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一人三役

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 ということであるので、
「尊厳死」
 とはある意味変わらない。
「尊厳死」
 というのも、ある程度の要件がそろっている場合ということなのだが、あくまでも、それは、
「家族の事情」
 ということではなく、
「患者の症状」
 に限られてくるのだ。
 確かに、生命装置を外すというのは、普通に考えればいけないことなのだろうが、
「違法性阻却の事由」
 と何が違うというのか、
 人を殺したとしても、それは、
「ほぼ生き返る可能性がない」
 ということを言われた状態で、それでも生き続けなければいけないということで、
「生かされている人間」
 というのにも、意志はないのか?
 ということである。
 生前に、遺言として、
「植物人間になってまで生き続けたくはない」
 ということを表記していれば、少しは違うだろう。
 しかし、考えてみれば。生きている人間を。
「生きる屍」
 として、しばりつけてしまうことは、それこそ、
「基本的人権の尊重」
 をむさぼるものだとは言えないだろうか?
 これ以上を言うと、いろいろ問題になるので、控えるが、
「安楽死」
 という問題は、人間が生存し続ける間は、
「永遠の問題」
 ということになるのではないだろうか?
 それを考えると。
「今回の事件から、少し離れた」
 ようだが、奥さんには、
「あまり知られていないという部分が多い」
 ということもあり、三人は、それぞれに、いろいろな発想を思い浮かべては、噂話のように言っていた。
 しかし、そのうちに、樋口青年が、少し、そわそわし始めた。
 最初は、
「トイレにでも行きたいのか?」
 と思ったが、一向にその様子は示さない。
「何かを我慢している」
 という様子は見てとれたが、だからといって、
「何かを言おう」
 としているのは明らかなのに、一向に切り出そうとはしない。
 確かに、樋口青年には、優柔不断なところがあり、
「何かを切り出すことに、かなりの神経を遣う人間だ」
 ということは、松崎には分かっていたことだった。
 だから、
「何がいいたいんだ?」
 と考えていると、助け船を出してあげたくなったのだ。
「樋口君。何か言いたければ、いっても構わないんだよ」
 と、松崎がいうと、秋元は、興味深そうに、彼を見ていた。
「実は」
 とちょっと口にした時、まだ黙り込んで、きょろきょろしている、誰も他にはいないのが分かっているはずなのにである。
 そして、彼は続けた。
「実は、奥さんが不倫をしているという話があるんです」
 というではないか。

                 奥さんの秘密、その2

 それを聞いた二人は、別に驚かなかった。むしろ、
「そんなことは最初から知っているよ」
 と言わんばかりで、キョトンとしているではないか。
 それでも、樋口青年は、ここぞとばかりに、饒舌で、
「皆さんも知っていたんですね。でも、皆さんは、その相手が誰なのか、ご存じですか?」
 とばかりに、ほくそ笑んだ。
 それを見て、今度は二人がゾッとしたのだが、それは、その話にゾットしたのではなく、樋口青年のその表情に対して、気持ち悪いと思ったから、ゾッとしたのだった。
 そんなことまで、気が回る樋口青年ではないだろうから、
「きっと、自分の話に、皆ゾットしたのだろう」
 ということで、ほくそ笑んだのであろう。
 それだけ、樋口青年は、
「分かりやすい性格」
 であり、逆に、
「少し扱いにくいところもある」
 ということになるのかも知れない。
 それを思うと、この場にいる三人は、それぞれに、性格の違いから、
「相手にないものを自分が補っている」
 という、
「いい関係なのではないだろうか?」
 と感じるのだった。
 だから、
「アイコンタクトだけでこの三人であれば、うまくいく」
 ということであり、
「三すくみ」
 といえばいいのか、
「三つ巴」
 といえばいいのかと、考えるのであった。
 それぞれで、問題があるというのか、いえることとしては、
「それぞれに、均衡が保たれている」
 ということは同じであるが、その過程における考え方が違っているのだ。
「力が、均衡している」
 というのが、
「三つ巴」
 であり、
「それぞれに、優劣の関係がしっかりとしているので、その距離が均等であれば、お互いに手を出すことができず、力の均衡を作り出している」
 ということになるのであった。
「三つ巴」
 というのは、結果的に、
「力が均衡している三つがある」
 ということで、その決着をつけなければいけない場合に、
「巴戦」
 というものを行って、雌雄を決するということになるのだ。
 しかし、
「三すくみ」
 というものは、
「触れてはいけないもの」
 ということであり、あくまでも、結果としてできた
「力の均衡」
 は、誰にも触ることができないものだということになるのだった。
 だから、そんな状態を保ち続けられるかどうか、均衡が破れると、
「破滅が待っている」
 ということになるのである。
 そんな状態で、樋口青年は、松崎と、秋元の二人を耳元に寄せて、
「ひそひそ話」
 で伝えた。
 もちろん、
「世界的なパンデミック」
 を警戒して、マスクをしながら、若干の距離を置いてのことであったが、その口から放たれた人の名前を聞いて、二人はそれぞれに驚いた。
 明らかに、
「意外だ」
 という顔をしていたのだが、そのリアクションは様々である。
 思わず、
「えっ」
 と叫んでしまい、
「まずい」
 と思ったのか。口を手でつぐんだのが、秋元だった。
 秋元は、
「いちいち、リアクションが大げさなところがあるので、本当であれば、内緒話は危険なのだ」
 ということなのだろうが、樋口青年は、
「敢えて話した」
 ということのようだった。
 松崎としても、驚いて、思わず声が出そうになったが、松崎の性格として、何か突然のリアクションをとらなければならない時は、最初に、
「声を出してはいけない」
 という意識が働くので、すぐに静止できるということであった。
 それを考えると、
「俺は、自分で思っているよりも、冷静沈着なんだな」
 と思っているのだが、
「それは間違いない」
 ということであった。
 実際に、松崎というのは、子供の頃、中学時代までであろうか。秋元よりも、さらに大げさなところがあったのだが、
「大げさなリアクションをとってしまったことで、友達を数人なくした」
 という経験から、今では、
「大げさなことはしないようにする」
 というようになったのである。
 それを考えると、
「俺って、高校に入った頃から変わったんだよな」
 と思うのだった。
 実際に、中学時代くらいまでは、
「苛められっ子」
 と言われていたのだが、それは、
「ずっと、自分が悪いんだ」
 と思っていたことで、人に逆らえない性格だった。
 だから、人から言われたことをまともに信じ、完全に、
「洗脳された時期があった」
 というのも分かっていたのだった。
 だから、余計に、虐められるということなのだろうが、それを思うと、
「中学時代というのは、黒歴史だった」
 といえるのだろうか?
作品名:一人三役 作家名:森本晃次