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都合のいい無限理論

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「子供もいないのに、意識が強すぎるせいで、母乳が出た」
 という話を幾度となく聞いた気がした。
 それが、同じ人によることなのか分からなかったが、
「これだけたくさん書かれていると」
 と思ったのは、それが同じ人であろうがあるまいが、件数が人数と合わないというだけで、それほど意識することはないと感じたからだ。
 この逸話を聞いているから、
「想像妊娠」
 という言葉を聞いた時、納得がいったのだ。
「子供ができないことを気にしている女性がいるとして、あまりにも、その奥さんが、妊娠を意識していることで、妊娠もしていないのに、まるで、子供ができた時と同じような現象に陥ることであった」
 といううのが、
「つわり」
 であったり、
「すっぱいものが食べたくなる」
 などと言った、
「妊婦特有の、味覚変化」
 というものではないだろうか?
 そんなことを考えていると、そこにあるのが、
「人間の自意識過剰」
 あるいは、
「思い込みによる、錯覚」
 というものではないかと感じるのだった。
 父親が、いかに家族に対して、
「どんな罪があるのか?」
 ということを考えると。
「その罪の重さは、その罪の範囲」
 ということでも決まるのではないか?
 と感じたのだ。
 実は、病院に入院する前、これは実に偶然ではあったのだが、友達と話している時、
「ひき逃げ」
 というものに対しての罪状について会話をしたことがあったのだ。
 その内容というのが、
「ひき逃げって、罪が重いじゃない」
 といきなり友達が言い出した時だが、
「ええ、そうよね」
 というと、
「ひき逃げということで、例えば、その人がひき逃げしたことで死んでしまった場合」
 ということになると、
「どうなるのか?」
 ということであった。
 友達がいうには、
「ひき逃げをした場合というのは、一つの行為、あるいは結果で、いくつかの犯罪が成立することになるのね、たとえば、ひき逃げの場合だけど、一つは、歴然とした結果からだけど、殺人罪ですよね? そして、もう一つは、被害者を放っておいて逃げているということで、救護義務違反というのがあるの。そして、もう一つは、警察に届けなければいけないことに対して、それを怠ったということでの、報告義務違反ですよね? まだほかにも、死体遺棄であったり、細かいことはあるんでしょうけど、裁判になったら、それをすべて加味しての判決になるんだけど、裁判では、それらの重複した犯罪があった場合は、一番重い財形に処すというのが、刑法では決まっているようなの」
 という。
「それって、軽いように思うけど」
 というと、相手はそれには答えずに、
「犯人が翌日にでも、家族や身近な人に連れられて自首してきた場合などが、どうなるかということになるんでしょうね?」
 と友達が言ったが、りえは考えるに、
「それって、自首って言えるのかしら?」
 と言った。
「どうしてそう思うの?」
 と友達が利くので。
「だって、罪の一つに。救護義務違反というのがあるでしょう? もし、その時まで被害者が生きていれば、この救護義務を怠ったということが重大であって、義務違反をしているのに、自首としていいのだろうか? って思いません?」
 というと、
「ええ、その通りなのよ。これで自首ということにしてしまうと、それはそれでまずいのよ。だって、被害者は、車に当たった瞬間に死んでいるわけではないので、殺人罪で立件はできない。そうなると、救護義務違反を怠ったことで、死んだのだから、傷害致死罪になるわけでしょう? それを殺人罪との因果関係として、殺人に匹敵する罪にしようと思うと、自首を認めるということは断じてあってはいけないことだと思うのよ。だから、あとからでも。警察に行けば、すべてが自首扱いになるなんてバカなことはないといってもいいんじゃないかしら?」
 というのだった。
 それを聞いて、りえは。
「それはもっともだ」
 と感じたし、口でもそう答えた。
 それを考えると。りえは、ひき逃げに対しての思いが少しずつ分かってきた気がしてきたのだ。
「一つ気になるのが、どうして、犯罪行為一つに罪が重複した時、その罪の一番重たいものが優先されて罪状が決まるということなのかしらね?」
 と、りえがいうと、友達は、一瞬考えたようだったが、すぐに答えた。
「確かにそうよね、ひき逃げにしても、ひき逃げじゃなかったにしても、結局、その人が即死だったとすれば、罪状は、殺人罪ということになるでしょうね。でも、それは、あくまでも、犯罪の根底となる罪が決まるということで、例えば、殺人罪というもの一つをとっても、その罪によって、情状酌量というものがあるでしょう? だから、刑罰には、
〇〇年以下の懲役または、〇〇円以下の罰金ということになるんですよ。私が思うに、この刑罰というのは、実際に一番重たいものが優先されて、そこから、どんどん減算されていく。つまりは、刑罰は、最大公約数でできていて、一番重たいところから、情状酌量などで、どんどん刑が下がっていくでしょう? だから、最初に検察からの求刑というものがあって、それまでに、求刑に対してのたくさんの証拠であったり、陳情があったりして、それを材料に、裁判官たちが、それを考慮に入れて、判決を決めることになるということになるんでしょうね。それが裁判であり、法治国家なればこその判決が決まるということなんでしょうね」
 というのだった。
「でも、そのわりには、その判決に対して、いろいろいう人もいるわよね?」
 と、りえがいうと、
「それは、しょうがないところがあるでしょうね。たとえば、事件の中には、理不尽とも思えるような犯罪がある。若い子が、暴行されて、犯人が未成年だったりすると、その弁護人が、被害者に対して、恫喝まがいのことをして、起訴を取り下げるということになることも少なくないわよね。何といっても、強姦罪というのは、今は違うけど、親告罪だったので、被害者が取り下げれば、それで終わってしまう。警察は民事不介入なので、示談にでもなれば、刑事で争うこともしない。弁護士というのは、依頼人の利益を守るのが仕事で、別に、勧善懲悪じゃなきゃいけないというわけではない。だから、訴訟を起こそうとしている相手に対して、どんなことでもする」
 といって、ふっと息をのんだ。
 それを聞いて、まるで、苦虫をかみつぶしたような、気分が悪いと思っていた状況に、一瞬の間を置いた感じであった。
 彼女は落ち着いたのか、話し始めた。
「弁護士がまず口にするのは、費用対効果ということね」
 というので、りえは、すかざず、
「費用対効果とは?」
 と聞いてみた。
作品名:都合のいい無限理論 作家名:森本晃次