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パラレル国家の真実

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 しかし、かすみは、
「何が精神病なのか?」
 あるいは、
「何をもって精神病というのか?」
 ということを分かっていなかった。
「精神病って、一体何なのかしら?」
 と考える。
 学校やまわりから、精神病という言葉を聞いたことがない。
「精神疾患」
 という言葉を聞くことはあるので、
「精神疾患? 精神病じゃないの?」
 と、担任の先生に聞くと、その瞬間、その顔が苦み走ったような嫌な表情になった。
「苦虫をかみつぶしたよう」
 という言葉があるが、まさにそんな感じだった。
 舌打ちくらいはしただろう。
 そう思って先生を見ると、目だけが、睨んでいるように思えた。
「私は、言ってはいけないことを言ってしまったのかしら?」
 と思い、それ以上は聞けなかった。
 そのことがあってから、
「精神病」
 という言葉は、かすみの中でトラウマとなり、
「口にしてはいけない言葉なんだ」
 と感じたのだ。
 その証拠に、かすむが成長するにつれて聞かれなくなった、
@精神病という言葉」
 を、母親が口にした時、
「これ以上ない」
 というくらいに、不快な思いがよぎった。
「不快指数は、最高潮」
 そんな感覚だったのだ。
 中学生になると、
「言ってはいけない」
 という
「タブーな言葉が、極端に増えてきた」
 それが、思春期なるがゆえのことだということを知る由もなかったのだ。
 だが、さすがに、中学一年生の時、初潮を迎えると、
「自分の身体が、おかしくなってしまったのではないか」
 と感じたのだ。
「お母さんにいうと、今までのように、舌打ちをさせるに決まっている」
 と思い込んでいたが、実際にそうではなかった。
「洗濯をする母親には簡単にバレた」
 ということであったのだが、
「自分でも、少し洗ったつもりで洗濯機の中に入れたのだが、母親は、微妙に分かったようだった」
 そして、
「別に心配することはいらないのよ」
 といってきたのだった。
「えっ」
 というと、母親が、
「生理がきたのね?」
 というではないか、
 生理のことは、かすみも、一通り、本を読んでいた。
 自分に起こった不可思議なことで、しかも、それを誰も何も言わないのは、それこそ、
「触れてはいけないこと」
 ということで、最初は、
「迷信じみたことだ」
 ということから、
「何かの神事に近いことではないか?」
 と思った。
 そうなると、自分だけに起こったことだとすると、
「自分が天に召される」
 ということになるのではないか?
 と感じると、恐ろしくて仕方がなかった。
 さすがにその心配をするようになると、
「誰かに相談しないといけない」
 と感じたのだが、それは誰がふさわしいというのか、ということまでは、まったく想像もできなかったといってもいいだろう。
「お母さんに相談?」
 と考えたが、
「いやいや、あのお母さんに相談して、まともな答えが返ってくるかどうかが恐ろしい」
 と感じるのであった。
 そんな時に、まさか、
「母親から、助け舟を出してくれるなんて」
 ということに、びっくりさせられた。
「生理というのは、そもそも……」
 と言って、比較的分かりやすく説明してくれた。
 そういえば、今までに母親が説明してくれることに関しては、考えてみれば、間違っているようなことは一つもなかったような気がする。
 口調も優しく、
「そういえば、お母さんは、結婚前は、
「学校の先生をしていた」
 ということであった。
 父親も高校の教師だったので、先生同士、学校は違ったが、気が合ったのだろう。母親が教師をしていたのが、中学だということであるから、この時のかすみの年齢とちょうど同じくらいということで、昔を思い出していたのかも知れない。
 母親が、精神病という言葉を使ったのは、
「時代が違った」
 ということであろう。
 今の時代は、
「それらの精神病という言葉を、使ってはいけない」
 という風潮にあるので、
「精神病という言葉だけではなく、それ以外に言われている、一種の放送禁止用語を口にしようものなら、誰もが、気持ち悪い態度をとるのだ」
 自分たちが、言ってはいけないと思って我慢している言葉を、軽々しく口にしたからだろうか。
 確かに、言ってはいけないことがこれだけ増えてきた時代、
「特に精神病と言われる範囲が増えてきた」
 いや、というよりも、
「それだけ、多種多様な精神疾患を持った人が増えてきた:
 ということだろう。
 それを思うと、
「精神疾患を患っている人は、自分が感じているよりも、もっといたのかも知れない」
 と思うのだった。
 一善母親が言っていたのは、
「お母さんたちが勤めていた学校には、精神病の子たちを集めて、特殊学級というところがあったのよ」
 というではないか。
 確かに。
「精神病学級:
 というよりはまだマシなのかも知れないが、
「特殊学級:
 という言い方にも、どこか語弊がある気がするのだった。
 それだけ、
「精神疾患の種類も、罹る人も多い」
 ということであろう。
 病院の中に、心療内科」
 というところがあり、昔でいうところの、
「精神病院」
 と言われるようなところが、こういう、
「心療内科」
 と呼ばれるところではないかと感じるのだった。
 実際に、
「精神病院」
 などと言われるところがあったのだろうか?
「〇〇精神病院」
 という看板を掲げているのかということである。
 どこかの大学病院などのような、大きな総合病院の中で、
「精神科」
 というところがあるというのは聞いたことがあった。
 だが、それは今も同じことだが、精神病であったり、精神疾患というものを扱っている個人病院が存在するのかというのは、分からなかった。
 かすみは、中学に入ってすぐくらいの頃、ドラマで、
「奇妙なお話」
 というのをしていたのを見たことがあった。
 そこには、ハッキリと、
「精神病院」
 という言葉が掛かれていた。
 舞台は現代だったが、その病院は、まるで明治時代からタイムスリップでもしたかのような、完全にくたびれた、コンクリートでできた、施設だったのだ、
 その番組を見て、最初は、
「まるで、どこかの研究所のようだ」
 と感じた。
 しかし、そのくたびれた感覚は、
「建物に、ツタが絡みついていて、それを取る気配が誰にもなく、ツタが絡んでいる様子は。むしろ、その建物に、違和感を感じさせないという雰囲気だった」
 といってもいいだろう。
「こういう場所を、どこかで見たことがあったような気がしたな」
 とかすみは思ったが、よくみてみると、
「ああ、そうだ。サナトリウムと呼ばれる建物だったんだ」
 という。
 しかし、
「サナトリウムというのって、精神病を受け入れるところだったっけ?」
 と感じたが、実際には、精神病とこの建物が、あまりにも感覚的にマッチしたので、さらに、気持ち悪さが増幅しているようだった。
「サナトリウムには、確かに、精神病患者がいた」
 と感じたのは、まわりが静寂な中で、表から映像がどんどん、建物に近づいていて、つまりは、次第に、視界に入り切れないほどの大きさが、目の前に迫ってきているということであった。
作品名:パラレル国家の真実 作家名:森本晃次