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二つの世界と同じ顔

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 というのは、
「そもそも、そんな発想はなかったのだ」
 というのだ。
 それは、君主を暗殺するなどという、
「卑怯な方法は使われなかった」
 ということではない。
 むしろ、その作戦は、卑怯でも何でもなく、まるで、
「正攻法」
 として、当たり前のように行われていたのだという。
「じゃあ、どうして、影武者を仕立てなかったのか?」
 というと、
「この国において、大切なのは、君主その人ではなく、この国家のために、必要あ人間えあるか」
 ということであり、
「その君主の側近でさえ、君主に見切りをつけたなら、逆らったり、クーデターを起こすのは、当たり前だ」
 ということになっていたのだっだ。
 自分たちにとって、必要かどうかというのが君主であり、元々、軍国主義になる前、世界中で行われていた、
「封建制度」
 という、いわゆる、
「ご恩と奉公」
 という考え方はあるにはあったが、その関係は、あくまでも、
「お互いの理解関係:
 ということであり、
「利害関係が一致していなければ、何も国家を救うものではない」
 ということで、
「君主」
 といっても、絶対君主ではなく、
「国民の代表」
 という意味合いが強い。
 ある意味これが、民主主義の元祖であり、だから、代表といっても、自分たちの代表なのだから、結局、代表のために、
「労力や、場合によっては命も惜しまない」
 と言われるようになり、国家というものが、いかに人間と結びつくかということを、知っていたという意味で、この国は、封建制度から、一歩先を進んでいたのかも知れないと言われていたのだ。
 しかし、時代が進むうちに、主君がうまく機能しなくなった。
 それまでの主君は、
「そんな国民の気持ちを分かっていて、うまく、主従関係が回っていた」
 ということなのだが、その理由として、
「世襲は行わない」
 という法律ではないが、暗黙の了解があったからだ。
 それまでに一度、世襲を行おうとした時があったという。しかし、その時は民衆の力が強く、世襲を行おうとした君主に対し、配下のものが、クーデターを起こしたことで、成立しなかったのだ。
 そんなこともあって、
「世襲というのは、成功しない」
 という、伝説まで作るようになったのだった。
 世襲というのは何かというと、
「君主が、自分の息子にその職を譲る」
 というものだ。
 そもそも、この国の次世代君主は、選挙のようなもので決められていた。
 もちろん、今の時代のような、民主主義選挙ではなく、選挙に参加できるのは、
「政治にそれまで参加できると言われた、納税者」
 であった。
 基本的にこの国は、
「納税」
 というのは、義務ではなかった。
 収めたくなければ納めなくてもいい、ただし、政治には一切参加できないし、決まった法律に逆らうこともできない。国家から見れば、それこそ、
「非国民」
 と呼ばれる人たちで、
「とりあえず、戸籍というものは与えるが、一切の権利も義務も化さない」
 ということであった。
 だから、下手をすれば、
「非納税者というのは、奴隷以下」
 といってもいいだろう。
 平時にはいいかも知れないが、有事になった時は、軍も兵も、誰も守ってはくれない。だから、この国に攻めてきた侵略軍があれば、真っ先に狙われるのが、この
「非納税者」
 だった。
「やつらは、この国の民ではない。何があっても助けたりはしない」
 ということで虐殺されても、誰も何も言わないのだ。
 特に、戦争ということになると、そのひどさというのは、
「精神的に異常になっているから、何をされても、仕方がない」
 ということであるが、さすがに、自国民が受けている残虐に対し手は、兵が助けてくれるはずだ。
 だが、
「非納税者には、そんなことはしない」
 ということになると、
「納税をしない」
 ということと、
「奴隷以下として暮らす」
 ことと、どっちがいいかと聞かれれば、答えは決まっているはずである。
 だから、逆にこの村では、率先して税を納める。それが身に染みているので、
「最初から当たり前だった」
 と思っているのだろうが、世襲に関しては、そうはいかない。
 ただ、
「人民が、率先して税を収めてくれているのだから、君主となる方も、国も決まりを守らないというわけにはいかない」
 ということで、
「世襲を行わないのは、こちらも、当たり前のこととされた」
 のだった。
 しかし、時代も進み、この世界の封建制度が崩壊し、国民が中心の国家ができてはきたが、その中でも、まだまだ
「皇帝が君臨し、その皇帝というものが、わが国ではタブーとされる、世襲を行っているのだ」
 ということになると、今度は、外国で、国同士の戦争が起こってくるようになる。
 それは、同盟国同士が戦争を行うのだから、どんどん、その規模は大きくなる。その波に、わが国も飲み込まれるというようなことになってきたのであった。
 何も、
「我が国も、民主国家にも、帝国主義国家のどちらにもなろうという意識があったわけではない」
 ただ、
「民主主義で、国家は守れない」
 ということ、
「帝国主義のような世襲は、最初からありえない」
 という状態になっていたのだった。
 世襲のなかった時代が、急に世襲を始めたのは、どこからかというと、その国は、元々から封建制度をとっていなかったので、税は定期的に入っていたが、それだけではうまくいかない。
 それを補っていたのは、
「貿易」
 だったのだ、
 貿易を行うには、いくつかの方法がある、
「鎖国」
 ということにして、一部の国とだけ貿易をするという形だ。
 実際に、封建制度を行っているところで、鎖国を敷いて、一部の国を貿易をしている国もないわけではなかった。
 しかし、その方法というのは、あくまでも、
「対等貿易」
 という形ではない。
 その貿易の方法というのは、
「自国が属国として、遣えるという形で、表向きには、平等貿易であるが、何かあった時には、助けてもらうための、上納金は、別に頂くことになる」
 というわけであった。」
 一種の、
「宗属関係」
 ということになるのだった。
 しかし、この国は、そういう関係を結んだわけではない。基本的に、
「属国は嫌だ」
 というのが、昔からの考えであった。
 ただ、それまで、
「植民地」
 ということにもならず、何とかここまでやってこれたのは、
「対等外交」
 を行っていたからだった。
「もし、どこかの国が、我が国を属国として、植民地にしようとしても、その考えはうまくいかない。なぜなら、それぞれの国がけん制し合って、お互いに利害関係のある同志の国とも平等に付き合っているので、どこかのバランスが崩れれば、宗主国同士の、戦争に発展しかねない」
 ということだったからだ。
「それぞれの国に対してのけん制」
 というのも、
「対等外交」
 というものの裏に隠されている言葉のようなものだった。
 だが、ある国が、この国に対して、
「抜け駆け」
 をするようになった。 
 どうやら、その国にとって、この国は、
「航海において、武器弾薬や、食料などの補給に、どうしても、不可欠なところにあるようだったのだ」
作品名:二つの世界と同じ顔 作家名:森本晃次