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破滅に導くサイボーグ

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 幕府とて、天皇の権威がなければ、成立しないといってもいい時代だってあったではないか。
 結局幕末になると、
「幕府では、この難局を乗り切れない」
 ということで、幕府を倒して、
「天皇中心の新政府を樹立する」
 ということでから出来上がったのが、明治新政府であり、
「諸外国に、押し付けられた不平等条約撤廃に向けて、議会政治や憲法制定といった、新国家としての、大日本帝国ができあがった」
 というわけである。
 大日本帝国というのは、そういう意味でも、
「立憲君主国」
 なのである。
 他の国のように、国王が、専制君主を行ったわけではないので、天皇といえども、勝手なことはできない。
 あくまでも、天皇を崇め奉るというのが、
「神の国」
 と言われる、
「大日本帝国」
 の本来の姿なのだ。
 そういう意味では、今の日本国というのは、
「敗戦によって、占領軍によって押し付けられた民主主義」
 といってもいいかも知れない。
 だが、さすがにベルサイユ体制の問題を考えると、日本に、莫大な賠償金を強いるわけにはいかない。
 ただ、一つ厳しいのは、
「戦争の絶対的な放棄」
 だったのだろう。
「武装解除させられ、基本的には、再軍備などできるはずのなかったドイツにて、民衆の後押しから出てきたナチスは、第一次世界大戦から、十数年しか経っていないのに、すぐに再軍備を行うことができた」
 ということで、
「第二次世界大戦の教訓として、ナチスに再軍備をさせたという過ちを二度と犯してはいけない」
 ということであろう。
 その再軍備をさせてしまったことが、結果的に、あれだけの犠牲者を出したということで、
「日本には、絶対に再軍備をさせてはいけない」
 のであった。
 ただ、日本には、諸外国にない、いろいろなしがらみのようなものがあった。
 他の国でいう、戦争責任者というと、
「大統領」
 であったり、
「首相」
 ということになるのだろうが、日本においては、
「基本的には、天皇である」
 ということだ。
 何といっても首相というのは、
「政治の代表」
 であり、
「軍の作戦にはかかわってはいけない」
 ということになっているのだ。
 日本においての軍というのは、
「天皇直轄」
 であった。
 それは、大日本帝国憲法における、
「統帥権」
 というもので、
「天皇は、陸海軍を統帥す」
 と書かれているのだ。
 つまりは、軍は、
「天皇直轄であるから、政府は口を出せない」
 というわけだ。
 首相が、戦争を始めるわけでも、終わらせるわけでもない。しかも、省庁には、
「陸軍省」
 というものがあり、そこには、
「陸軍大臣」
 というのが存在しているにもかからわず、あくまでも、
「軍政」
 というような、人事などを行うところで、
「軍令」
 という作戦の立案であったり、軍としての方針を決めるところは、天皇直轄で、有事となると、
「大本営」
 ということで、陸海軍の本部が置かれるということだ。
 そこには、軍関係者以外では、天皇しか入れない。もちろん、
「大元帥」
 という形で入るわけだが、そんな統帥権を天応が持っていた。
 鮫島博士は、この統帥権に、少なからずの疑問を持っていた。
 それは、
「財閥として、軍などに出入りしているから、軍や政府というものがどういうものなのかということを、肌で知っていた」
 ということからであろう。
「大日本帝国が、もし、戦争になれば、混乱が起こって、内部から、戦争継続が難しくなるのではないか?」
 と思っていたのだ。
 それは、もちろん、敵国を、
「アメリカ」
 か、あるいは、
「ソ連」
 と思っていたからだ。
 もっとも、この考えは一定数の人が考えていた。
 陸軍の中に派閥があり、その中の、
「皇道派」
 と呼ばれるところは、
「対ソ連」
 ということを考えていて、
「統制派」
 というところは、
「中国大陸進出派」
 であった。
 そして、海軍は、基本的には、
「対アメリカ」
 ということで、三者三様にそれぞれの考えがあったのだ。
 ただ、中国大陸に進出すれば、
「アメリカが黙っていない」
 ということも分かっていた。
 しかも、イギリス、フランスなども、中国大陸に権益があった。
 元々、ドイツもあったのだが、第一次大戦の敗戦によって、権益がなくなり、その分、日本に回ってきたということもあったのだ。
「山東半島の、青島」
 などが、そのいい例であっただろう。
 さらに、日露戦争で獲得した。
「大連」
 や、
「奉天」
 などの権益も、その租借期間を延長したりしたものだった。
 そんな状態において、鮫島教授は、
「戦争は避けられない」
 と思っていた。
 中国との衝突は当たり前のことだが、そのあとに、そのような形になるかということもある程度は分かっていた、
 そう、
「列強による、経済制裁」
 何といっても、資源に乏しい日本という国の首を絞めるには、一番の効果だった。
 そもそも、どこまで、アメリカやイギリスが、
「日本を戦争に引っ張りだせるか?」
 ということを考えていたかということである。
 少なくとも、日本は、ドイツと、同盟関係を結んでいた。
 ヒトラーの思惑として、
「対ソ戦において、日本と協力して、ソ連を挟み撃ちにできれば、ソ連を屈服させることができる」
 と考えていたかも知れない。
 日本は、確かに、
「日ソ不可侵条約を結んでいた」
 という経緯はあるが、ドイツとしては、
「俺たちが最初に、独ソ不可侵条約を破ったのだから、日本が破っても構わない」
 と考えていたかも知れないが、どこまで信憑性があることなのか分からない。
 日本は、少なくとも、それまでの戦争で、
「だまし討ち」
 であったり、勝手に条約を破ったりなどということをしたことはなかった。
 実際に戦争が終わるまで、
「不可侵条約を結んでいた」
 と言われる。3国のうち、実際に、ドイツは、
「独ソ不可侵条約」
 を、ソ連は、
「日ソ不可侵条約」
 というものを一方的に破っているが、日本から破ったことはなかった。
 情勢的に、
「そんなことができるわけはない」
 といえるのだろうが、日本という国は、戦闘では、だまし討ちなどをしたことは一度もなかったのだ。
 そもそも、大東亜戦争の大義名分も、
「東アジアから、アングロサクソンを追い出して、アジアに共栄圏を建設する」
 というのが、スローガンではなかったか。
「八紘一宇」
 という言葉にあるように、
「世界を一つの家として、永久平和を目指す」
 というのが、日本の政策だったのだ。
 もちろん、諸外国の考え方だってあるだろうから、勝手な考えで突き進むわけにはいかない。
 そう思うと、達成には、少しは、何かを犠牲にする必要はあるというもので、当時の日本は、みんな愛国心に燃えて、国を憂いての行動だったということは、無視できない発想ではないだろうか。
 そう考えると、
「日本という国は、敗戦後、平和ボケの国になってしまった」
 ということであろう。

                 コウモリとオオカミ

 満月というと、いろいろなことを想像してしまう人も多いだろう。
作品名:破滅に導くサイボーグ 作家名:森本晃次