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果てのない合わせ鏡

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 というのは、これは人間と同じで、企業というものも、
「一人では何もできない」
 ということである。
 他の企業があってからこその自分の企業が仕事ができるというわけで、例えば、流通業などであれば、
「モノを生産する業者から、仕入を行い、そして、販売を目的とする、流通会社に納める」
 ということで、その間にいくつもの企業が介入する。
 モノを運ぶための物流会社。
 そして、発生する費用は、その時の、
「現金払い」
 であったり、何かとも、
「物々交換」
 というものではないので、そこには、銀行であったり、それ以外の金融機関などが介入してくるだろう。
 物流会社にしても、金融機関にしても、どちらも機能していなかったら、会社は経営などしていけるわけはないということである。
 だから、会社の中には、会社を取り仕切る、総務部、仕入先との間に発生する交渉などを行う、商品部、さらには、スーパーなどの流通業を相手に営業を行う。
「営業部」
 と様々な部署が発生する。
 適切な支払や、入金を確認するための経理部であったり、銀行の窓口としての総務部などが、
「金のやり取り」
 というところを担って、会社の、
「縁の下の力持ち」
 として、支えているということになるのであろう。
 だが、なかなか、会社によっては、それぞれの部署で、立場というものが違っている。
 それによって、会社というものを、うまく機能させるために、コンピュータ化を行ったり、場合によっては、
「アウトソーシング」
 と言われる、
「外注」
 により、会社の機能を行うことで、
「経費節減」
 という意味からの、
「会社の利益を追求する」
 ということになるのであろう。
 それを思うと、会社においての
「いかに、業務をスムーズに回すかというところでの、コンピュータ化」
 というのは、必須なことである。
 しかも、
「自動決済もできないような会社とは、取引はできない」
 というところが、大企業の中にはあるだろう。
 今までであれば、
「自分たちの会社で開発した端末を貸し出すので、それで運用してください」
 ということもあったが、今では、そういうことも少なくなってきている。
 コンピュータ自体が簡素化しているので、簡単に、システム構築ができるということなのか、
「企業が、企業を選ぶ」
 ということは、今までの力関係だけでできるというわけではない。
 ということなのだろう。
 一方通行だけでは、今では通用しないということだ。
 そんな中において、この街は、途中から、
「都心部の企業を誘致したり、中央からの援助がないとやっていけない」
 という状態になっていた。
 そのことを分かっていたのは、町長と、一部の人たちだけだったのだが、そもそも、この町長が、今までの慣例にない形で、町長になれたのかというと、
「中央からの組織票が流れ込んでいた」
 ということがあったからだ。
 大っぴらにしてしまうと、もちろん、贈収賄の罪で、逮捕されるのは必至であるだろう。
 だから、町長本人にも分からない方法で、彼を合格させたのだ。
 そこから、最初こそ、自分の信念のようなもので、行政をこなしてきたが、そのうちに、
「お前がここで町長ができるのには、秘密がある」
 とばかりにウワサが流れてきているのであった。
「じゃあ、私がここでうまくできてるのは、その力のせいですか?」
 というと、
「そうだ、その通りで、お前は、これからは、俺たちのしもべとして、キチンとやってくれないと困るからな。言っておくが、お前を当選させるのが簡単だったように、引きずり下ろすことくらいは、朝飯前なんだからな」
 と、完全に脅迫してきたのだ。
「いいか、お前の立場で今の最大の優先順位は、俺たちのことを他の人に口にした時点で、お前は終わりだからな。下手をすれば、社会的な地位だけではない可能性だってある。こうなると、どれだけリアルなことか、すぐに分かるというものだ」
 とその男はいうのだった。
 最初こそ、やつらの命令に、少しずつ従ってきた。
 最初は簡単なことが多かったが、だからといって危なくないものではない。バレた瞬間に、町長を追われることは当たり前の状態だった。
 しかも、下手をすると命がなくなるなどという脅迫は、普段なら、
「そんなバカな」
 と一蹴できるのだろうが、やつらの実際の力を知ると、恐ろしくてたまらなくなってくるのだった。
 だから、
「産業廃棄物処理所」
 というものを、作ることに賛成だったのは当たり前のことだった。
 奴らが言っているとおりに事態は進行していた。実際に、予定地も決まり、案の定、湖畔あたりのところが候補地になり、まるで電光石火のごとく、その土地を、街が買い取ることに成功したのだ。
 急いでやらなくてもいいくいなのだろうが、中央は急がせる。
 なぜなら、
「この計画をわかっているような連中がいるので、いつ妨害があるか分からない」
 ということであった。
 それを聞いた町長は、急いで購入し、その理由をどうするか考えていた。
「まだ、産業廃棄の話はしてはいけない」
 と言われていたので、このあたりから、少しジレンマになってきていることが分かってきたので、自分の立場が危ういのが分かるのだった。
 どんな言い訳をしたのかというのも、すぐに忘れてしまった。
 思いついたまま、
「ああ、これでいいんだ」
 とばかりに、反射的に行動したので、後から考えると、なぜか、どうしても思い出せないということになっていたのだ。
 それでも何とか購入することに成功したのに、
「後は我々がうまくやりから」
 と言いながら、実際には難航しているという話が聞えてきたのだ。
「本当に団丈夫なのか?」
 ということを考えるのだが、
「いやいや、俺は一蓮托生なんだから、任せるしかないじゃないか?」
 と、脚を踏み入れた時点で、共犯だということは決定しているのだ。
 それを、いまさら、どうすることもできず、後は言いなりになるしかないだろう。
 後になって、
「全部あいつらの指示でした」
 と言えば逃れられると思ったのか、その考えは、本当に、まるでお花畑の中にいるようなものだといえるではないか。
 そんな町長だったが、正直、
「なぜ、自分が更迭させられたのか?」
 ということが分かっていなかった。
 更迭といえば、まだ聞こえはいいが、
「ありもしないことをでっち上げられて、その結果、辞めざるを得なくなってしまった」
 というのが真相であった。
 最初は、副町長も、
「新町長として、なかなかお分かりにならないことも多いでしょうから、私がいろいろお手伝いさせていただきます」
 ということを言われ、町長も、副町長を信じていた。
 副町長は、生粋の子の街の出身者ということで、中央の人からも、
「副町長に分からないことは聴けばいい」
 ということを言っていたので、そのつもりで対応していたのだ。
 もし、産業廃棄に関しての話が出てきた時に、副町長が、少しでも態度が変わっていれば、副町長の気持ちが分かるということであったが、最初はそんなことはなかったのに、途中から、次第に町長から離れていくような感じだったのだ。
作品名:果てのない合わせ鏡 作家名:森本晃次