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影のある犯罪計画

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「自分に容疑が向くことはない」
 という考えであるが、もし、警察が、
「実行犯が別にいる」
 ということを考えたとした場合に問題になるのは、
「教唆を行った人の人間関係
 である。
「人間関係を調べて、知り合いだということが分からなければ、二人を結びつけるものがないもない」
 ということで、この犯罪に関しては、
「完全犯罪」
 ということになる。
 しかし、これだけでは、実行犯は動いてくれないだろう。
 いかに、立場が絶対的なものであっても、こと、
「殺人を犯す」
 ということはよほどのことである。
 それこそ、昔の、
「やくさの抗争」
 のように、若いチンピラのようなやつに殺させておいて、その見返りに、
「戻ってくれば、幹部にしてやる」
 などと言われて犯行に及んだり、
「借金をチャラにしてやる」
 などと言われ、犯行に応じることはあるだろう。
 あるいは、
「誰かを人質にされて。やむなく犯行を犯してしまう」
 というようなことは、昔だったらあったかも知れないが、最近もあるのかどうかは、よく分からない。
 ただ、
「殺人を犯す」
 というのはよほどのことで、
「自分が、誰かのために実行犯になるのであれば、その相手にも、同等のリスクを持ってもらい、自分にとって、死んでほしい人間を葬ってくれるということであれば、犯行としては、都合のいいものではない」
 といえるだろう。
 確かに、最初の下準備はかなり難しいところがあるだろう。
 まず、誰かが、
「交換殺人」
 を考えたとして。まず最初に、大きな問題にぶち当たるのではないだろうか?
 というのは、
「実行犯を探す」
 ということが難しい。
 まず大体の前提条件として、
「誰かを殺したい」
 という、その誰かがいる人でないといけないということ。
 ここがある意味、一番難しいかも知れない。
 というのは、
「誰かに死んでほしいと思っている人はいませんか?」
 などといって、メガホンを持って大っぴらに探すわけにもいかない。
 もちろん、ネットに晒すわけにもいかない。
 見つかったとしても、そんな募集を掛けたりしたら、すぐに検閲が掛かるというのは当たり前のことで、
「なるべく、誰にも知られてはいけない」
 という選定があるのに、そんな簡単に大ぴらにできるわけはない。
 となると、偶然そんな人が見つかるか、そういう目で見ていることで、自分の目が、そういう人を探しているということで、次第に、察知できるようになるという、
「特技」
 でもない限り、そう簡単に見つかるわけはない。
 それだって、もし、そんな人がいたとしても、いきなり他人にそんなことを打ち明けるなどありえない。
 知り合いになったとしても、親友というくらいの仲にならないと、相手が口を割るなどということはありえないに違いないからだ。
 さらに考えられることとして、
「二人の間に、利害関係はまったくない」
 という条件も必要であろう。
 つまりは、
「二人の間に、接点はない」
 と思わせる必要があるわけなので、二人が仲良くなってから、犯行計画を練る時はもちろんのこと、
「知り合って仲良くなるまでというのも、関係を怪しまれるようなことがあってはいけないだろう」
 ということである。
 しかし、仲良くなるまでに、誰にも見られないというのは、実質不可能に近い。
 それを何とか少しでも、
「関係が薄い」
 ということにしないといけないのであれば、
「仲良くなるまでと、実際の犯行までの間に、時間があればあるほど、いい」
 ということになるだろう。
 だが、もし、その間に、
「相手が、誰かを殺してほしい」
 という感情が、次第に薄れていったり、肝心の
「動機というものがなくなってしまう」
 ということになった場合ということも考えられないわけではない。
 もっといえば、相手が殺してほしいと思っている人間か、自分が死んでほしいと思っている人間が死んでしまって。そもそもの
「犯罪が成立しなくなる」
 ということになりかねないということだ。
 そういうリスクも交換殺人にはあったりする。
 要するに、交換殺人というのは、
「犯行を成功させるということよりも、いかに、完全犯罪に持ち込むことができるか?」
 ということが問題になるのだった。
 どんなに完全犯罪をもくろむ計画であったとしても、一人で行い、共犯がいたとしても、立場が同じであった場合は、
「犯行が不可能」
 ということになれば、辞めてしまうこともできるだろう。
 しかし、交換殺人ともなるとそうはいかない。
 片方が裏切ったり、怖気づいたりすると、犯行が、最初からうまくいかないということになるのではないだろうか。
 そういうこと一つをとっても、
「交換殺人」
 というのは、
「大きなリスクを背負っている」
 といってもいいのかも知れない。
 何と言っても、交換殺人の場合の、
「論理的矛盾」
 というものを、誰が看破できるというのだろう。
 きっと、時系列で犯行を考えた時、一つ一つの辻褄を合わせてくれば、言い方は悪いが、「途中で計画がどうしても中だるみになるところがあり、それが、ちょうど、その論理的矛盾を感じさせないことになるのかも知れない」
 というのだ。
 この、
「論理的矛盾」
 というのは、ある意味、
「心理的矛盾」
 ということに結びついているといってもいいだろう。
 というのは、
「犯行計画を練って、いよいよこれから、犯行の本番に向かうという時、一番の問題となるのは、最初の教唆犯にとって、鉄壁のアリバイがある」
 ということである。
 つまり、最初の犯行が起こった時、一番怪しいと思われる人間には、
「鉄壁なアリバイがある」
 ということである。
 つまりは、
「アリバイがある人間だから、その時間は、誰かと会っているとか、防犯カメラに映っているなどというものが必要だ」
 ということであるのが前提だ」
 ここで問題になってくるのが心理的なものであった。
 最初の教唆犯というのは、実行犯が、
「自分の殺してほしい人を殺してくれた」
 ということである。
 そうなると、教唆犯は次に何を考えるであろうか?
「殺してもらったお礼として、今度は俺が、あいつの死んでもらいたいと思っている人を、殺してやらないとな」
 と、果たして考えるであろうか?
「いや、待てよ?」
 とそこで、一歩立ち止まって考えるのではないだろうか?
「今の自分は、死んでほしいと思っている人が死んでくれて、よかったと思っているのである。そうなると、何もリスクを犯してまで、相手が殺してほしいという人を、自分がわざわざ、殺す必要があるのだろうか?」
 という考えである。
「相手は、そのこちらの気持ちを知ったとして、だったら、俺は自首すれば」
 ということになるのだろうか?
 そもそも、交換殺人などということを警察に説明して分かってもらえるかどうか。それも怪しいものだ。
 それであれば、今回の殺人において、自分が何も言わなければ、実行犯として捕まることはないということで、いきなり警察にいうことはないだろう。
 しかし、最初の実行犯は、
「自分が死んでほしい相手」
作品名:影のある犯罪計画 作家名:森本晃次