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一人三役

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 彼女は、男に
「癒しになる」
 ということを考えた。
「それだって、女の武器では?」
 ということになるのだろうが、普通に女の武器として使うときは、
「癒しになる」
 とは言わない気がする。いうとすれば、
「癒しを与える」
 というのではないだろうか。
 口ではそういっても、心では、
「自分が癒しだ」
 ということを考えている方が、相手に、
「施しを受ける」
 ということになると、その思いはひどいものだといえるだろう。
 相手に施しを受けるということは、その時点で、
「優劣の関係にある」
 ということで、男にとっては、
「プライドを捨てさせられた」
 ということになり、
「自分が相手の言いなりになっている」
 と感じさせられるのだ。
 だが怖いのは、相手の男が、そんな、
「劣等感」
 を感じることなく、相手の男の心の中に、忍んで来るというのは、実に恐ろしいことである。
 しかも、
「相手によって、買えることができるというのは、
「まるでカメレオンのように、保護色を持っている」
 ということであり、バックの色によって、巧みに自分がその保護色となり、外敵からはその企みが見えないというやり方だ。
 それは、、
「攻撃」
 というものではなく、あくまでも、
「自己防衛」
 ということであり。本人もそのつもりでいるだけなのだろうが、彼女に接する男たちは、そうではない。
「俺は好かれているんだ」
 と感じると、男は、我を忘れることになるのだ。
 時に相手が、既婚者で、そんな男性と一線を越えるということになると、
「W不倫」
 ということになるのだ。
 普通であれば、
「こんなことをしてはいけない」
 と、一線を越えることが悪いことだと思い、悩むことだろう。
 しかし、奥さんは違っていた。
「相手も、自分の家庭を捨ててまで、自分を好きになってくれたんだから、自分も好きになってあげないといけない」
 ということで、絶えず、
「相手と同じレベルでいよう」
 と考えるのだ。
「それこそが、パートナーだと思う。つまりは、旦那以外に、好きな人ができたとしても、それは仕方がない。自分から好きになったわけではなく、相手は覚悟を決めて、私を好きになってくれたんだ」
 と考えるからだった。
 つまり、彼女は、その時々で、自分の都合よく考えてしまうのだった。
 しかも、相手に合わせてもことなので、
「保護色になった」
 ということが、理屈に合っているような気がする。
 奥さんは、そういう意味で、一時期、何にもの男性と
「不倫」
 をしていた。
「W不倫」
 ということに形的にはなるのだが、奥さんにとって、
「旦那は、もう旦那ではない」
 という感覚でいた。
 というのも、ある一瞬、嫌いになると、奥さんは、一気に冷めてしまう。
 それは相手が旦那でも同じことで、いや、旦那だからこそ、一度嫌いになってしまうと、自分の中で、まるで、
「裏切られた」
 と感じることが、奥さんにとっても、
「旦那への見切りだった」
 のかも知れない。
 やはり、決定的なことは、
「大型商業施設への移転」
 ということだったのだろう。
 その頃から、奥さんは、
「旦那に女がいる」
 ということは分かっていた。
 奥さんは、旦那のことを、
「愛している」
 というよりも、
「私がいないと、あの人はダメなんだ」
 と思ったからだった。
 旦那の、沢村は、極端な甘えん坊だった。その理由というのが、いわゆる、
「マザコン」
 だったのだ。
 それを感じたのは、結婚して最初の里帰りの時、奥さんにとって、信じられない光景が飛び込んできたのだ。
「膝枕されて、耳かきをしてもらっている」
 という姿を見てしまったのだ。
 隠れたつもりだったが、見つかったのは分かっている。目が遭ったのが分かったからだ。しかし、旦那は臆することなく、気持ちよさそうにしている。
 それを見た時、
「ああ、この人のマザコンは本物だ」
 と感じた。
 その時の旦那の視線が、本当に気持ち悪いものだった。
 目をカッと見開き、口は笑みを浮かべている。
「気持ち悪さに、恐怖を感じた」
 これでは旦那は、
「ちょっとした。サイコパスだ」
 と思ったのだが、まさにその通りだった。
 その瞬間、奥さんの中で、何かが芽生えた気がした。
 それは寂しさというものではなく。自分の中にある、
「施し」
 という気持ちと、
「癒しになりたい」
 という思いだったのだ。
 そう思って、まわりの人に接していると、
「私は、不倫が向いているのかも知れない」
 と感じた。
 旦那に見切りをつけたことで、まわりの男性が、かわいらしく見えたのだ。
 それは、旦那に対して、
「かわいらしい」
 と思っていたからなのか、
「癒しになりたい」
 という気持ちを与えてくれるという気持ちになったからだ。
「私こそが聖母マリアなんだ」
 と感じた。
 最初の男は、伸子のことを、女としてしか見ていないようで、そのむさぼりついてくる感覚は、本当にこれ以上ないという快感となったのだ。
 愛撫一つをとっても、旦那とは違う。結構、荒々しかったのが、本当はよかったのだが、それも、
「私のことを、真剣に愛してくれていて、絶対に離さない」
 というくらいの力強さだと思っていたのだが、それがただの、
「自分の欲求不満の解消の道具なだけでしかなかった」
 ということなのだ。
 旦那の何がよかったというのか、あのマザコンの旦那からは信じられないと思うほどの強引さだったのだろう。
 いつも自分よりも、前にいるくせに、しっかりと気を遣ってくれている旦那が、最初は眩しかったのだ、
 だが、そのメッキは次第に剥がれていき、
「成田離婚」
 という言葉が昔あったが、
「まさにその言葉の通りではないか」
 と思うようになったのだ。
 そんな話を、その時ファミレスでした。今までは、
「墓場まで持っていこう」
 と思っていたことだったが、本人は死んでしまったのだ。
「俺も関係を持っちゃったんだよな」
 と、秋元がいうと、松崎も、樋口青年も、少しびっくりはしたが、それも一瞬だったのだ。
「なんだ、皆そうだのか」
 と、納得するだけだった。
 関係を持ったことに対して、びっくりというよりも、納得だったのだ。
 逆に、
「皆仲間だったんだ」
 と思うと、気が楽になったのは、きっと、当の本人が死んでしまったからだろう。
「あの奥さんは、ベッドの中では、豹変するんだよな」
 と、樋口青年がいうと、他の二人は黙って頷いた。
「違うかも知れないと思っても、二人きりの時は、俺だけのものだって思わせるようなテクニックがある」
 と、今度は秋元がいった。
 すると、二人のリアクションは、これまた同じだったのだ。
 それぞれの相手に違う態度をしているくせに、それぞれに納得できるような形だというのは、それこそが、
「伸子さんの性格ではないか」
 ということになるのであろう。
 そんな性格を、
「天真爛漫」
 といってもいいのだろうか?
 どこか、小悪魔みたいなところがあり、
「そんな性格は、女性であれば、誰もが持って入り」
作品名:一人三役 作家名:森本晃次