小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

満月と血液のパラレルワールド

INDEX|14ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

 特に、湯川博士や、竹中博士たちが研究することは、あくまでも、
「戦争に勝利」
 するための科学力の利用でしかなかったのだ。
 世界を震撼させたゼロ戦の開発などが、そのいい例であっただろう。
 世界水準を超えた戦闘能力を持ったゼロ戦であったが、その性能を出すために、犠牲になったのが、
「安全性」
 というものであった。
 打たれて、相手の弾が当たってしまうと、その薄い機体では、あっという間にやられてしまう。
 相手はその弱点を知らない間は、
「ゼロ戦と、ジェット気流に遭遇した時は、迷わず逃げろ」
 と言われていたくらいなので、戦わずして逃げるというのが相手の作戦だった。
 しかし、それは考えてみれば、日本軍がしなければいけないことだったのだ。
 ゼロ戦の操縦は難しい。
 というのは、極限まで戦闘に特化した機体なので、その軽さであったり、不安定さというのは、パイロットが熟練でなければ、その特化した機体を操ることはできないのだ。
 だから、どんなに優秀な機体であっても、パイロットが優秀でなければ、
「操縦はできない」
 ということになる。
 そうなると、一番の問題は、
「熟練のパイロットを失ってはいけない」
 ということであり、それがうまくいかないと、ゼロ戦というのは、ただの箱になってしまうのだった。
 特に、艦載機なので、空母の甲板にいるところをパイロットごと、飛び上がる前に、攻撃されれば、ひとたまりもない。燃料が誘爆して、空母ごと、乗組員もろとも、海に沈んでしまったのだ。
 この時、物理的に失った機体や空母よりも、ゼロ戦に関しては、
「優秀なパイロット」
 を失ったことで、大東亜戦争の戦略的な優位が、完全に逆転したということだったのである。

                 対立

 日本国は、この村に、二人の学者を送り込ませて、表向きは、
「二人の農作業従事者」
 ということで、何ら問題なく、この村に潜伏させていた。
 しかし、実際には、二人のために研究所を山奥の洞窟に作っていて、そこで、研究をっ継続させていた。
 というのも、元々の研究所というものが、空襲で壊されてしまったので、
「研究は、ままならない」
 と思われていたが、日本軍は、空襲を恐れ、密かに研究器具や研究所の機能を、山間部に、
「疎開」
 させていたのだ。
 さすがに、山間部の農村には、空襲もなく、しかも、本当に山の中に穴を掘って、退避させていたので、ほとんど、被害はなかった。
 しかも、この村の奥には、軍の施設があり、そこは、研究所になっていて、占領軍も、「使われていない施設だ」
 ということで、見ていなかったのだ。
 だから、いずれは解体するか、接収するつもりだというようなことであったが、
「まずは、都心部の復興を急がないといけないということで、研究所は、手付かずだったのだ」
 そこを、軍は、
「俺たちは解体されるだろうが、研究だけはそこで続けてくれるとありがたい」
 ということで、二人の学者に研究の継続を任せたのだ。
 その研究の名目は、
「血液の研究」
 ということだったので、とりあえず、占領軍にも、ごまかしが利いた。
 といっても、
「そもそも、731部隊関係のことは、ある程度、大目に見ている占領軍なので、この研究所も、その派生だ」
 ということが分かっているので、あまり強くは出ることができない。
 何しろ、占領軍にとっては、
「最高国家機密」
 に近いことだったので、それをばらされることを思えば。
「血液の研究」
 というのは、今後の自分たちも利用できるということで、
「とりあえずは、様子を見る」
 ということしかできなかったのだ。
 それを考えると、
「占領された日本であったが、占領軍にも、迂闊に手を出さないというところもあるんだな」
 ということであった。
 占領軍というのも、
「確かに今回は、戦勝国」
 ということになったが、実際には、その戦勝国の中で、すでに、対立が始まっていたということである。
 それが、
「民主主義国家」
 と、
「社会主義国家」
 との対立であった。
 社会主義、つまり、
「共産主義」
 というのは、そもそもが、民主主義、
「資本主義国家」
 から見れば、
「敵対している相手」
 だったのだ。
 だから、社会主義国家である、
「ソビエト連邦」
 というものができ、その間の混乱に乗じて、民主主義陣営は、
「多国籍軍」
 というものを形成し、
「シベリア出兵」
 というものを行ったではないか。
 だが、ソ連を撃滅することができない間に、ヨーロッパでの情勢が怪しくなり、ナチスが、
「ドイツの再軍備」
 というようなことをしたため、その軍事力を使って、周辺諸国を占領していき、いよいよ、ポーランドに侵攻したことで、
「第二次大戦」
 というものが勃発したのだった。
 そもそも、ドイツは、ポーランド侵攻前に、
「領土的野心は持たない」
 ということを約束しておいたのに、平気で、ポーランドに侵攻した、
 しかも、その時、
「元々敵対していたはずの、ソ連を手を組んだ」
 ということで、世界を震撼させたのだ。
「ヒトラーは、反共主義ということで、他の民主主義の国とは、共産主義が、共通の敵だったはずなのにである」
 要するに、
「利害関係が一致した」
 ということなのだ。
「利害が一致すれば、反発している相手とも手を組む」
 というのは、政治や、外交では、普通にあることなのかも知れないが、さすがにこの行動は世界的には、信じられないものだっただろう。
 それを思えば、
「ヒトラーの言っていることは、信じられない」
 といってもよかったのかも知れないが、それでも、信じたというのは、それだけ、
「お花畑的発想だった」
 ということなのだろうか?
 実際に、社会主義国家と手を組んだヒトラーだったが、それは、
「ポーランド侵攻」
 ということ、それから、フランス、イギリスに侵攻する時、
「西部戦線に力を注いでいる時、東から攻められると、どうしようもない」
 という、いわゆる。
「第一次大戦の失敗」
 ということが頭にあったのだろう。
 しかし、あくまでも、ヒトラーの狙いは、
「ロシア侵攻だった」
 のだ。
 それを、スターリンですら失念していたというのは、それだけヒトラーという男が、
「政治的にまともな外交ができる」
 と考えていたのだろうか?
 そもそも、利害関係が一致しただけの、同盟だったのだ、その大義名分がなくなれば、
「そりゃあ、敵対関係に戻るのも当たり前のことだ」
 といってもいいだろう。
 そうなると、イギリス侵攻を諦めたドイツは、戦法を変え、今度は、
「ソ連に襲い掛かる」
 という、戦略をとった。
 さすがに、準備をしていないソ連軍は、ナチスの、
「電光石火作戦」
 というものに、歯が立たない。
 あっという間に信仰されることになるのだが、結局、
「ナポレオンの失敗」
 を今度はヒトラーが繰り返したのだ。
「急な寒波で、思いもよらぬ、銭湯不能となり、ドイツ軍は、初めての敗退となり、ここから、作戦が空回りして、ソ連に対して苦戦することになる」