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一人三役

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 と、奥さんが諭したとしても、本人には、聞く耳はない。
「俺の現実逃避を邪魔するな」
 と、
「邪魔するやつが悪い」
 という感情にいたりということになってしまうに違いない。
 それを考えると、
「もうその時すでに、精神網弱になっているに違いない」
 といえるだろう。
 民法において、
「法律的無能力者」
 というものがある。
 それは、決して差別的な言葉ではなく、実際に、
「契約を結んだりするのに、精神的に足りない状態の人が契約することで、被害を被らないようにする」
 ということが目的だ。
 そもそも、最初から、
「相手をだます」
 という意思がないことが、その成立要件である。
 そんな中での無能力者というのは、
「未成年」
「準禁治産者」
「禁治産者」
 に分かれる。
 それぞれにおいて、その効力は違ってくるのだが、基本的に、
「その法律は取り消すことができる」
 あるいは、
「最初から無効にできる」
 というものである。
 そして、それぞれに、元々、契約には、制限というものがある。それでも、契約を結ばないといけない場合は、
「親権者」
 などの、
「法定代理人」
 であったり、
「保佐人」
 と呼ばれる人が介入しての契約である必要がある」
 ということである。
 もちろん、契約の時に、相手はどの状態にあるのか分かっている場合は、分かりやすいのだが、それは、未成年のように、契約書に年齢を書いたりする場合は分かるというものだ。
 もちろん、そこで嘘を書くと、
「契約違反」
 あるいは、
「詐欺罪」
 が成立することになり、それぞれで、罪の重さが違ってくることだろう。
 しかし、
「準禁治産者」
 であったり、
「禁治産者」
 であるということは分からない。
「準禁治産」
 というのは、基本的に、
「金遣いの荒い人」
 というのが、その部類に入る。
 そこに引っかかってくるのが、
「依存症」
 というもので、
「私は、浪費癖があります」
 などといって契約する人なんていないので、すぐには分からないというものだ。
 さらに、
「禁治産者」
 というのは、
「精神網弱者」
 というもので、
「契約をするだけの精神状態にない」
 という人のことをいうのだろう。
 だから、こちらも、まさか自分から、
「私は、精神網弱者です」
 などと宣言するわけでもない。
 ましてや、契約の相手が、
「あなた、精神疾患があるんじゃないですか?」
 などといったものなら、人によっては、ヒステリックになり、話し合いどころではない状態になることもあるだろう。
 そうなれば、最初から契約しなければいいのだが、それを聞いたことで、
「名誉棄損」
 や、
「差別だ」
 などといわれると、それこそ、どうしようもないということになってしまう。
 そんな状態になるが、特に精神疾患などというものは、
「いつどこで、どのタイミングでなってしまうのか?」
 ということは分からない。
 本当は、
「いきなりなった」
 というわけではなく、本当は、徐々に鬱積しているものがあったということで、
「精神疾患に陥ったのは、最初から起こるべきことだった」
 ということになるのかも知れない。
 そんな状態を考えると、
「契約」
 というものに対して、相手が、
「法律的無能力者だ」
 という場合の契約が、結ばれた後で、
どのようなことになるか?」
 ということを、事前に法律で定めておくというのも大切なことであり、民法には、キチンとそのあたりのことは、明文化されているのであった。
 だから、奥さんとしても、
「落ちぶれていく夫」
 を、ぎりぎりまで我慢することはできるが、一度キレてしまうと、もうどうしようもないということで、離婚というのも、余儀なくされることであろう。
 とはいえ、その人の奥さんも、実は裏で、不倫をしていたようで、離婚の時は分からなかったが、離婚して、法律上の待期期間の半年を経過したところで、
「いきなり結婚した」
 というのだから、したたかなものだ。
「やられた。確信犯ではないか」
 と思ったが、もう遅い。
 実際には、別れた奥さんどころではない。これから自分がいかにしていけばいいかということが大切であった。
 事件は、そんな二人の間に起こったのだった。

                 パンデミック

 この夫婦は、旦那を、
「沢村恭平」
 といい、奥さんを、
「伸子」
 といった。二人は中学時代からの幼馴染であり、お互いに、家族ぐるみの付き合いだった。
 二人の関係は、中学時代までは、
「普通に、幼馴染」
 という程度のものだったが、最初に意識をし始めたのは、伸子の方だった。
 伸子という女性は、性格的にカチッとしていないと気が済まないタイプで、いわゆる、
「潔癖症」
 というタイプだった。
 最近では、
「世界的なパンデミック」
 のせいで、昔でいう、
「潔癖症」
 と呼ばれるような人は、今では珍しくない。
 昔読んだ探偵小説の中で、潔癖症な人のたとえとして、
「自分の机に他人が触れたというだけで、いちいちアルコール消毒をした」
 という話が載っていたが、今では
「そんなの当たり前じゃん」
 と言われるであろうが、
「世界的なパンデミック」
 が起こる前では、
「いやだ。そんなやつとかかわりたくない」
 とばかりに、まるで、
「自分とは関係がない」
 と言わんばかりのことであった。
 そこまで人が変わってしまうほど、
「世界的なパンデミック」
 というのは、恐ろしいものだったのだ。
 それを思うと、潔癖症というのは、
「本当は、悪いことではない」
 といってもいいだろう。
 それほどに、時代が変わったということであった。
 時代が変わったというのは、いい方であっても、悪い方であっても、
「一長一短がある」
 ということである。
 いいことであっても、
「悪いことが絡んでいない」
 というわけではないし、逆に、悪いことであっても、
「いいことが絡んでいない」
 というわけではない。
 それだけ、お互いに問題が、紙一重であり、明暗がくっきり分かれるというよりも、
「曖昧なことだ」
 といってもいいだろう。
 それこそ、
「世の中というのは、曖昧に、どちらに転ぶか分からない」
 ともいえるだろう。
 たしかに、伝染病というのは恐ろしいものだった。
「ちょっと触っただけでも、伝染病に罹る」
 と言われ、しかも、
「致死率が半端ではない」
 ということだったので、最初こそ、政府は、
「事の重大さ」
 ということが分からずに、
「無図際対策を怠る」
 という、完全な
「パンデミック対策」
 の初動の失敗ということで、国民から、かなりのひんしゅくを買った。
 しかも、いきなりの、
「学校閉鎖」
 を行ったことで、さらに、信頼を落とした。
「学校閉鎖」
 などという政策は、あらかじめ、
「下準備」
 をしてからでないとパニックが起こることくらいは、普通の人にでもわかるというもので、もっといえば、
「一般市民の方が、実体験から分かる」
 というものであろう。
 今の時代は、ほとんどの家庭が、
「共稼ぎ」
 である。
作品名:一人三役 作家名:森本晃次