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人を呪えば穴二つ

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「オートロックがかかるマンションの一室で、深夜、仕事から帰ってきた一人の女性がその部屋の前を通りかかった時、勢いよく水が流れる音がして、しかも、その部屋は不自然なことに、少しだけ扉が開いていた状態になっていた」
 という。
「管理人を急いで呼んできて、合鍵で開けようとするが、チェーンがかかっていて開かない。二人は、一度、管理人室に、工具を取りに行って戻ってきて、ワイヤーを切ろうと扉を開けると、今度は普通に開いたのだった」
 そして、中に突入すると、そこで、女性の他殺死体が見つかったということだったのである。
 急いで警察を呼んだ。鑑識や捜査員が、無言のまま、そそくさと初動捜査を行っている。
 鑑識の話では、
「被害者の死因は、胸を刺されたことでの、出血多量のショック死。死亡推定時刻は、死後、約3時間くらいということだったので、午後10時から11時の間くらいではないかということであった。もちろん、詳しい内容は、解剖しないと分からないということであった」
 捜査に入った桜井刑事は、第一発見者である女性に話を聞き、管理人を呼びに行き、部屋にチェーンがかけられていたこと、そして、少し工具を取りに行くのに、現場を離れたこと、そして戻ってくると、部屋のチェーンは外されていたこと。
 そのあたりの一連の話を時系列で話した。
 この話は、管理人の話とも一致しているので、信憑性があるのは分かっていたのだ。
 被害者は、部屋の住人に間違いなく、名前を、
「山岸かづき」
 という女性で、年齢とすれば、35歳だということだった。
 第一発見者の女性は、自分で、みずきと名乗った。
 スナックに努めていて、その源氏名だという、
 管理人の話では、
「かずきさんは、かなりの社交的な方で、いつも出掛ける時、声をかけて行ってくださります」
 ということで、管理人から好かれていた。
 しかし、
「死んだ人のことを悪くはいいたくないのですが、殺されたかづきさんという女性は、ほとんど挨拶もしません、お出かけの時目が合っても、すぐにそらそうとするので、こちらとしても、感じ悪さしか感じたことがありませんでしたね」
 ということであった。
 それを聞いた、桜井刑事は、
「いかにも、今のマンション生活や、近所づきあいを感じさせる」
 と思い、
「やれやれ」
 と感じていたのだ。
 桜井刑事は、その話を聞いていると、
「男女間の痴情のもつれか何かではないかな?」
 と感じた。
「部屋のベッドの上で殺されている」
 ということで、ほぼすぐに、そう感じたのだった。
 司法解剖に回された被害者の詳しいことが入ってきた。
 どうやら、彼女は睡眠薬を飲んでいた」
 という。
 ただ、この睡眠薬は誰かに飲まされたものではなく、被害者の所持品で、しかも、調剤薬局の袋に入って、そこには、内服薬と書かれていて、患者の名前が書かれているが、その名前は、被害者であることに間違いはなかった。
「じゃあ、何か病気か、不眠症のようなものがあって、睡眠薬を常習していたということだろうか?」
 ということで、実際に彼女の通っていた病院を、袋に書かれている調剤薬局から突き止めた。
 処方箋があるので、元々の病院は分かるというもの、病院を突き止めると、
「ええ、彼女は不眠症ということがあって、私が睡眠薬を処方しました」
 ということで、
「彼女の主治医」
 ということで、医者に聞くことができた。
 その時医者は一緒に、
「彼女の不眠症は、うつ病からきているようですね」
 というではないか?
「うつ病?」
 と桜井刑事が聞くと、
「ええ、うつ病といっても、そこまでひどいものではなく、投薬によって、ある程度は改善できると私は思っていました。そういう意味で、彼女が定期的に病院にも来てくれるので、治るのも早いと思っていたんですよ。うつ病も難しいところで、きついと、病院に来るのもつらい人というのはいっぱいいますからね」
 という。
「彼女の場合、その病気の原因は何か伺っていますか?」
 と桜井刑事が聞くと、
「最初の原因とすると、どうやら、会社がブラックだったようで、徐々に病んでいったようです。だから、本人も最初は、うつ病という意識はなかったようで、夜眠れなくなり、さらに、何をするにも億劫になったそうです。最初は、不眠症だから、身体が動かなくなったと思っていたようですが、私から見れば、病気が元凶で、そのために、不眠症にも体調不良にもなるというもので、説明すると、彼女は分かってくれたみたいですね」
 と医者がそこまで言って、少し言葉を切ったが。
「ただ、彼女は、どうも私にはいっていない秘密があったと思うんです。ここまで素直だったら、もう少し早く、効果が出てきていいはずなんですが、そうもうまくいっていないようで、それが気になっていました」
 と医者がいうと、
「それを先生は、何が原因かお判りになりますか?」
 と言われたので、
「いいえ、主時期見当がつきませんね。そもそも、隠し事をするような人ではないと思えたのに、隠そうとするのだから、すぐにバレるのは分かりやすい性格だからなんでしょうが、そんな人が隠そうとするのだから、結構不器用なんでしょうね。それで、逆に考えられる範囲が、一気に広がったので、こっちには分からないということになるんですよ」
 と医者は言った。
 桜井刑事は、医者の話を聞いて。被害者の
「分かりやすいタイプの人間なんだ」
 ということが分かってきたようだった。
 ただ、医者の話だけを聞いていると、却って分かりにくいとことがあるのは必至で、マンションの住人や、勤め先の人の話を聞く必要があると思うのだった。
 マンションは、オートロックであることは前述のとおりだが、今の都会の生活では、
「オートロックのマンションだろうが、オートロックのないマンションであろうが、近所に誰が住んでいるかなどという関心は、ほとんどない」
 ということだ。
 隣に誰が住んでいるかということ、空き部屋なのかどうかも知らない人が多いというではないか。

                 悪魔の犯罪

 子供が児童であったりすると、学校の行事や何かで、親同士が集まりという、いわゆる、
「ママ友」
 というのが多いというのは分かっていた。
 そもそも、ママ友になる時という一番最初のきっかけは、
「公園デビュー」
  ではないかということであった。
 ベビーカーを引いて、午後の日が傾いたくらいの時間に、近くの児童公園に、やってきて、空いているベンチに座る。
 すると、そこに。同じようなベビーカーを引っ張ってくる他の奥さんがやってくる。初めての人であれば、笑顔で挨拶することで、
「ママ友の基礎が出来上がる」
 ということだ。
「幼児の公園デビュー」
 というのは、幼児にとっても大切なことだが、
「母親の公園デビュー」
 ということで、
「実は、母親の方が、その目的は大きい」
 といってもいいだろう。
 公園デビューができると、母親も、
「自分は一人ではない」
作品名:人を呪えば穴二つ 作家名:森本晃次