の、相談役という人たちばかりで、いくら、彼らが、君側の奸だと言っても、天皇がその言葉をうのみにするとでも思ったのか?」
 確かに、江戸時代であれば、
「直訴は死罪」
 ということになっているので、やるとすれば、クーデターしかないだろう。
 そうなると、クーデターを起こすのだから、それなりの覚悟があるだろう。
 その時、前述の、
「歴史が答えを出してくれる」
 と言った人は、天皇からの奉直命令が出たことで、
「兵を返す」
 と言い出したが、この人が反対した。
 元々慎重派だったのだが、皆が、強い気持ちでクーデターを起こすということだったので、自分も乗ったというのだが、
「奉直命令くらいで兵を戻すくらいなら、最初から決起などしなければよかったのだ:
 と言ったが、他の青年将校から、
「もういい。俺たちはやるだけのことはやった。せめて、自分たちを信じて立ってくれた兵の命くらいは救ってやろう」
 と言われ、彼も兵を返すことにした。
 その時に、いった言葉が、
「歴史が答えを出してくれる」
 という言葉だったのだ。
 だが、本人は、そのまま、自殺をしている。だから、何が答えなのか、分からずに死んでしまったということだ。
 もし、死なずに投降していたとしても、結局は、
「弁護人なし、上告なし、非公開での、全員死刑」
 という判決で、銃殺刑に処せられたということであった。
 それを考えると、結局、
「答えが、いつ出るのか?」
 ということは、正直分からない。
 もし、この事件が終結した時が、その答えだったのだとすれば、青年将校の行った行動は、
「まったくの無駄だった」
 ということになるだろう。
 しかし、逆に、この事件によって、軍部の力が大きくなり、世間で言われているように、
「泥沼の戦争にまっしぐらになった」
 ということであれば、その答えは、さらに悲惨だったということになる。
 答えは、
「戦争に負けたことでの、大日本帝国の崩壊にあった」
 ということであれば、この場合も、悲惨だったということであろう。
 ただ、考え方でもあるが、
「軍部の力が強くなろうがなるまいが、最後には、アメリカが、戦争に参戦したくて、日本を引きずり出そうとするのであれば、それは、軍部に関係のないことで、事件の答えであるわけはない」
 ともいえる。
 さらに、この戦争によって、敗戦を迎えたことで、そこが答えだとすると、歴史というのは、
「その答えを元に、さらに問題が提起され、どんどん続いていくものだ」
 ということであれば、
「その答えは、どんどん、周期が増えていき、結局は、そのまま、無限に続いている」
 ということになるのだ。
 ということは、
「ある地点に、事件の答えがある」
 ということだとしても、それは、事件の力として、もたらした結果が、答えだ」
 というわけで、あくまでに、原因に対しての結果が、
「歴史が出した答えだ」
 ということになるだろう。
 しかし、実際に、歴史の答えが、
「原因からの結果だ」
 ということであれば、
「答えは容易に見つけることができる」
 というものだ。
 しかし、この場合の青年将校が言った答えというのは、
「自分たちの理想や、求めていた目的が、いつの日にか達成できる日がくれば。それが答えだ」
 ということである。
 つまり、青年将校の言った言葉の意味は、
「答えありき」
 ということで、
「歴史が答えを出してくれる」
 というのは、答えでなければ、出してくれたわけではないというわけで。それは、達成されたことということで、それが、他力であろうが、自力であろうが、一つしかない答えに到達できるかどうかということである。
 だから、この場合は、答えが分かっていないわけではなく、答えは自分が決めた理想ということになる。
「その通りに世界が動いてくれる」
 というのは、実に都合のいい解釈であり、その考えは、時間が経つにつれて、どんどん小さくなっていくのだが、
「限りなくゼロに近い」
作品名:都合のいい無限理論 作家名:森本晃次