「辻褄と、理屈の合致」
「生きている人間には、その士気を高めるということもあって、厳格であるが、それもこれも、国のために死んでいった人であったり、国体でもある、天皇陛下のため」
ということで、
「一度始めれば辞められない」
ということになり、
「国民よりも、軍の士気にかかわる」
というのも、大きな問題だということになるだろう。
そんな状態だから、
「当時の日本は、元々少なかった人口が、さらに少なくなっていた」
何といっても、
「戦争が終わると、若い連中は、ほとんどが、南方であったり、満州において、戦士していたり、そうでなければ、特に満州というところでは、シベリア抑留ということで、強制的に連行され、強制労働を余儀なくされるという、陸戦協定に明らかな違反をしていたのだ」
だから、戦争終結時に、海外にいる、
「兵であったり、居留民をいかに復員させるかということも、政府の大きな問題だった」
ということである。
特に、日本における、
「この戦争の最初の原因となった」
というものに、
「人口問題」
というのがあった。
それを打開するために、満州に傀儡国家を建設し、そちらに移民させることで、食料問題を解決させたのだが、
「戦後」
ということになると、今度はそういうわけではなく、
「復興させるための、人口が足りない」
ということであった。
しかも、今度は人材が増えてしまうと、ただでさえ、物資や食料が不足しているので、さらに食糧問題が問題になってくる。
そうなると、
「食糧問題が解決さえすれば、人材をいかに確保できるか?」
ということが問題となるのだ。
ただ、日本は何とか、復興を果たした。
それは、
「いいタイミングで、朝鮮戦争が起こってくれたおかげで、戦時特需というものが、生まれた」
ということであった。
戦争が終わって、ちょうど5年目ということで、まだ日本は、焦土の状態であったが、国民においては、生活物資もままならないということで、
「栄養失調で死ぬ」
という人が相当数いたようだ。
しかし、闇市などが出てきたことで、物資を何とか調達し、生き残る人も出てきた。
ただ、まだまだ工業人口を担うだけの人材はまだまだ不足していたのだ。
それでも、何とか、戦争特需に追いつき、日本は、復興の足がかりを掴むことができたのだが、
「それは、本当に、あの状態でできたことなのだろうか?」
と考えられた。
本来は、口にしてはいけない言葉であったが、ふと、その言葉を口にしたことで、
「お前は、この時代の人間ではないのか?」
ということが、露呈しかかったということがあった。
その人物は、
「俺は未来からきた」
と言った。
しかも、その未来というのは、ごく近い未来であって、それも、
「俺だって、こんなところに来たくはなかった」
と言っていたが、
「お前がいかないと、お前は生まれてこないことになるんだ」
と言われ、しょうがないと思い、
「仕方なくやってきた」
ということであった。
「じゃあ、あなたの時代には、もうタイムマシンなどがあったのですか?」
と聞くと、
「そんなものはない。まだまだ先のことなんだけど、俺たちのこの時代の年代が選ばれたのには、理由があるということなんだ」
というのであった。
「どういうことなんですか?」
と聞くと、
「俺たちの時代でないと、お前が生まれてこないとおう理屈が合わなくなる」
ということになるんだ。
未来からやってきたという連中は、戦後数年してから生まれた人であり、当時で、高校生くらいであろうか、戦時中であれば、
「軍需工場に、徴用されている」
という年齢と言ってもいいだろう。
「俺たちがいた時代には、徴用のようなものはないので、簡単に使えると思ったんだろうな」
ということであった。
「ただ、戦後まで、20年も経っていないので、自分たちの親の遺伝子のようなものが残っていて、まだ意識の中に、軍需工場においての徴用というのが、身体に沁みついているという感じだった」
ということであった。
だから、
「もはや、戦後ではない」
と呼ばれ、当時も人手不足とは言われていたが、それよりも、
「戦後の復興」
という時代を乗り越えなければ、
「未来もない」
ということである。
ということは、いつか分からない未来からやってきた人が、戦後、20年から30年くらい経ったところの人間に対し、
「お前たちがここで、過去に行って、働かないと、親は、西洋失調や、流行病で死んでしまうことになる」
と脅されると、
「自分が生まれてこない」
という風に言われ、実際に、今でも、貧しい人は、
「栄養失調」
という現実から、離れられない時代であるということで、
「脅しは充分に効く」
ということであろう。
「だから、彼らを攫い、過去に誘ったことによって、当時、
「行方不明事件」
が多かったり、さらには、蒸発と言われる人が多かったりした。
未来人が狙う相手は、
「いなくなっても、疑われないという理由を持った人」
つまりは、
「自殺志願者のような人」
であったり、
「差別を受けたり、貧富という意味で、底辺にいる人たち」
であれば、
「蒸発した」
といっても、その理由は、
「世を儚んで」
ということで、もし、死体が見つからなかったとしても、
「断崖絶壁から飛び降りたことで、死体が上がらない」
と言われてしまうと、問題としては、
「個人の問題」
ではなく、
「蒸発事件」
ということが
「社会問題になる」
というのが、大きな問題だったのだ。
そもそも、これは、警察や政府からすれば、
「さほど大きな問題ではない」
と思っていたのかも知れない。
いくら、
「もはや戦後ではない」
と言われているとしても、そこは、
「蒸発をしなければならない社会状況は、自分たちが作ったものではなく、仕方のないことだ」
ということになるので、
「とりあえず、社会問題ということを提示しておいて、解決策を模索している」
ということにしておいて、
「俺たちには責任がないんだ」
とタカを括ることで、
「世の中の辻褄を合わせよう」
と、考えているだけのことであろう。
それを思うと、
「社会問題というものは、実際の問題と、政府の問題との、2段階の考え方がある」
ということになるだろう。
それぞれの見方から、時代背景を見ることで、当時の政治家というのは、
「いかに自分の保身に走ろうとするのだろうか?」
ということになるのだろう。
そういう意味で、未来人からすれば、あの時代の人をかどわかすということは、できさえすれば、時空警察からは、ある意味、
「盲点になる」
といってもいいだろう、
時空警察は、その時代を比較的、おろそかに見ているのだった。
元々、特撮の中にも、似たような話が書かれているものもあった。
しかも、同じシリーズであるが、違う物語であり、テーマも、
かたら、
「オカルトチック」
な話であり、かたや、
「地球侵略」
を描いた話だったのだ。
ただ、話の内容と、その目的が奇しくも同じであったが、どうやら、同じ脚本家によっ描かれた内容だったのだ。
作品名:「辻褄と、理屈の合致」 作家名:森本晃次