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破滅に導くサイボーグ

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 というのは、なかなか、当局も認めてきれない。
 もちろん、大学から金が出るわけでもない。
「研究したいのであれば、自分の金で」
 ということであるが、当時の大学教授というのは、名誉職だと思われているが、実際には、そんなにお金が儲かるわけではない。
 それを思うと、
「いくら、人から教えられたから」
 と言って、簡単に、
「はい、研究を始めましょう」
 ということにはならないだろう。
 それを思うと、やり方を考えないといけないのは、当然であった。
 そこで、T大学の鮫島教授が、民俗学の研究ということで、この村の都市伝説の研究に乗り出した。ただ、鮫島教授というのは、当時でいうところの、財閥系ということもあって、他の人とは違っていた。
 一種の特権階級といってもよく、特権階級のおかげということもあるのか、大学時代から、考え方も、突出しているところがあった。
 だから、彼は考え方としては、両極端なところがあり、国に対しても、普段は、そこまで愛国心なるものはないのだが、急に、愛国心を人に説くようなことがある。だから、人によっては、
「変人」
 と思っている人も多いだろう。
 しかし、それでも、教授の周りには結構人が集まってくるのは、何か、人を引き付けるところがあるからなのだろう。
 奥さんである雅子は、旦那のどこに惚れたのか聞かれると、あいまいにぼかしてはいるが、それは、
「言葉にすると難しいということなのか」
 それとも、
「人に話しても、分からない」
 というところなのか分からないが、とにかく何か、
「他の人には分からない何か」
 というものがあるのだろう。
 それも曖昧なところであり、それは、奥さんにも分からないというところなのかも知れない。
 そもそも、当時の財閥というのは、結構強かった。
 実勢に政治にも口を出すところも多く、軍と結びついていたりすることで、ある意味、特権階級の地位にあったといってもいいだろう。
 特に軍というと、
「国防」
 ということでもあり、
「大日本帝国憲法の統帥権」
 というものに守られた、
「天皇の権威」
 をそのまま反映しているものだったのだ。
 だから、その権威をもとに、政府とは切り離したところで、得られる特権階級というものを生かし、軍もそれを利用することで、
「裏で暗躍する財閥」
 というのも、あったことだろう。
 鮫島教授は、そんな財閥の中では、そんなに知名度があるものではないが、知名度の代わりに、他の財閥よりも、
「情報に長けている」
 というものであった。
 そんなに知名度がないのは、あくまでも、
「日本で」
 ということで、この財閥は、元々貿易で財を成したものであり、根拠地は、海外に拠点を置いていた。
 もちろん、開業者も日本人で、日本を中心とした企業であるが、海外に行くと、企業としては、誰もが知っているようなブランドが、実はこの財閥だったりするのだ。
 特に軍とすれば、
「海外の情報がほしいわけで、結びつきが大きいのは当たり前だ」
 といってもいいだろう。
 特に、アメリカ、イギリス、オランダ、中国などであるが、これは奇しくも、
「大東亜戦争にて、敵国になる国ぐにではないか」
 もちろん、そんなことを予言できる人はいなかっただろうが、ただ、注目している人は軍人にもいた。
「日本という国は資源がないからな」
 ということで、近い将来、資源の問題で、アメリカともめることは分かっていた。
 ただ、アメリカとしても、日本という国は怒らせるのではなく、うまく手なずけて、アジアでの自分たちの権益を、
「日本によって、保証してもらいたい」
 という思惑を持っていた人も。少数派ではあったが、一定数はいただろう。
 そういう人と財閥が結びつけば、
「アジアにおける権益を保ちながら、欧米列強を刺激することなく、来るべき戦争に備えることができるだろう」
 というものであった。
「世界大戦がどのようなものになるか?」
 ということは、それぞれの人に、それぞれの考えがあっただろうが、少なくとも、
「第一次大戦におけるベルサイユ体制」
 というものが、来るべく、
「第二次世界大戦」
 というものを思わせるに十分な体制だったということは、
「火を見るよりも明らかだ」
 ということであろう。
 第一次世界大戦というのは、
「民俗戦争」
 というものと、
「帝国主義による最後の戦争」
 という色が濃かったのではないだろうか。
「ドイツ帝国」
「ロシア帝国」
「オーストリア=ハンガリー帝国」
「オスマントルコ帝国」
 などという、
「王をいただく」
 という国がいろいろな民族を抱える中で起こった戦争だったのだ。
 しかし、結果としては、すべての国が、帝国主義から革命が起こり、戦争継続が困難になった。
 結果、敗戦となったわけだが、そんな敗戦国に、戦勝国は、多額の賠償金を課したりしたのだ。
 その時点で、
「次の世界大戦は近い」
 ということは分かり切っていたのだ。
 そこで、敗戦国で、多額の賠償金を課せられたドイツにおいて、
「ドイツ民族の優位性」
 というものを解く形で台頭してきたナチスが、その力を握るのは当たり前のことであり、再軍備に走り、独裁国家として、ヨーロッパを席巻しようとしたのも、分かり切っていたのではないだろうか。
 ヨーロッパを席巻し、その中で、
「たくさんの民俗がいる中で、一番となるのが、ドイツ民族だ」
 というスローガンは、民族主義で戦ったかつうての、
「第一次大戦」
 とは違う。
 ということを思わせるのだろう。
 だから、ナチスは、ドイツ国内で、一気に支持された。
 あれだけ、
「敗戦国」
 としての、国家のプライドもズタズタにされたのだから、ヒトラーの演説は、ドイツ国民の心を打ったとしても、それは当たり前のことだったのだ。
 再軍備を行うことで、
「ドイツ民族が、ヨーロッパで一番」
 という発想となり、かつての敗戦国の惨めさを、一気に払拭できるというものである。
 実際に、ユダヤ人への迫害などというのは、ある程度公然と行われていた。
 そこが集団意識の恐ろしいところで、
「隣の人がするから、俺がしても」
 という感覚であったり、
「国家体制であれば、それはそれで仕方がない」
 と、国家のせいにすれば、なんだってできるという考えを持つということだってあるだろう。
 それは、
「アジアにおける大日本帝国」
 にも言えることであった。
 ヨーロッパのほとんどの国では、帝国主義は崩壊していたが、日本は、相変わらずの帝国である」
 というのは、日本の場合は、他の帝国とは違い、何といっても、
「万世一系」
 ということと、今までの歴史から考えて、
「天皇中心の中央集権国家」
 というものしか、考えられない国家でもあった。
 確かに中世というと、
「武家の世界」
 であり、その中心に幕府というものが置かれ、政治の中心は、その幕府にあったのだ。
 しかし、実際には、
「幕府というのは、天皇から任命されて、政治を行っている」
 といってもよかった。
 実際に、力がなくても、
「民衆は、天皇には頭を下げる」
 ということだ。
作品名:破滅に導くサイボーグ 作家名:森本晃次