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破滅に導くサイボーグ

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「集団催眠をかけて、相手を錯乱させ、お互いに、殺しあうような、いわゆる、
「相手を疑心暗鬼にさせる」
 という作戦を考えたことがあった。
 その時の集団催眠というのを、薬のようなものを使って、
「誰でもが、催眠術師にする」
 というようなものを開発し、それを兵器として使おうという考えもあったりした。
「兵器というのは、何も、相手を殺傷するだけが兵器ではない」
 といえるのだろうが、相手を攻撃することなく。
「相手が殺しあうというようなことを行うのであれば、それは、どのようなものなのか?」
 ということである。
 この村に来た目的は、表向きは、
「民俗学の研究」
 ということであるが、今のような、
「目の前に有事が迫っているような時代に、そんな民俗学の研究などを、大学が、いや、政府が許すわけはないだろう」
 というのだ。
 大学は、国立大学なのだ。
「帝国大学」
 といってもいいくらいの大学で、
「東京、京都、大阪に匹敵するところであるはずなのだが、少し地方で、都会に比べれば、少し落ちるというレベルであるが、それをいかに考えるか?」
 ということになるのであろう。
 だが、鮫島博士というと、民俗学においても、兵器開発においても、表と裏で、国家に貢献しているのであった。
 この村において、
「何かの兵器を開発する」
 ということまで思いついたわけではないが、そもそも、この村に興味を持ったのが、
「満月に必ず、子供が生まれる。そして、その子供は男の子だ」
 という、本当の都市伝説のようなものが、気になって、研究に来た。
 今までの研究の中で、民俗学を研究しているのは、その中に、
「人間の遺伝子が絡むこととして、人間の精神状態が、何かの理由で変化した時、違う人間になってしまう」
 という、それこそ、
「オオカミ男」
 のような話を頭に描いていたのだ。
 それが、いわゆる、
「変身」
 という発想であり、
「人間には、超能力のようなものとして、変身機能がついている」
 ということを考えるものであった。
 もちろん、そんな機能が本当にあるとは、まともに信じてはいないが、
「昔の人が、物語として書き残して、それが、ベストセラーとなり、今でも全世界で読まれていて、SFやホラーの元祖と言われるようになった」
 ということであれば、それこそ、
「オオカミ男」
 という話を、ところどころかいつまんでみることで、いかに信憑性のあるものにできるかということで、
「未来において、不可能を可能にするためのステップができる」
 と考えると、
「俺が、開発者とならなくとも、それはそれで科学の進歩に役立ったということで、いいことだ」
 と思うようにしていた。
 もちろん、
「発明」
「発見」
 などという、名誉欲を欲しているのは当たり前のことであるが、それだけが、科学者の使命ではないと思っている。
 そういう意味で、
「専門は、民俗学」
 ということであり、裏で、大学から研究を許されるという立場にまで上り詰めていたのだ。
 もっとも、大学で、自分を推薦してくれる教授がいたから、自分が、こうやって、民俗学の傍ら、医学もできるのだ。
 それを教えてくれたのが、自分を推薦してくれた、
「恩師」
 といえる教授だった。
 その教授は、博士号を持っている人で、専門は、物理学と医学であった。
 元々は、物理学の権威であったのだが、
「それを医学に生かして、日本の役に立ちたい」
 と考えていたのだ。
 鮫島教授も、その意志を受け継いだ形で、恩師の研究所の土台を受け継いだのだった。
 だから、何といっても、
「恩師のお墨付き」
 ということと、実際に、鮫島教授の発見は、定期的に学会で発表され、推薦した博士の株も上がったというものであった。
「その博士がひそかに研究していた」
 というのが、
「変身」
 というメカニズムであった。
「何かのタイミングで、細胞組織が入れ替わり、それが、変身をさせる力になる」
 ということを、博士は、物理学から考えていた。
 鮫島教授は、それを、
「医学の観点から考える」
 というのが、
「民俗学にヒントが隠されているのではないか?」
 というところにつながっていくのであった。
 そんな、
「変身」
 というメカニズムがどのようなものか?
 ということであるが、そんな変身のことを、いつ頃から言われるようになったのか、それはよくは分からないが、ひょっとすると、
「同じことを考えていたのは、鮫島教授だけではないのかも知れない」
 と感じたのだ。
 というのは、鮫島教授が戦後、心理学においても、研究するようになった時、
「最近言われるようになったこと」
 という話で、
「カプグラ症候群」
 というものがあると、聞いたのだった。
 それはどういうことなのかというと、
「自分の近しい人、つまり、家族や恋人などが、どこかの秘密結社のせいで、その人たちとそっくりな人間と入れ替わってしまっている」
 という幻覚のようなものだというのだ。
 テレビが出てきて、特撮ドラマであったり、マンガなどの、SFものであったりというものには、そういう発想が結構あったりする。
 それだけに、
「変身するということは、姿かたちが変わってしまうというだけでなく、その人の人間性も変わってしまうことが大切なのだ」
 という。
 そして、この
「変身」
 という発想は、それこそ、マンガや特撮番組でいうところの、
「正義のヒーロー」
 という発想に通じるところがある。
 しかし、当時は、あくまでも、
「戦時下」
 といってもいいくらいの時代背景だから、
「正義のヒーロー」
 というのではだめなわけで、それこそ、
「人間兵器」
 と呼ばれるもので、
「カプグラ症候群」
 というのは、あくまでも妄想なのだが、教授がこの時代に依頼を受けて考えていたのは、この、
「カプグラ症候群」
 というものによって、作り出される、
「天使の顔をした、悪魔のような人間」
 というものだった。
 この発想は、一種の、
「多重人格者」
 だといってもいいだろう。
 いや、そもそも、変身した人間に、感情などという性格が必要なのだろうか?
 元々の変身前は、
「普通の人間」
 として、生活していなければ、人間社会に浸透することはできないので、その時点で怪しまれてしまう。
 つまりは、変身前というのは、普通の人間なのだ。
 変身することによって、
「オオカミ男」
 のように、姿かたちが変わってしまい。その時に、凶暴性と、自分に対しての危害を、「周りのみんなが与えるのではないか?」
 ということになるのだ。
 そういう意味で教授は、
「オオカミ男」
 と満月という発想は、この村のことを知るまで、自分の中の構想としては、最初からあったといってもいいだろう。
 しかし、それだけではなく、この村にやってきたことで、今度は、ホラー話の双璧といってもいい、
「吸血鬼ドラキュラ」
 と、
「コウモリ」
 の話がくっついたことで、
「この村にきてみないと分からない」
 ということもあり、来るだけの、価値はあったということである。
 というのも、
「吸血鬼ドラキュラ」
 の発想がヒントになって。
作品名:破滅に導くサイボーグ 作家名:森本晃次