三人三様
当時の国鉄職員は、全国で使えるフリーパスを持っていた。
「そんなことしているから、累積赤字が減らないんだ」
と言われ続け、やっと、民営化にこぎつけたということであろう。
今のJRは、やっていることは国鉄と同じで。さらに営利を目的にしているのだから、下手をすれば、
「国鉄よりもひどい企業だ」
といってもいいだろう。
実際に、その累積赤字がどうなったのかなどということは分からないが、
「経営がひっ迫しているのか、それとも、
「客を無視した営業」
をしているのか分からないが、
「体制は昔の儘で、さらに、営利を求めている」
ということで、
「身内に甘く、他人に厳しい」
という、まるで、どこかの政党のようなところに、成り下がっているといってもいいだろう。
それを考えると、
「そもそも、日本の国というのが、半永久的に返せない借金を持っているので、民営化などしても、しょせんは手遅れ」
といってもいいだろう。
特に、
「経済が落ち着いてくるかと思いきや、そのたびにいろいろあって、結局、また、元の木阿弥とでもいうことになってしまうのだろう」
特に、最近では、
「世界的なパンデミック」
というものが起こったことで、
「人の命か、経済か?」
ということで、日本政府の中途半端な政策が結果として、ろくなことにならず、
「有事の際には、支持率がたいていは上がるのに」
と言われる状態で、世界的に、
「支持率が下がった国が少しだけあったのだが、その国は、日本以外では、かなりひどい政策をとったということで、世界的にも叩かれている国ばかりだったのだ」
ということは、
「日本も、当然のことながら、相当ひどいことを言われていたのだろう」
といえる、
「日本政府が報道規制をしているのか、知らぬは身内ばかりなりという状況だったに違いない」
といえるだろう。
そんな時代において、日本政府は、
「どこまで国民に寄り添っていたか?」
ということを考えると、
「なるほど、国民に対して、強くはいえない」
という状況で、かなりいら立っていたかも知れない。
しいていえば、
「日本という民族性」
ということで、意外と政府のいうことを聞く国だったのが、よかったのかも知れない」
ただ、これは、
「日本政府にとって」
ということであり、日本人というのが、基本的に、
「平和ボケ」
をしているということで、幸か不幸か、
「おとなしい民族性だ」
ということなのだろう。
そのせいもあってか、最初こそ、いろいろしたがってきた国民も、次第に政府のやり方に疑問を呈してくると、反対も多くなってきた。
2,3年が経ち、少しずつウイルスの正体が分かってきたというのもあるだろうが、そんな時に、政府がオリンピックを強行したのだ。
国民の8割近くが、延期、もしくは、中止」
といっていたものを、政府は、民主主義の原則である、
「多数決」
というものを破り、結局、国民は、何もできず、政府に従うしかなかったのだ。
この瞬間だけ、
「立憲君主」
とでもいうかのような、戦時中を思わせる政府となっていたのかも知れない。
その日、スナックにいた客は、最初三人だけだった。その三人というのは、
「大迫」
「坂口」
「殿山」
の三人だった。
三人は皆同じタイプの人間でもないし、性格が似通っているわけでもない。さらに、年齢も近いというわけではないので、
「まったく違うタイプの人間でも、馬が合う」
ということなのだろう。
大迫というのは、三人の中で一番若く、まだ大学生だった。
坂口は、30代くらいであるが、皆の中では、
「一番しっかりしている」
といってもいいだろう。
なぜなら、彼だけが結婚していて、最近には珍しく、昭和気質なところがあるのだった。
とは言っても、
「頑固おやじ」
という雰囲気ではなく、
「男というのは、30歳くらいで結婚して、子供を作って」
などという人生設計がしっかりしていた。
しかも、
「勧善懲悪」
なところがあり、前述の、
「世界的なパンデミック」
というものが起こった時、
「自粛警察」
と言われた。
「皆が、頑張って、宣言を守っているのに、それに違反している連中を取り締まる」
というような雰囲気に感じられたのだった。
実際に、街の飲み屋街で、
「宣言中に、店を閉店している間に、空き巣が入る」
という、まさに、言葉通りの、
「火事場泥棒的」
な連中が多かったので、店の経営者たちが、夜間などの暗くて人通りが少ない時のパトロールに、自ら志願して、一緒に警備にあたっていたくらいだったのだ。
「いつも、飲みにいって、気分転換をさせてくれる店が潰れては俺たちも困る」
とは言っていたが、
「なかなか店の経営に直接関係のない人ができることではない」
ということであった。
しかも、その意見を、
「奥さんも賛成している」
というではないか。
「うちの奥さんも、勧善懲悪なところがあるからね」
というと、
「じゃあ、そのあたりがお互いに、惹きあったというところじゃないのかな?」
と言われ、
「そうかも知れないですね」
と、口ではそういっているが、その態度は微妙だった。
「肯定しているわけでもなく、かといって、否定しているわけでもない」
ということで、
「っじゃ、うちも、見回ってもらおうかしら?」
と、スナック「モエ」の、
「萌絵ママ」
も冗談めかして話をしていたが、冗談に聞こえないのが、このご時世。
さすがに、坂口も、
「ちょっとね」
といって、丁重に断っていたが、大迫には、
「その気持ちがよくわかる」
と思っていたのだ。
「この辺りでは、たくさんで見回るのも大変だし、かといって、相手が何を持っているか分からないので、一人だと危ない」
と考えたからであろう。
そんな警備隊を結成した時、
「自分も」
というのは、なかなかのことであった。
何といっても、
「世界的なパンデミック」
により、世の中が、恐怖のどん底にある時期だったからだ。
そんな時期において、自分から、
「警備に出る」
などと言い出すのは、
「勇気からなのか、無謀なところがあり、その時、坂口は、誰にも言わなかったが、実は失恋した後」
ということだったのだ。
「ちょっと待て? 確か既婚者では?」
ということになるのだが、それはもちろん、言われることであった。
彼が既婚者であることは、誰もが分かっていた。
それは、自分から、
「既婚者だ」
ということを宣伝していたからだ。
それは、あくまでも、
「既婚者だといっておけば、不倫をしても、それをごまかすことができる」
と考えていた。
彼は、そういう意味で、
「したたかな性格だ」
といってもいいだろう。
しかし、それだけに、性格的には、計算高く、頭がいいのかも知れないが、その計算が狂った時、どうしていいのか分からなくなる。
今回の
「自粛警察への入隊」
というのも、
「一人で考え込んでいれば、ろくなことを考えない」
と思ったからだ。
実際に、ただでさえ、
「緊急事態宣言」