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都合のいい無限理論

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 せっかく書いたのだから、書いた作品は、応募することはしていたが、現実的に言って、
「新人賞が取れるなどとは思っていない」
 と感じていた。
 りえは、現実的なことを考えていた。
 そもそも、小説を書けるようになるまでに、皆結構苦労をしたという。
 しかし、りえの方はあまり苦労をしたという意識はない。それは、りえの性格的なものからの考え方のあのかもしれないが、実際に小説を書けるようになるまで、
「紆余曲折を繰り返した」
 という感覚になったわけではないのだった。
 普通の人は、そんなに簡単にはいかないという。
 一緒に入部してきた人も、
「私、まだ、一度も最後まで書ききったことがない」
 という。
 そして、入部動機として、
「今までに、書きたいと何度も思ってきたんだけど、結局書ききることができなかったの。だから、サークルに入れば、それができるようになる気がして、入部してきたのよ」
 というではないか。
 それを聞いて、りえは、
「そんな動機だったんだ」
 と感じ、正直、ショックな気がした。
 動機としては、正直、甘いと思ったからだ。
「書ききることができないのは、それだけの覚悟と自信がないからなんじゃないかしら?」
 と思ったのであって、実際に、それは当たっているのだが、もちろん、それを本人に直接言えるわけもないと思い、話だけを聞いていると、
「大丈夫なんだろうか?」
 と感じるようになったのだ。
「大学生にもなって、そんな他力本願でいいのかしら?」
 と思ったのだ。
 りえは、なんでも、自分で決めてきたと自負していた。
 それは、中学生でも、大学生でも変わりのないことで、少なくとも、人を頼るには、
「一人ではできない」
 という意識がなければだめだと思っている。
 だから、
「まわりとの感覚のずれ」
 の正体が、他の人が感じているのが、
「一人でできること以外は、人に頼る」
 ということの違いであった。
「できる、できない」
 の違いで、こんなに感覚が違うのかと、りえは思ったが、
「そこに、自信と覚悟がいる」
 と感じているのは、間違いのないことであった。
 りえは、先輩からも一目いかれていた。
 一つは、他の部を見向きもせずに、このサークルに入ってきたのは、それだけ、文芸というものと、真剣に向き合っているということだし、実際に、その才能というか、実力も、先輩たちが見て、
「皆が認める」
 といってもいいレベルにいるように見えたからであった。
 りえの作風は、完全に
「フィクションに特化」
 している。
「ノンフィクションを書きながら」
 という人も少なくない中で、りえは、
「フィクションを書き続ける」
 ということをずっとしてきていたようで、
「これから先もかわりないだろう」
 とまわりに感じさせたのだった。
 ただ、
「フィクションに特化している」
 といっても、話のすべてが、フィクションというわけではなく、自分の体験であったり、感じたことを、フィクションに織り交ぜるというやり方をしていた。
 そして、彼女の中で、
「少しでも違えば、別の作品」
 という発想があった。
 もちろん、他人が書いた作品を真似るなどということは、絶対的なタブーだという思いは誰よりも強かった。
 しかし、自分の書いた作品と酷似しているものは、いくらでも、書けると思っている。
 導入部武運であったり、話の中で出てくる考え方や、エピソードといえるような話の中では、経験したことであったり、過去に書いた話であったりしても、
「結論」
 というべき、言いたいことが違っているのであれば、それは全然OKだと思っているのだった。
 そういう意味では、りえは文芸に対して、さほどの厳格さを持っていない。しかし、自分独自の考えは持っていて。それが心構えであったり、自分にとっての、
「指標」
 というものであり、それが、自信と覚悟に繋がることで、自分の作品が輝くと思っていたのであった。
 だから、書いている作品には、
「愛情を持っていた」
 といってもいい。
 ジャンルとしては、昔からと変わっているわけではなかった。
「SF小説」
 であったり、
「ミステリー」
 というのは、変わりはなかった。
「SF小説を書きたい」
 と思ったのは、最初はアニメから入ったのだが、アニメを見ていて、
「これを小説という形で、ノベライズできればいいだろうな」
 と感じたことからだった、
 実際に、ノベライズしてみたが、実際に、自分が想像していたような作品には、なかなかならず、ノベライズに関しては、断念したが、実際の小説を読んでみると、思ったよりも面白く、興味をそそられた。
 そちらの発想から、またしても、
「SF小説を書いてみたい」
 と思い、やってみると、なかなか最初こそうまくはいかなかったが、断念するという気にはなれなかった。
 やはり、一度断念してしまったという意識があるからで、実際にやってみると、
「意外と面白くなってきた」
 と思えてきたのだ。
 そもそも、最初の断念は、
「あきらめが早かったからだ」
 と思った。
「見切り発信をしてしまった」
 ということであろうが、その意識は、自分の中で、何ともいえない焦りのようなものがあったからだと感じていた。
「焦ったって、得なことにならない」
 ということは、分かっていたつもりだった、
 ひき逃げ犯の話を聞いた時、りえの中でも、
「逃げたりしなければ、前科が付くこともなかっただろうに」
 という思いはあった。
 男の方も人生を半分棒に振ったという話を聞いて、その男に同情などはなかったが、
「私もいつ同じ運命になるかどうか?」
 ということを思うと、簡単に、忘れるということはできなかった。
「焦って判断を誤ると、どうなるか?」
 ということが、頭の中をよぎったのであった。
 りえは、その時だけは、人のことを、まるで自分のことのように感じて、それを自分の中の、
「反面教師にしよう」
 と思ったのだ。
 だが、それ以外では、反面教師というのは、なるべく持たないようにした、それは、
「焦りさえなければ、自分は、何とか思っていたことは、実現できるような気がする」
 と感じたからだった。
「自分が、どれほどの人生を歩めるか?」
 などということを考えるのは、大学生になったばかりで、当時はまだ未成年だった頃の自分には、そこまで考えるのは、ある意味。
「おこがましいことだ」
 といえるだろう。
 今の時代でこそ、成人というと、
「18歳」
 と言われるようになったが、りえの頃は、
「20歳」
 だったのだ。
 正直、
「高校を卒業すれば、大人だ」
 という意識もあったが、大学1年生で、それはいかがなものか?」
 とも言えなくもなかった、
 それを考えると、
「大学生というのは、中途半端な時期」
 ということで、逆に、
「しっかりしないといけない年齢なのだ」
 と思うようになったというのも、無理もないことなのかも知れない。
 実際に、大学生になってから、思ったのは、
「自分も一歩間違えば、大学というのを、レジャーランドのような感覚になっていたかも知れない」
 ということであった、
作品名:都合のいい無限理論 作家名:森本晃次