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表裏と三すくみ

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「女性というものが、どういうものなのか、思春期にもなっていないのに、分かるはずがない」
 ということであった。
 思春期になると、
「どうして、異性を意識するというのだろうか?」
 と思っていたが、実際に思春期になると、
「あれ? 何も感じないけどな」
 と思う。
 それは、自分が思春期になったという意識があるからで、余計に。
「思春期になったら、異性を意識するものだ」
 という感覚があるからではないだろうか。
 最初からそう思っているから、
「異性を意識するということがどういうことなのか?」
 ということを分かるはずだと思っているからだ。
 そもそも、
「思春期に入った」
 というのも、
「何をもって思春期に入った」
 と思うのか?
 というもので、それが、異性への意識だとすれば、思春期に入ったということが分かるということの方がおかしいのであった。
 それを考えると、
「精神的なことよりも、身体の反応の方が、思春期では、自覚に値するのだろうか?」
 と思えた。
 確かに、女性を見ると、下半身が反応してくる。特に、
「大人の女性」
 には、反応するというものだ。
 同い年であれば、男よりも女の子の方が、
「発育が早い」
 と言われているが、まさにその通りである。
 それだけ、胸も大きく鳴ったり、大人っぽくなっているのに、男が感じる女性というのは、さらに上の方なのだ。まさに、
「母親のお腹の中にある、羊水に浸かっているようだ」
 という感覚である。
 そんな幼馴染である、ゆりかが、美術部に入ってきたのは、正孝が入部してから、1カ月後のことだった。
 正孝としては、
「ゆりかのことだから、すぐに入ってくるだろうな」
 と思っていたのだが、想像に反して、すぐに入ってくることはなかった。
 そうこうしているうちに、
「ああ、ゆりかは、帰宅部を貫くんだな」
 と思っていたところ、いきなり、入部してきたのだ。
 さすがに、一度は、
「入部してこないんだ」
 と思っていたので、余計にビックリだった。彼女としては、何かのサプライズか何かのつもりだったのだろうか?
 正孝は、最初は複雑な気分だった。
「入部するなら、正孝が入部するタイミングから、間を置かずに入部してくるはずだ」
 と思っていたからだ。
 ゆりかは、どちらかというと、
「思い立ったが吉日」
 ということで、あまり物事を深く考えずに、思いつきで行動する方だった。
 それが彼女のいいところで、
「学びたいところだ」
 とも感じていた。
 確かに、
「石橋を叩いて渡る」
 というのはいいことだとは思うのだが、一度、悩んでしまうと、その先の行動を躊躇する可能性がかなり高くなる。
 正孝はそのことをよく分かっていて、そのことが、時々、自分の中で、大きな堤防のようなものを作っているような気がした。
 だから、却って、いろいろ悩んでしまい、人からは、
「優柔不断だ」
 と思われてた。
「優柔不断だなんて、却って、一つを考えると、そこに絞るまでに時間がかかっているだけなのに」
 と思うことで、
「俺が悩んでいるというのは、優柔不断だからだろうか?」
 と考えるようになった。
 それが優柔不断ということの証拠なのかも知れないと思ったが、ゆりかと話している時は、
「そんなことはない」
 と思わせる。
 ゆりかが、中学に入る前くらいから、完全に、正孝に従順になってきた。正孝が、
「鬱陶しい」
 と感じるほどに、いつも、
「付きまとってくる」
 という感覚になるのは、そのせいかも知れない。
 しかし、ゆりかと話していると、ゆりかの言っていることがいちいち当たっているかのようで、その言葉を信じないわけにはいかない。
 そう思うと、何かの決断をする時は、ゆりかにいつも相談することにしていた。
 それだけ、ゆりかの言葉には信憑性があり、自分の気持ちを知るには一番だと思えるようになってくるのであった。
 もちろん、
「美術部に入りたい」
 ということも話した。
 すると、
「美術部?」
 と、少し意外な顔をした。
 それもそうだろう。美術など、小学生の頃の正孝を見ていれば、まったく眼中にあるはずのない部活だったのだ。
「どうした風の吹き回し?」
 と感じるはずだったのだ。
 しかし、一瞬驚いたが、
「ああ、そう。美術部ね。いいかも知れないわね」
 とゆりかは言った。
「ああ、絵を描きたいと思ってね」
 と言ったが、この言葉にウソはなかった。
 この時の話で、一番的を得ていた回答だったかも知れない。
 そのことを考えると、ゆりかは、その時に、納得してくれたと理解したのだ。
 だから、次の日には即行で、美術部に入部したわけだが、ゆりかとはまったく違う雰囲気を醸し出しているゆいかと一緒にいるのが、心地よく、ただ、そう思えば思うほど、
「ゆりかの存在」
 というものを意識させるのではないかと感じるのだった。
 だから、勝手に、
「ゆりかも、追いかけるように入部してくるんだろうな」
 と思ったのだ。
 それは、自分が、
「本当に美鬱が好きなのかどうか」
 ということを自分の中で確定させる前だったということを分かっているからだ。
 本当に最初の理由は、
「ゆいか先輩がいるから」
 という不純な理由だっただけに、
「ゆりかに合せる顔がないな」
 と思っていたはずなのに、いつものように、相談してしまった。
 だが、
「相談してよかった」
 と思ったのは、
「ゆりかが、俺の本心。つまり、不純な動機というものをわかっていない」
 ということを知ったからではないか?
 と感じたからだった。
 だが、それも、思い込みだった。
「ゆりかが、入部するつもりの背中を押してくれたのだ」
 という気持ちが強かった。
 ただ、入部してから、少しの間、ゆりかが、正孝から遠ざかっていたかのように感じたのは、気のせいだっただろうか。
 それを感じたことで、
「余計なことを感じさせてしまったのかも知れない」
 とも想った。
 だから、逆に、
「下心を読まれたのかも知れない」
 と思い、びくびくしていたが、そう思うと、今度は、
「俺はゆりかと付き合っているわけではない、自由なんだ」
 ということで、必要以上に、ゆりかを意識する必要などないと思うのであった。
「美術部にいる間くらい、ゆりかが頭の中から消えてもいいだろう」
 と思ったのは、美術部では目の前にいるのが、ゆいかだったからだ。
「自分の妹のような存在が、ゆりかであり、憧れの女性といっていいのが、ゆいかなのである」
 という気持ちを確立されることができただろうか?
 1か月という期間が、どれほどのものだったのかというのは、正孝には分からない。
 ただ、
「気持ちの確立には至っていない」
 ということを感じはしたが、
「では、どれだけの時間があれば、確立できたというのか?」
 と考えたが、正直分かるわけもなかった。
 ゆりかが、入部してきたのが、どの頃のことで、それまで、どちらかというと静かだった美術部が、少しずつ活性化されているように感じたのは、正孝だけだったのだろうか?
作品名:表裏と三すくみ 作家名:森本晃次