満月と血液のパラレルワールド
つまり、日本という国は、政府といえども、軍部に対して、口を出すことはできないということなのだ。
だから、
「日本が負けている」
ということを政府ですら、ほとんど知らなかった。
当時の戦争を始めたとされる、首相であった東条英機も、
「ミッドウェイ海鮮の決定的な敗北を、半年間知らなかった」
というくらいである。
途中から軍部である、
「参謀総長」
を兼ねるということになったので、戦争指導ができるようになったが、それまでは、作戦すら、何もわかっていなかったのだ。
ここが、大日本帝国の、
「アキレス腱」
であり、大きな弱点であることから、この戦争を辞められなかった理由の一つに、そのあたりが、潜んでいるということではないだろうか?
そんな時代が、大日本帝国の最後にあったことで、最終的には、
「国土が焦土となり、和平交渉をお願いしていたはずのソ連が、日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、満州に攻めこんできた」
ということで、結果、
「無条件降伏を受け入れる」
ということでの、
「徹底的な敗戦」
となったのが、大日本帝国の末路だったのだ。
大日本帝国が消滅し、その後で、連合国によってできた、
「民主主義国家である日本国」
これは、平和憲法として、70年以上にわたり、戦争放棄を守り続け、人権や、平等を大切にするという憲法の下、建前上は平和国家としてやっては来ているが、
「実際に裏がどうなのか?」
あるいは、
「政府が、実際にはどうなのか?」
ということは、マスゴミの情報統制や、政府によっての握り潰しが行われ、どこまでが表に出ているのか分からない。
今はそんな時代となっているのだった。
新しい家族
そんな日本が敗戦を迎えてからの十年くらいは、
「焦土となった街の復興が急務だった」
何といっても、米軍による、
「民間人を狙った毎日にも及ぶ、大都市への無差別爆撃」
で、日本の主要都市は、焦土と化した。
特に、
「東京大空襲」
あるいは、ヒロシマ、ナガサキへの
「原爆投下」
などで、一晩、あるいは、原爆の後遺症により、約十万人以上が亡くなるという、悲惨なものだった。
これいは、事前に計画された、
「空襲に備えての、歯抜け状態」
ということである、
「建物疎開」
というものも、役に立たなかった。
というのも、空襲に使われているのが、普通の爆弾ではなく、
「焼夷弾」
と呼ばれるものであった。
さらに、日本に投下されたものは、途中で、バラバラになって、
「鉄の棒が降ってくる」
というようなものであり、木造家屋の屋根や壁をぶち破って侵入し、そこで発火することになる。
そして、この爆弾は、一度火が付けば、水では消えないという、ナパームという科学薬品を使った焼夷弾なので、
「燃えつきるまで消えない」
というものであった。
「日本家屋を燃え尽くすために開発された」
というだけのことはある焼夷弾だというわけだ。
そんな爆弾を積んだオオが阿多爆撃機が、100機以上も飛来し、爆弾を、
「雨あられ」
と大都市に降り注ぐのだ。
逃げ道は、地下や山間に彫られた、
「防空壕」
しかなく、逃げ遅れて焼け死ぬものや、命は助かっても、家を焼かれて、帰るところがなく、焼け出されたということになるのだ。
親戚を頼って、移り住む人もいるだろうが、それが主要都市であれば、そこも、いずれは、大空襲に見舞われるということだ。
避難しても、そこでまた大空襲に見舞われるというのが、当時の日本だった。県庁所在地に当たるような大都市は、敗戦までに、ほとんど焦土と化してしまったのだ。
一つ不思議なのは、日本においては、8月15日を、
「終戦記念日」
と呼んでいるが、なぜ、
「終戦なのだろうか?」
ということである。
あきらかに、
「無条件降伏」
を受け入れたのだから、
「敗戦」
なのではないだろうか?
確かに、
「ただの詭弁」
と言われればそれまでなのだが、明らかに、
「戦争継続が不可能」
ということになり、
「白旗を挙げての降伏」
であり、武装解除なども徹底的に行われた状態なのだから、
「敗戦」
であることは、暗黙の了解である。
それを、なぜ、専用軍も、
「終戦」
という言い方をする日本にたいして、誰も文句を言わないのか?
ということである。
「大東亜戦争」
というと、戦争大義が、連合国にとって、都合が悪いので、変えさせたのだから、ここでも、なぜ、終戦という言葉を認めているのか?
と考えれば、実におかしなことだといえるのではないか?
それなのに、許しているというのは、何か含みがあるからではないだろうか?
いろいろ調べてみると、
「軍部が、強硬に反対したからだ」
ということになっている。
そもそも、日本の場合は、欺瞞に満ちた表現を行う。
「それに踊らされた、マスゴミ」
というのも罪は重いが、そもそもが、
「政府の都合」
という形で、事実を捻じ曲げてきたことが、
「敗戦を終戦という、曖昧な言葉でごまかす」
ということになったのだ。
「全滅」
という言葉を、
「玉砕」
といってごまかし。
「撤退」
という言葉を、
「転身」
という言葉でごまかした、マスゴミと政府(いや、軍部)、戦時中であれば、
「戦争継続のために、戦意高揚のためだ」
ということであれば、まだ仕方がないといえるが、無条件降伏をした状態においての日本では、戦意高揚などありえないので、それこそ、
「欺瞞に満ちた言い方だ」
ということである。
これが、
「大東亜戦争」
をいまだに
「太平洋戦争」
というのは、東アジア諸国に対しての忖度から出てきたことなのであろう。
「大東亜共栄圏の建設」
ということで、アジア諸国に進駐し、日本中心の、共栄圏を作るといって、結局植民地にしようと、日本が企んでいたと思っているアジア諸国の反発を和らげるため、
「大東亜」
という言葉を封印するということからではないだろうか?
事実は分からないが、少なくとも、封印するのはいかがなものか?
ということで、それこそ、
「片手落ちの歴史認識」
といえるのではないかと思うのであった。
こんな時代が果たして、いつまで続くのか、
「中途半端な民主主義」
の状態のまま、日本は、某国の属国となり、いずれはどこに向かうのか、今のような歴史認識を続けていれば、亡国は目に見えているということになるだろう。
この物語は、そんな戦後すぐの、昭和23年くらいからのお話ということで、読者阿諸君は認識していただきたい。
大都市では、まだまだ建物もなければ、食料も不足していて、たくさんの人が餓死していく中で、経済も、戦後の、
「ハイパーインフレ対策」
ということで打ち出した、
「新円切り替え」
ということで、混乱が生じ、街には、闇市などが並ぶという異常な光景を、テレビなどで、今の人間は見ることはできるが、想像を絶するものであった。
バラックと呼ばれる、住居としては、雨風をしのげるというだけのものと、爆弾で崩れたビルの瓦礫が同居しているような光景が、広がっているのだ。
作品名:満月と血液のパラレルワールド 作家名:森本晃次