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三人三様

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 もちろん、そのことを知っているのは、ママさんだけだった。学校でも友達に話したこともないし、店の客に言えるわけもない。
 何といっても、
「男性客が多いからだ」
 ということになる。
 下手に話して、噂にでもなれば、
「身バレというのが怖い」
 からである。
 そう、風俗で働く理由は、さまざまであろうが、彼女たちが一番怖がっているのが、
「普段の自分を特定される」
 ということであった。
 もちろん、ストーカーなどになられるのも怖いことであるが、それよりも、
「客の中に、知り合いがいると、厄介だ」
 ということであった。
「大学の男性の友達であったり、教授であったり」
 それくらいなら、まだマシであるが、ひどい場合は、
「親や親せき」
 ということもあったりすると話に聞く。
 実際に、昔には、
「家族が来た」
 ということがあり、家族は、自分が客で来たという立場をすっかり忘れてか、働いている本人であったり、店に対して、文句を並び立てる。
 それこそ、
「遊びのない」
 くらいのマシンガンでまくし立ててくるのだから、店側も、女の子も、たじたじになった。
 もちろん、店側も彼女も、合法的に働いているのだから、別に文句を言われる筋合いということもあるわけはない。
 それなのに、
「先手必勝」
 で、相手に押し切られると、いくら合法でも、
「保護者」
 としての立場からであれば、どうしようもない。
 特に、以前のように、成人が二十歳からということであれば、未成年の女の子であったとすれば、お店での契約には、
「法定代理人」
 としての、
「親権者」
 が、代理で契約をしなければいけないわけなので、
「知らなかった」
 というのは許されない。
 しかも、店側も、
「未成年と知りながら」
 ということであれば、訴えられても文句が言えない状態だ。
 そうなると、女の子の家族だけの問題ではなく、店側としても、経営が先ゆかなくなってしまう。
 それだけは避けなければならないということで、店側も、神経質になっているのであった。
 ただ、これは、
「店舗型」
 であれば、何とかなるということでもあった。
 というのが、
「デリヘル」
 などという、いわゆる、
「派遣型」
 であれば、そうもいかない。
 店舗型であれば、客を待合室に通して、そこで、昔であれば、
「マジックミラー」
 であったり、今だったら、
「防犯カメラ」
 などを、女の子に確認させて、それで、未然に防ぐこともできる。
 そもそも、客がお部屋に入る時は、他の客とバッティングしないようにている。
 それは、帰宅する客でも同じことで、これは、
「身バレ」
 の問題ではなく、
「客の心理」
 というものを考えた、最低限のマナーといってもいいだろう。
 ただ、これが、
「派遣型」
 となると、そうもいかない。
「ホテルの部屋」
 というのでも危ないのに、中には、
「客の自宅」
 というのもある。
 女の子によっては、
「自宅への派遣は、NGとしている女の子も多く、相手の部屋なのだから、少々のことがあっても、踏み込むことはできない」
 といえるのだ。
 特に、今のように、
「個人情報保護法」
 などというのが厳しくなって、
「プライバシーの保護」
 と言われるようになった。
 しかし、逆に、もう一つ、
「ストーカー規制法」
 というものもできてきて、
「人を追いかけて、待ち伏せしたり、嫌がらせなどをする」
 という、いわゆる、
「ストーカー」
 というものである。
 異性に対してというのが、そのほとんどであるが、
「付き合いたいと思って、相手に告白をしたが、相手から、けんもほろろで断られた」
 という場合や、
「勝手な思い込みで、自分が好かれていると思っているのに、相手が、まったく好きな素振りを途中から見せなくなった」
 という場合などがそうであろう、
 特に後者などは、本人の思い込みであり、最初こそ、相手も、
「社交辞令」
 で、にこやかに応対していたが、そのうちに、相手の本性が分かってくると、
「あの人、気持ち悪いわ」
 ということで、露骨に嫌がる素振りを見せる。
 しかし、相手は
「俺のことが好きなんじゃないのか?」
 と勝手に思い込んでいるので、
「自分のことを嫌がるはずはない」
 という思い込みから、
「少々のことなら許される」
 と思うのだろう。
 しかし、相手はすでに、
「気持ち悪い」
 と思っていて、しかも、本人が思い込んでいるだけなので、その溝が埋まるはずがない。だから、本人は、
「これくらいのこと」
 と思っているようなことを、相手は、
「こんなに気持ち悪いことはない」
 といって周りに操舵したり、警察の、生活安全課に相談したりするのだろう。
 しかし、警察は、基本的に、
「何かなければ、動かない」
 ということなので、その人のケイタイから連絡があれば、
「緊急連絡」
 ということで、警察が、
「110番扱い」
 ということで、
「警察が、真っ先にパトランプとサイレンを鳴らして、飛んできてくれる」
 というくらいの手続きはしてくれるようだ。
 実際に、10数年前に、登録してもらった人がいて、その人の話では、
「警察で、3か月は登録してくれているようで、それでも危ない状態であれば、申告して、延長してもらえる」
 ということになるようだ。
 いくら警察が、
「何もしない」
 といっても、
「もし、相手のストーカーが誰なのか特定されているのであれば、警察から連絡が入る」
 ということもあるだろう。
 中にはそれで、騒ぎが収まるという人もいるだろう、
 何といっても、警察が介入してくるのだから、相手もびっくりである。
 そして、
「自分が誰なのか分かったうえで、相手にストーカー行為を繰り返している人の中には、自分が悪いことをしているという意識がない」
 という人が多いということであろう。
 つまりは、
「警察の、ツルの一声で、ストーカーの方も、自分が罪を犯しているということに初めて気づき、もうやめる」
 というわけである。
 しかし、たちが悪いやつは、それでもやめない。
 下手をすると、
「この女、警察にいいつけやがって」
 とばかりに、余計にエスカレートする場合がある。
 その時のストーカーの感情としては、
「かわいさ余って憎さ百倍」
 ということになるのだろう。
 つまりは、警察というものが、
「何かなければ、動かない」
 ということは分かっているので、
「少々くらいは大丈夫だ」
 と思うのか、それとも、
「ストーカーになってでも、相手が憎いということを示したい」
 ということなのかということである。
 ドアノブのところに、スーパーのレジ袋を掛けておいて、その中に、
「ネズミの死骸」
 などと入れておく。
 などというものや、
「無言電話を、毎日夜中中、かけ続ける」
 などということも、
「よくある手口」
 だったのだ。
 だから、ちょうど、世紀末くらいの頃から、
「個人情報保護」
 という問題と、
「ストーカー規制法」
 という問題とが、ほぼ、同時くらいに起こってきたというのも、当然といえば、当然だったであろう。
作品名:三人三様 作家名:森本晃次